第4話
僕の目に、ニュースが流れてきた。
「なんだ、これは…?」
同時に、僕の口から無意識に本音が流れてきた。
「速報です。一昨日発生した『スマイル事件』に関して、新たな情報が入りました。昨日、報道機関から犯人と思われるパーカーにひょっとこのお面を被った人物の画像と住所が警察に届けられ、警察は、この人物が犯人であるとみて捜査を進めています。」
完全にしくじった。家にスマイルを招いて初めて後悔した瞬間だった。おそらく喫茶店へ足を運んだタイミングだろう。
「大丈夫そう?」
急にスマイルから喋りかけられ、恐怖を覚えてしまった。どうしようか。なんにせよ、このままスマイルをこの家に置いておくわけにはいかない。
「僕の家があるから、そこに行って。住所は…紙はない?」
「え?うん。スマホならメモできるから。」
流石。やはりスマイルと一緒にいるのは正解だったようだ。
「…よし。時間がないから早く行って。明日の同じ時間に来るから。」
「分かった。待ってるよ。」
そう言って僕はスマイルを見せた。
着いた。スマイルって家あったんだな。…それにしても、酷い。この団地の塀だけやけに落書きが多すぎる。スマイルにも、何かしらあったんだろうな。
渡された鍵を使って、203号室の扉を開ける。この扉も、落書きは酷かった。
「お邪魔します。」
…ほとんど何もない。ちょっとした本棚と、机の上に使い込んだノートとシャーペンがあっただけ。
かちっ。電気はつかなかった。まだ夕方だからいいが、夜になると電気が必要になってくる。
…コンビニでも行くか。とりあえず、ご飯とモバイルバッテリーはどっちにしろ必要不可欠だ。暗くなる前にさっさと行って帰ろう。
被疑者の家に着いたけど、口と目を縫われるシーンを想像してくると怖くて仕方がない。
「杉山さん、もう辞めましょうよう、僕たちも被害に遭うかもしれないですよ?」
「なに寝ぼけたガキみたいなこと言ってんだよ。おい鈴木、お前に渡された拳銃は何のためにあるんだ?」
「…そうですね。僕はガキなんかじゃないぞ!でしょ杉山さん!」
「しっ!声が大きいわ!とにかく、鈴木。この仕事を終えたらサイゼリヤに、ミスったら地獄に行くことになる。どっちがいい?」
「そりゃぁもうサイゼリヤですよ!行きましょう!」
「おう。行くぞ。」
やっぱり杉山さんは気を楽にするのが上手だなぁ。
くだらない話をしているうちに、被疑者の家の明かりが消えた。今だ。杉山さんと俺を筆頭に、拳銃を構えた男がずらずらと家の敷地に押し入っていく。
俺がドアを蹴り飛ばし、ついに被疑者の男とご対面…のはずだった。
「動くな!って、いない…?」
「うわぁぁぁぁぁ!」
突然杉山さんが叫び出した。被疑者の男は杉山さんが叫ぶほどの人物なのか、と思ったが、そこにはひょっとこのお面を被った少年らしき人物が横たわっていただけ。
「鈴木、そのお面を外してみろ。こいつが被疑者の可能性もある。」
杉山さんの指示通りにお面を外すと、その中には両目と口を縫われた跡がある顔があった。こいつも被害者か。
言ったはずだ。僕、スマイルは被害者なんだ。
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