第30話 加奈の事情 その2

 加奈が連れていかれたのは、出町柳から叡電に乗ってまだ奥の岩倉あたりだった。

 ただ電車で行ったわけではなく、自動車で行ったこともあって、最初はそこがどこなのかはわかっていなかった。


 大きな屋敷に連れていかれると、加奈は住む部屋に案内され、さらに風呂にいれられた。

 食事をたべ、夜までは自由でいいと言われた、もちろん建物から出ることは許されなかったが自分の部屋に閉じ込められているというわけではなかった。

 部屋にはテレビがあり、蓄音機もあった。本棚には勉強の本以外にも多くの本が並んでいた。


 加奈は混乱していた、すぐにでも犯される、そう覚悟してきたのだ。いずれそうなるにしろ与えられた環境は、今までとは雲泥の差だった。らしい

 さらに学校は有名な大学の系列中学に編入になった。高校までは既に保証されている。

 ただもちろんそれだけで済むわけはなかった。与えられた環境に対する代償を払い始めることになったのは、この家についてから、四日目の夜だった。


 この家には知っている限りで四人の人物が住んでいる。学校に行くとき岩倉の駅までつれていってくれる運転手、掃除や食事を作ってくれる人、何をしているかよく分からない人、そしてその四人を指揮する少し年配の人。その四人は全部女性なのだ。みんなはそれぞれ必要なことしか言わない。みんな加奈には親切がだが何を考えているかはわからない。


 年配の女性は加奈にも指示をする。命令調ではないけれど有無を言わせない威圧感があった。

 加奈はその女性の指示で風呂に入り、浴衣だけでベッドに横たわっている。

 つまり、今夜ということなのだ。

 相手はどんな人だろう、どんなことをされるのだろう。加奈は年齢相応の期待と恐怖を抱えベッドでその時を待っていた。

 夢に見る愛する人とはいかないけれど、優しくさえしてくれればいいかと思っている。


 入ってきたのは、加奈の父親より年上に見える男性だった。正直少しばかりがっかりした。しかし考えてみれば当たり前だ、この生活を保障してくれる人間がそんなに若いわけがない。


 男は無言で加奈の浴衣の帯を解いた。

 前をはだけられ、全身が彼の目にさらされた、恥ずかしさで頬が熱い。

「奇麗だ」

 男の声は、低くどこか心地よいものを感じさせた。

「初めてかね」


 当たり前のことを聞く、というよりそんなことも知らないの? 自分が処女の女の子を探させたんでしょ?

 加奈はちょっと不思議に思った。


 彼の唇が、唇に触れた。舌が入ってくる。何かむにゅっとして気色悪いなと思った。

「そうかまだ無理か、じゃあさっさとすることにしよう」


 ほんの少しだけだけれど、痛む。中で男の指が動く、少し痛く、少しむず痒いような不思議な感覚。


 肉体的には、想像していた以上の辛い時間が過ぎた。 

 

 男が去った後、加奈は一人泣いた。これからこの生活が続くんだ、自分は耐えられるのだろうか。

 ベッドと自分の内腿には処女だった証が残っている。股間からは白いものが滲んでいた。


 ひとしきり泣き止んだころを見計らったように、年配の女性が入ってきた。

「頑張ったね、辛かっただろうけど、すぐになれるから」

 優しい?言葉に加奈はまた泣いた。


 加奈には毎日錠剤の薬が渡されていた、のちにそれがピルと呼ばれるものだと知ったが、その時は妊娠したくなかったらきちんと飲んでと言われただけだ。

 ここに来た時、医師に色々検査をされたのを覚えている、あの時病気や何かが見つかっていれば、ここから追い出されたのだろうか。


 考えないことにした、どうせもう汚れてしまったのだ。ここにいれば食事はおいしい、ほしいものは何でも買えた。

 来た時に万単位のお金を受け取っている。それを使わなくても生活はできるのに。


 学校の上の方は知っているのだろうか、どうでもいいや。取りあえず、学校は楽しい。自分はあの家の親戚の子と言うことになっているらしい。


 一週間がたったが、あれ以来男は来ない。それはそれで不安だ、気に入られなかったのだろうか、ここから追い出されるのだろうか。追い出されたら生きていけない、真剣にそう思った。


「きょうは、仕事だから、準備をしておくように」

 女性、多紀というらしい、にそう告げられた時、加奈は少しうれしかった。どうやらこの家にいられることが決定したのだ。


 自分でも不思議なくらい念入りに体を洗う気になっている。

 あそこに手を当てる。処女じゃなくなったと言っても、とくにかわったことはない。丁寧に接見を付けて洗う。


 この前は胸を触ってもらえなかった、今日はどうだろう、加奈は胸にふれた。


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