第42話 沙月と真白に横浜配信を依頼する回

「――ここもお地蔵さんの首がみんな壊れていますね。ちょっと怖くないですか? 皆さん」


 夕方の神社。

 オレは配信活動をしていた。


 オレは横浜を救う配信をするための前準備として、横浜で起こっている異変の調査配信をしてるのだ。


 神社に設置してあるお地蔵さん十体、すべての首がない。

 首無し地蔵十体が、夕日に照らされている。


 異様な光景だ。


 少し歩みを進めれば、立派な御神木が見えてくる。

 よくみれば。御神木のしめ縄が切られていた。


「うわ、ここも切られてますねえ。若干ホラーみが増してきます」


【マジでやらせじゃないの? 複数神社回ってるけど、そんな感じの状態のばっかりじゃん】

【Thitterで検索してみ? ハルカくんが調べるかなり前から、そんなのたくさんあるから】

【小早川沙月と真白ちゃんも似たような配信してるし。このレベルの人たちが、こんなヤラセ配信するのリスクしかないじゃん。まあ、真白ちゃんは新人だからわからんけど】


 オレは現状を把握するために、小早川沙月と真白さんに手伝ってくれるように要請したのだ。


 情報収集という面もあるが、『今の横浜はやべーぞ』と視聴者たちに周知することのほうがメイン目的だったりする。

 これは彼女たちには伝えていないことだった。


 それぞれに金銭で報酬を支払う約束をしようとして、別のものをねだられた。




 あれは昨日の夜のことだ――。




   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 オレは自室から小早川沙月さんに通話をかけた。


 かけて0.5秒で通話がつながったことに若干の恐怖を感じないでもなかった。


「は、はい! 師匠! 師匠からお電話をいただけて光栄です! いったいどんな御用事でしょうか!?」


「師匠じゃないからな。実はちょっとお願いがあって声をかけたんだ」


「は。――この前の迷惑配信者を闇討ちですね?」


「本気で言ってる?」


「いえ。これはウィットに富んだジョークですよハルカさん」


「…………本気か冗談かまったく区別がつかないからやめてほしいかな」


『スクープ! 美少女配信者が暗殺!? 指示をしたのは高校生配信者の風見遥容疑者!?』みたいな記事が出てしまったら、違う意味で大人気だ。

 オレの目指す大人気配信者とはまったく違う。


「ふふ。ハルカさんこそ冗談がお上手ですね! それで頼みとはなんですか?」


「実は、横浜の街中で配信をしてほしいんだ。内容は横浜で起きている怪現象の調査って感じで。場所はオレが指示する。あんまり登録には繋がらないから、金銭で支払おうと思っている」


 すると小早川沙月さんはこういった。


「金銭はいらないですよ。その代わり――」

 といって言い淀む。


「代わりに何だ? オレにできて、さほど手間でもないものなら考えよう。あまり面倒だったら他に頼むが」


「えっ。あ、嘘です嘘です! むしろ無報酬でもいいですよ! グルのお役に立てればこれ以上の喜びはありません!」


「……いいから言ってみろ。それとグルはやめろ。めちゃくちゃ人聞き悪い。それ宗教系の指導者の呼び方だろ……」


「さすが先生。知っていましたか」


「先生でもない。いいからはよ言え」


 オレはそう言ったが、返事が返ってこない。


「えっと……その、あー……。…………恥ずかしいな」

 照れたような声。

 オレはその一瞬少し警戒をした。


「………………そんな恥ずかしいことをオレにさせようとしているのか?」

 女装とか、恥ずかしい罰ゲームみたいなのは嫌だぞ……?


 聞くと

「いえ、えっと、そんなことは、ないんですけど、その、えっと」

 と普段のハキハキした様子や、動画での凛とした様子とはまったく別物の反応をする。


 そしてしばらくして、意を決したように息を吸う音が聞こえた。


「その……。私の剣術の訓練、付き合ってくれません?」

 警戒した分の肩の力が抜ける。


「言い淀む要素がわからないけど」


 すると小早川沙月は申し訳なさそうな声でいう。

「私くらいの腕前で、ハルカさんにご教授願うのは、おこがましいのではないかと……」


「わかった。半日くらいでいいか? それなら頼む」


「えっ! ホントですか!? やったぁ! じゃあ約束ですよ! 横浜の街で配信を行えばいいんですね!?」

 声の端々から喜びが伝わってくる。


「助かる。詳細はデータで送る」


 そう言ってオレは通話を切った。




 そのまま真白さんへと通話をかける。


 実はほんの数日前から真白さんは配信者デビューをしているのだ。


 こっちもかけた瞬間に通話が繋がった。

 ……何なんだ。ほんとに。


「ハルきゅ――くん! どうしたんですか? 通話をかけてくれるなんて初めてですね! わたしもちょうどハルカくんの声が聞きたいなと思っていたところで!」


 ハルきゅくん、というのは真白さんがたまにオレを呼ぶときに使う。慌てて言いなおすところから、どうやらセリフをかむ癖があるようだと類推できる。


 ――もしかしたら、ずっと家にいたから、誰かと喋ることに慣れていないかもしれないな。

 ――変な奴に騙されたりしないか心配だ。


 そんなふうに思っていたときだった。


 通話中の真白さんの後ろから、男の声が聞こえた。


『――白ちゃん。オレは――――大事な――――なん――』

 ノイズキャンセリングされているのか上手く聞き取りづらい。


「あ、悪い。真白さん。今誰かと一緒だった? もし都合が悪いなら――」


 そういったところで、後ろの男の声がハッキリと聞こえた。


『――だから、君は黙ってオレに助けられなよ。安心していいよ。約束する。オレは今日、君にたった一つの傷もつけさせない』


 ――オレの声じゃねえか!


 それはオレが真白が誘拐されたときに言ったセリフである。

 オレの配信チャンネルでもたまにネタにされているから覚えている。


 そういや真白さんの動画チャンネルの動画は、今のところオレが撮った動画データを編集しなおして使っている。


 最初の動画は『病弱少女だったけど、奇跡的に元気になりました!』とかだったはず。

 次は『病弱少女だけど誘拐されてみた』などを作っているのかもしれない。

 そのために動画データを流しているのだろう。


「えっ! 違います違います! 男の人なんていません! ただの動画――いえ、テレビの声ですよ!」


 なんでテレビの声なんて嘘をつくんだろうか……。


「わかってる。わかってるよ真白さん」


「わかってないですよ! なんかすごい言い訳っぽく聞こえるかもしれないけど、本当なんですよ! 本当に自室なんです! おとうさんと代わりましょうか!? おとうさーーーん!!」


「いや、ホントに事実だってわかってるから!」

 だって聞こえたから!


 どたどたという真白の走る音がして、いかつい男の声が聞こえる。


「……ちょうどよかった。風見くん。わしだ、鉄浄だ。君の言うとりの訓練を積んでいるよ。武器も、以前渡した日本刀よりもさらにいいものが作れるようになったから、来てほしい」


「あ、そうなんですね。それはよかったです。今度寄らせていただきますね」


「それで、娘に早く! とせかされて電話を替わったんだが。いったい何の用だったんだ?」


「……いや、その、用というか」

 実際にオレから鈴木のおっさんに用はなかった。


「おとうさん、代わってください! お父さんの声をハルカくんに聞かせたかっただけなのでもう大丈夫です! はやくお仕事に戻ってください! それじゃ!」


「風見くんが、わしの声を聞きたいと……? それはどういう……」

 鈴木のおっさんの戸惑った声が小さくなっていく。

 どたどたと真白さんが走る音が聞こえた。


「おい! 真白さん!? なんか伝達ミスが起きてるが!?」

 なんかオレが『鉄浄さんの声が聞きたいな』とか言ったと思われてないか? 今の。

 そんな彼女ムーブをなんでオレがしなきゃならないんだ。


「お判りいただけたと思いますけど、ちゃんと自宅で、先ほどの声はテレビの音声です。誤解しないでくださいね!」


「あ、ああ……。それは大丈夫なんだが」

 オレは誤解なんて一切していないが――。

 鈴木のおっさんに変な誤解が生まれてそうだ。


 まあどうでもいいか……。


 オレはちょっとめんどくさくなって思考の遥か彼方にその考えをぶん投げた。


「まあ、動画配信が好調そうで何よりだ」

「はい。全部ハルカくんのおかげです。おすすめの機材とか、設定とか教えてもらったので、わたしでもすぐできました。ただ――」


「ただ? 何かあったのか?」


 真白は暗い声で言った。

「――誰もわたしの年齢を信じてくれないんです」


「……あー」

 そりゃまぁ、ねぇ?


「そういうわけで、所在地と苗字を隠して保険証をみせたんですよ」


「おお……それで?」


「そうしたら『お姉ちゃんの保険証だしてきてかわいい』『真白ってお姉ちゃんの名前からつけたんだね』みたいなコメントばっかりでですね……」


「あー……」


「だから今、免許とろうと思って。教習所に通おうと思ってるんですよね。ほらあれ顔写真ついてるじゃないですか?」


「え。年齢を証明するためだけに教習所に……?」


 そういやこの人二十歳だったな。

 考えていなかったけど、事務所関係の保証人とか後見人は真白さんに頼んでもいいんだよな。


 後見人という言葉がこれほど似合わない人も、そうはいないだろう。

 オレがそんなことを考えていると、真白がいう。


「それで、いったいどうしたんです? ハルカさん。通話をかけてきて」


「ああ、実はちょっと頼みがあるんだが……」

 とオレは頼みの内容を言う。

 小早川沙月に頼んだことと同じだ。


「大した再生数や視聴者数は見込めないかもしれないから、謝礼金は払うよ」


「そんな! 謝礼金とか大丈夫ですよ。ハルカくんには病気を治してもらった恩もありますし……。それに、わたしにしか頼めないっていうなら、どんなことでも……」


「いや、そういうわけにはいかない。小早川沙月さんにもお礼をすることになったからな」


「えっ!? 他の人にもお願いしていたんですか!」


「ああ。真白さんが難しいようなら、信頼性は落ちるけど他の配信者に――」


 そういうと真白さんはすごい勢いで声をかぶせてきた。


「やります! わたしがやります! お礼もいただきます!」


「じゃあ、金額は――」


「その、小早川沙月さん? と同じでいいです」


「えっと……。小早川沙月さんは――」


 金銭じゃないんだよなあ。

 しかし、小早川沙月さんは剣術強い系美少女として売っている。そのためオレに剣術を習ってるなんてバレたら、活動の邪魔になるかもしれないな。


 少し濁すか。


「報酬は、オレの時間なんだ」


「はぁ?! ハルきゅんの時間!? え!? なに?! どういうことですか!?!?」

 真白さんは慌てたような声で言う。


「詳しくは言えないけど、その――少しの間同じ時間を過ごすことになっている」


「同じ、時間を……? え、ええ……? 詳しく教えてください」


「それは彼女の名誉にかかわるから言えない」


 少し沈黙してから真白さんが言った。


「じゃあ、『はい』『いいえ』『関係ない』で答えてください」


 真白はウミガメのスープ――あるいは水平思考クイズのようなことを言い出した。

 それは出題者が問題を出し、回答者が「はい、いいえ、関係なし」の三つで答えられる質問をして回答を狭めていき、最初の問いの答えを当てるゲームだ。


「……答えられる範囲なら」


「それは彼女と二人きりで行いますか?」


「はい」

 剣術の訓練だからたぶん二人のはずだ。


「そのとき、たくさんの時間を二人きりで過ごすんですか?」


「……まぁ、はい」

 すぐに終わったら小早川沙月も納得しないだろうしな。


 真白の声が震えだす。

「それは長時間、じっくり二人で向き合いますか……?」


「まぁ。はい、かな」

 小早川沙月さんの動きを確かめ、オレが実際にやってみせたりするだろうしな。


「ふ、服を着替えたりしますか?」


 訓練だから着替えることもあるだろう。

「たぶん、はい」


「あ、あ、汗をかくようなことを、二人でするんですか……?」


「はい」

 それは剣術だし汗もかくだろう。


 うぐぐ……という唸り声じみた声が通話の先から聞こえる。


「そ、そんな――。ち、違いますよね……? か、彼女と会うとき、ほ、ホテ――それは、二人きりで特別な場所で会いますか?」


「たぶん、はい」

 他の人に訓練をしているのを見られたら嫌かもしれない。

 オレは彼女の流派に関係ない人間だしな。


「終わった後すっきり――清涼感につつまれますか?」


 運動した後はすっきりすることが多いし、たぶんシャワーなんかも浴びるだろう。


「はい」


「あぁぁ……そんな。ハルカくん……う、嘘ですよね? そ、それは、その、接触、しますか?」


 剣をぶつけ合う立ち合いもするだろう。

「はい。わりと激しく」


「激しく!? ああああ! それはせっく……激しいスポーツですか?! 感情が高まることはありますか!?」


「両方『はい』かな」



「ああああああ!」

 真白は絶叫を上げた。



 そして、オレに強い口調で言った。



「あなたたち、交尾するんだ! 交尾するつもりなんだ!!」



「は?」


「だめですだめですだめです! ハルきゅんにはまだ早いです! 早いの! だめなの! お姉ちゃんは絶対認めませんから!!!」

 真白さんは断固とした決意をのぞかせる態度でいう。


「……違うよ?」



「違わないですよ! 二人きりの特別な場所で! 二人きりでたくさんの時間を過ごして! 長時間じっくり向き合って! 接触して! 汗をかいて! 終わった後すっきりして! 着替えて! そんなの交尾しかないじゃないですか!」



 わぁぁぁ――と真白さんが変な声を出して叫んだ。


「……真白さん。落ち着いて。いいから落ち着け。絶対に違うから安心しろ」


「…………じゃあなんなんですか」

 真白さんが恨めしげにこっちを睨んでる姿を幻視する。


「………………絶対誰にも言わないでくれよ?」


「……はい」


「剣術の訓練だよ」


 しばしの間。


「――は? え? は? じゃあ二人きりの特別な場所は?」


「余人の立ち入れない訓練場のこと」


「では、二人きりのたくさんの時間は……」


「訓練時間」


「終わった後すっきりとは……?」


「運動後はすっきりするよな? あと汗をかいたらシャワーを浴びたりするよな?」


「え、あ、はい……」


 未だ納得しきれていないような真白に、オレは説明を続けた。


「つまり、彼女は剣術強いキャラで売ってる配信者だ。それが他流の人間、しかも同じ年の人間に教えを乞う。それは彼女のブランディングから外れるよな?」


 真白は消えてなくなりそうな声を出す。

「え、その、はい……」


「だから、小早川沙月さんがオレに剣術を習ったことは内緒ってこと」


 真白さんはめちゃくちゃ情けない声で言う。

「…………申し訳ありましぇん……。ハルカくん、ごめんね……」



「……大丈夫だよ。それで、依頼の話をしていい? もし、小早川沙月さんと同じ報酬ってことなら、オレと訓練か何かになるけど――。金銭のほうがいいなら金銭でもいい」


「……じゃあハルカくんのお時間を、同じだけください……。ぁぁ……。消えてなくなりたいです……」


「消えたら鈴木のおっさんが悲しむからやめておけ」

 鈴木のおっさんだけは、オレがいなくても大成功する人間だ。

 だから彼には前回の世界線より幸せでいてもらわなければならないのだ。


「……ハルカくんは、悲しまないんですか?」


「まぁ、悲しむかな」

 少しでもかかわった人間は、どちらかといえば幸せでいてほしい。そのほうが精神安定上、気分がいいはずだ。


「……よかった。わかりました。明日から横浜配信、頑張りますね」




   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 ――と、そういったことがあった。


 なので今はオレも小早川沙月も真白さんも横浜での、街中配信をしていた。


 結果、横浜ですでに異常は起きていたことがわかった。


 ――神社やお寺など、そういった霊験あらたかな場所が荒らされていた。


 神社やお寺などは龍脈の上に建っていることが多い。


 そして、龍脈上の神社が荒らされている割合が多かった。


 龍脈は、地中を流れるとされるエネルギーの経路のことだ。

 東洋の風水学では、土地や建物の配置が人々の運命などに影響すると考えられ、龍脈の流れを重視している。


 日本でも、神社や寺の位置選びにこの考え方が反映されることがある。

 必ずしも全てが龍脈に基づいているわけではないが。


 龍脈上の神社やお寺などの場所は、その多様なエネルギーを利用して周囲の土地を守っていると言われている。


 しかし中核となっている御神木や御神体などが破壊されれば、その土地を守護する力は激減する。


 御神体が安置されているのは、通常本殿である。

 本殿とは神社の最も神聖な場所であるため、一般客は入れない。

 日本において、神というのは直接見ることが失礼に当たるという考えだ。


 そのため確認はできていないが、本殿の御神体も破壊されているだろう。

 本殿の奥から、精霊の力を感じたからだ。


 ――守護を弱めて、精霊アストラル界化か。

 しかし多少守護を削ったくらいで、そんなことはできない。


 ならば龍脈を悪用している可能性が高いな――そう思って調べてみる。



 ――やはりな。



 敷地内の大樹に、呪文のようなものが彫られていた。

 それは、この地球上の言語ではなかった。


「おおっと! 木に何か掘られてますね。これ、誰か見たことありますか? この文字を知っている方いらっしゃったら教えてください!」


 視聴者に尋ねてみる。

 だがオレは知っていた。


 ――精霊言語。


 未来においては精霊術師の間で広まったが、まだこの世界ではほとんど知られていないはずだ。



 そして木の根元の土に違和感を覚えてオレはいう。


「おっと、ここの木の根元、ちょっと色が変わってますね。ちょっと掘ってみましょうか!」


 すると、炎の宝石が埋められていた。


 オレも真白さんの精霊を呼び出すために使った、精霊のレアドロップである。


 そんな感じでオレは配信を終えた。





 ――やっぱり、誰かが龍脈の力を悪用しようとしているのは確定だな。


 オレは他に発見はないかと、小早川沙月と真白さんの配信を見た。


 小早川沙月は真面目に配信をやっており(たまにナンパされて返り討ちにしている部分はあったが)いくつかの神社やお寺の情報を入手できた。


 だが真白さんは――。

「きみ、どこの小学校? まだ学校がある時間でしょ!」と職質を受けていた。

 これは小早川沙月よりも早い時間から配信を行っていたから仕方ない面もある。


 だがまた夕方を過ぎると――。

「きみ、もう遅い時間だよ。早くおうちに帰りなさい」

 と、またしても警官に捕まっていた。


 オレが『無理そうなら、大丈夫だぞ?』とメッセージを送ると――

『明日からはお父さんと一緒に行くから大丈夫です!』と返事がきた。


 しかし、オレも真白もまだ知らない。

 明日『お父さんと一緒にお散歩かわいいねえ』というメッセージがきて憤慨することを。




 夜になった。

 オレは自室で小早川沙月や真白さんからの報告を受け、翌日の指示をした。

 ――そのあとのことだった。




 オレがパソコンで動画編集をしているとき、急にモニターにおかしなノイズが走った。



 バチ――バチ――パチパチパチ!


 ラップ音じみた電気のはじけるような音。


 パソコンのモニターは明滅し、天井のLED電灯もついたり消えたりする。


 まるで出来の悪いホラー映画のような現象だ。



 パソコンや電灯の電気が集まり、紫電となり滞空する。



 真っ暗になった部屋の中で――バチバチバチ! と激しい音がする。


 オレが身構えていると、その紫電の集まりは、人型をとる。


 ひときわ激しく光と音を立てながら、その人型の電気は人の肌へと変化する。

 腕と、頭部が人の形をとる。



 水無月璃音だ。




「きちゃった☆」




「……きちゃった、じゃないだろ。ちょっとびっくりしたぞ」


「おー。驚いてくれたんですね。身体を電気信号に変えて、電線を伝ってここまできたんですよ」


 軽くどこでもドアじみた技だった。


「それでなんですけど、遥くん。服をかしてくれません?」


「……えぇ?」


「や。服まで電気に変換できなくてですね……。これを使うと服なくなっちゃうんですよねぇ」


 水無月璃音は、手と頭部だけを人間にし、残りを電気にしたまま言った。


「露出狂アイドルか。しかも情報屋。属性つけすぎでは?」


「そんな趣味はないんですけどね。それに情報も売ってませんし。それで、ま、ちょっとご報告に来ました。遥くんは裸で報告しろっていうオニチクなんですか?」


「服ならそこにあるから適当にもってけ。あと風呂あっちな。脱衣所あるから使え」

 オレが顎でハンガーラックを指し示すと、半分電気状態のままの水無月璃音はワイシャツを一枚持っていった。


 しばらくして、オレのワイシャツをぶかぶか状態で着た水無月璃音が現れる。



「いくつかわかりましたよ。報告しますね」

 大きいワイシャツは手が萌え袖状態になっている。

 ボタンは上が一つ二つ外れており、胸の谷間がのぞいていた。



 そんな状態のまま水無月璃音は調査報告をしてくる。


 彼女の調査はさすがだった。

 通常調べようのないことまで調べている。


 関係ない人物と、関係ありそうな人物がよりわけられていく。


「あ、この人ですね。佐藤美緒さんですか。予言してますよ。『このままでは横浜に地球の怒りが訪れる! このままじゃいけない! 環境破壊をやめよ! 我が団体に募金せよ!』みたいな感じで。あっやしーですねえ」


 水無月璃音はそう言った。


 それはたしかにその通りで、めちゃくちゃ怪しかった。





────────────────────────

あとがき


皆様、ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

今回も文章量結構ごっついです!

7600文字くらいですね! この話は分けるよりひとまとまりがいいと思ったので、まとめて投入です! ああ、ストック――――。


今回はみんなでてきてますね!

この全員が直接顔を合わせたことがないという。

真白と沙月はちょっとだけ会ってますけど。



ちょっとでも笑った、面白かった、先が気になる! という方はぜひ★とフォローをお願いします!


現在ランキングは週間ジャンル14位

週間総合34位と、前回と全く同じ数値です!

このまま下がらず、もう一度上昇したいです……!


できればなんとか、10位以内に入りたいと願っております。

もしよろしければ、お手伝いください!


その方法は――!

★とフォローをどうかよろしくお願いいたします!




これからも、皆様に喜んでいただけるような作品をお届けするために頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします!



もちぱん太郎

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る