第4話 梟の呼び声



 結果的に言えば、そこにBは居た。


 欅の木にもたれ掛かるようにして、ぶらぶらと。


 首を長くして、私たちを待っていた。


 フクロウみたいに、頭がぐるりとしているけれど。


 ギィギィとフクロウの鳴き声みたいな、音をたてながら。




 そこから私の記憶はない。

 気付いたら自分の部屋のベッドで寝かされていた。


 夢だったのかと思ったけれど、やってきた両親の顔を見て、アレは夢なんかじゃなかったんだと分かった。


 その後の数日間、私は学校を休んだ。

 その間C子は何とか登校していたようだが、私が復帰する頃には学校に来なくなった。

 その理由は定かではないが、仲の良い友人を2人も失ったことがショックだったのだろう。


 警察もあの後、再度調書を取りに来た。

 ……私から新たに話すことなんてほどんどなかったけれど。

 逆に私は、彼らにAとBについて尋ねた。

 母は止めようとしたけど、どっちにしろこの狭い田舎じゃすぐに分かる話だ。


 優しい警察のお兄さんが言葉を選びながらに教えてくれたのは、やはりBはあの神社で亡くなっていたという事。

 そしてAはフクロギを探したあの雑木林で、Bと同じ状態で見つかったらしい。


 詳細は教えてくれなかったけれど、少なくとも誰かに殺された訳ではないそうだ。

 道具も、Aが事前に用意していた証拠が見つかったらしい。

 それがどう渡ったのかは不明だが、Aと同一の物をBは使ってしまった。

 Bの足元にはAのバッグが転がっていたし、警察のお兄さんもAと同一の物だったことが確認できたと言っていた。


 他にも何かを教えてもらった気はするけれど、途中から私の耳には何も入ってこなかった。


 Aは最初から死ぬ予定だった?

 なぜBはAの後を追ってしまったの?


 そんなことで頭がいっぱいだったからだ。

 警察官が帰った後も、母が心配そうに声を掛けてきた時も、私はずっとBのあの姿がリフレインしていた。





 あの事件から数年が経ったけれど、相変わらず私はふとした瞬間にが、まるで呪いの様にフラッシュバックする。

 そしてフクロギの真相を知ってしまった頃から、ある一つの癖がついてしまった。



 ――この怪談話の真相は一体なんだったのか?


 そもそもフクロギは、特定の場所を示す怪談では無かった。


 梟の漢字の成り立ちは、木に吊るされた鳥の意。


 そして振り返る梟の様に首が、首が……。



 幸か不幸か、私は今でも生きている。

 だけど、喉元をさする癖はどうしても無くならない。そして――


 あぁ、またあの音が聴こえてくる。

 ギィギィ、ギィギィと――

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フクロギ ぽんぽこ@書籍発売中!! @tanuki_no_hara

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