第10話 好きなのか?

「亮くん久しぶり」

 薫は待ち合わせ場所に、先週亮たちと会った喫茶店を指定してきた。

 店内に入ったところで、亮を見つけて彼女は手を振りながら叫んだ。

 店内にいた客が振り返った。


「先生勘弁してくださいよ恥ずかしい」

「ごめんごめん、嬉しくってさ」

 今日の薫はピンク色のブラウスと茶色のスカート。相変わらずいい女だ。


「アパート借りたんだ。次の職場に行きやすいように。今日泊まっていってね」

 次の仕事? 教師を辞めるってこと?尋ねた亮に薫は内緒と笑うだけだった、まあいいか。

 どうせ、彼女が何をしようとおれには関係はない。とその時は思った。


 先生のアパートは、桂駅からすぐのところにあった。女性が好みそうなこぎれいなアパートだけど、中身は亮の住むぼろとあんまり変わりはなさそうだ。

 声が漏れないかここ、と思う。


 部屋に入るなり、先生はキスを求めてきた。付き合ってころからのお約束だ。

 指をスカートの中に忍び込ませる、これも条件反射のようなものだった。

「え、」


「気が付いた? 亮くんを喜ばせたくって」

 薫は下着をつけていなかった、亮と会う寸前に脱いでいたと言った。顔が上気してるなあとは思っていたけれど、そういうことだったらしい。

 しかしやることは伊都美と一緒か、と少しばかりおかしかった。


 何か話があったに違いないが、とりあえずやることをやってから、薫もそう思ったに違いない。


「やっぱり亮が一番」

「一番? じゃあ二番は、ってやりまくってるの」

 この前、伊都美に言われたことを薫に言ってみた。


「だって、亮くんがしてくれないから。若い女の子なんだから仕方ないじゃん」

 それはそうだけど、なんか面白くない。確か校長とは別れたはずだ。新しい彼氏か。

「うそよ、この前亮くんとしてから、誰ともしてない。亮くんは違うでしょうけど」


「俺もやってないよ」

「うそ、この前デートしてたじゃない」

「中一だよ、やるわけないじゃない」



「どうだか、でもやらないって、嫉妬しちゃうな。本気で好きだってことだよね」

 薫は、亮のものを握った。


「私はこれだけの相手か」

「俺、薫のこと好きだよ、最初はやりたかっただけだけど」

「ほんと、ありがとう」

 薫は本気で嬉しそうだった。いい大人が、中学生相手にどうかとも思うけれど。亮は嫌な気はしなかった。


「そういえば、今日の用は何だったの、やりたかっただけ?」

 薫は亮のお腹をグーで殴った。

「バカ」


 家を教えたかったのだという。なんか言葉通りには受け取れない。

「そういえば先生やめたの?」

「まさか、こんなおいしい仕事辞めないよ」

「だって新しい仕事って」

「ああ、それは秋になったらわかるよ」


 秋?なんで?って聞いても教えてくれない。教えてくれないんならと体に聞く、結局、亮のものが反応してしまった。


 さすがに三回やれば、いかに若くても疲れ果てて、亮は薫に腕枕をしたまま眠ってしまった。


 まな板に当たる包丁の音、油のはねる音、食欲に訴える香、亮は目を覚ました。

 薫は鼻歌を歌いながら料理をしている、パンティーは履いているもののそれ以外はエプロンだけのようだ。


「あ、起きた? 晩御飯食べていくでしょ」

「食べさせてもらえるなら」


「泊って行ってもいいよ、家に電話すればいい」

 薫の部屋には電話があった。


「ん、大丈夫、藤野先生のところだから、わかった」

 家には沙織がいた、沙織は亮と薫の関係を知っている。相手は大人だから心配はないと思っているらしい。


「食べたら一緒にお風呂行こうよ」

「うん、薫は彼氏つくらないの」


「ちょっと前までは欲しかったんだけど、今は亮くんでいいや」

「でもさ、俺まだガキだよ」

 薫は亮の顔に顔を近づけると、軽くキスをした。


「わかってる。でも好きなんだ、いましばらくは私と付き合って」

 もう一度、薫は唇を寄せてきた。


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