第11話 司書
「住谷、今日の帰りに図書室まで来てくれって、司書の斎藤先生からの言伝」
朝のホームルームの終わりに担任の林先生が言った。
「何やった、美人だぞ、斎藤先生は」
おまけの一言でクラスの全員の目が亮に注がれた。好奇の目、みんな暇なのだ。
図書室、斎藤? 覚えがない。
「知らない、あったこともない」
「住谷君、国語できるじゃない、それが理由じゃないの」
同じ班の原口貴子が言った。入学当初はちょっと気になった子だったが、私は偉い、大人なのという感じが鼻につき、最近は興味が失せている。
ああ、そうかもね、そんな声が起こり、みんなの興味は一気に亡くなったようだ。
まあそれはそうとして、まったく理由が思いつかないというのは落ち着かない。
結局、午前中の授業はどこか上の空になった。
今日から試験のために部活はなくなる。帰りに伊都美の家で、一緒に勉強することになっていた。
「んー、仕方ないね。終わったら来てね、待ってるから」
伊都美は少しばかり不満そうだがこればかりは仕方がなかった。生徒は先生の無理難題には逆らえない。
図書館は三棟ある木造校舎の一番端の棟の一階奥にあった。窓の外には桜の木があり、春はきれいなところだが、いつもはあまり生徒は寄り付かない。
亮は本は好きだったので、図書館は利用している方だとは思う、でも、美人の司書先生なんて見た覚えがなかった。
「住谷君? こっちに来て」
貸出、返却手続きを行うカウンターの奥には扉があった、そこから眼鏡をかけた女性が顔を出して亮を呼んだ。
一つに編んだ長い髪は黒というよりわずかに茶色がかかっている。
丸いメガネがかわいい、美人というよりかわいいの方が会うような気がする。
亮は彼女を見て、赤毛のアンの主人公、を思い出した。姉の沙織が好きでよく読んでいた。
こんなところに事務室があったことを、亮は初めて知った。
「きっと私のことは知らないよね、司書をやっている斎藤伸子です」
白のブラウスと黒のタイトスカート。典型駅な教師スタイルだ。
薫もよく似たような服装をしている。
亮をソファに座るように促すと自分も椅子を引っ張り正面に座った。
タイトスカートじゃパンティーが見えるわけもない、と思った亮の心を読んだのか、先生は足を組んだ。
亮の目は反射的にその動きを追った。案の定その瞬間スカートの奥が見えた。ベージュ?
「単刀直入に聞くね、藤野薫とはどういう関係」
いきなり薫の名を出され亮は、返答に詰まった。
「藤野先生お知り合いなんですか」
「尋ねているのは私よ」
げ、かわいい顔に似合わず意外ときつい人らしい。となると、答えに気を付けないと。
「小学校で担任でした」
「ふうん、手を出したの出されたの?」
ばれてる? 亮はじわっとわきの下に汗を感じた。
「私ね、薫の隣の部屋に住んでんの、昨日はうるさくて眠れなかったわけ」
亮は下を向いた、逃げようがない。
「で、今朝どんな男か見てやろうと思ってさ。そしたら若い男でびっくりしたの、おまけに知っている男だったからもう一度びっくり」
「先生は俺を知っているんですか?」
「うん、君、図書室よく利用しているでしょ。なかなか趣味がユニークというか無茶苦茶というか面白いから、どんな子かなと思って」
「うちは父親がいなくて、本もなかなか買えないから、手当たり次第で図書館の本読んでます」
「なるほどね、薫が惚れたのはそういうところか」
「惚れたって、薫、さんは単に」
「体だけだと思った? まさかあの子君に惚れてるよ。馬鹿みたいだけどさ」
亮は言葉に困った。考えたこともなかったからだ。
「それでさ、その君のものを私も試してみたくなったわけ」
え、それってと聞く間もなく先生はスカートをめくり上げた。
履いてなかった、しかもあるべき黒いものが無かった。
ベージュの下着じゃなかったのだ。
「脱いで」
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