SS011  魔法と魔弾


 イベント2日目。結局、あの後ゆっくりと幹の上にある道?を進み何とか抜け切った私とヒカリ。

 しかし中盤に差し掛かる頃にはリアルの時間が深夜に突入していたためその場でお開きとなったのだった。

 とりあえず明日の朝、イベント2日目。ログアウト地点から再スタートすることにした。



 で、朝なのだが…



 たぶん寝坊するだろう私はヒカリの家に向かう。と言っても同じ建物。しかもお隣同士。お互いのハウスキーパーAIももはや顔パスで家の玄関を開けてくれるためヒカリの住処におじゃまする。徒歩10秒にも満たない移動の末やはりと言うべきか。ベットでスヤスヤ寝ているヒカリを起こしにかかる。


「ほらヒカリー。起きて」


「…ん…。…まだ眠い…」


 まだ眠たげなヒカリはどこかぽあぽあしたまま。しかし無表情である。いつも通りの無表情。だがよく見ればわかる表情の違いから読み解く。その表情は「眠い」と物語っていた。

 別に寝起きぐらいもう少し可愛げな表情でむにゃむにゃしてくれれば可愛いと思うのだが、何をしようともヒカリの表情は無表情だ。



 現在時刻は6:30。普通に早めの起床時間だが。目的はゲームなので健康には宜しくない。そこは細心の医療が何とかしてくれるでしょう。


 とりあえずヒカリの服をひっぺがし着替えさせとりあえず軽い軽食をAIに作ってもらいそれを食べさせる。

 ふむ。ご飯よし!歯磨きよし!髪の毛もよし!服装よし!家事もAIがやるのでよし!


 RBGするのだから寝巻きでもいいのだが寝ている間汗かいてるかもだし、清潔せいけつにしとくに限る。



 こうして私たちはようやくRBGにログインすることが出来た。



*




 昨日に引き続き、入り組んだ幹の道を踏破した私たちは再度大樹の幹の中に伸びる道へたどり着く。


 中には大きな…。半径20mほどありそうな螺旋らせんを描いた階段が出現し、真ん中は広い空洞で吹き抜けのようだ。かなり空洞は大きく幹のほとんどをくり抜いた作りだと思われる。なんでこの木枯れないのだろうか?

 とりあえずそういうものだと考えておく。


 当たり前のように〔飛行〕が使えないので、真ん中を飛んで行くことは出来ない。飛べたら一瞬で踏破できるのに。代わりに落ちることは出来そうだ。

 落ちたら死ぬことを除けば。



 アスレチックはもう嫌なヒカリ。螺旋階段を見て安心したのかその足取りは先程よりも速い。幹の中はやはり光源の必要が無いくらいに明るい。これ、夜だとどうなるのだろう?



 そんな適当な会話をヒカリと楽しみながら遠足気分で階段を登って行く。リアルだと体力的に無理なことも出来る。ゲームならではの楽しみだ。



 だがそんな平和な時間も終わる。少し進んだあたりでいきなり上から物音がし始めた。



バサバサ…。バサバサバサバサ…




「ヒカリ」


「ん、多い」



 私たちを出迎えたモンスター。最初にであった小鳥とは違いその体格は普通のサイズ、キツツキに見えるそれが群れをなして中央空洞の上から急降下して現れた!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



シークレットクエスト:群れる脅威


クリア条件:?

参加者:ヒカリ、アキアカネ

報酬:?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「シークレット?」


「とりま、あれ、どうにかする」



「だね…」


 突然の通知も束の間。気になるクエスト表記を考える暇は与えてくれないらしい。一匹一匹が体制を整えそのままその鋭いくちばしを先頭に突撃してくる。


「くっ!?」


「ん!?」


 昨日の小鳥たちと違うのは見た目だけでは無い。その突撃速度は異常に速くもはや目で追える速度では無い。

 そして数にものを言わせて弾幕となるその鳥の攻撃。私もヒカリも次々被弾、急所は護りつつも着実にダメージがけずられ2人とも3分の1程度HPを減らされてしまった。



 即座に〔風〕の魔弾を飛ばし数匹を射止める。ヒカリも、水弾を使い撃ち落としにかかる。MPを温存する余裕もない。


ーーーー


スキル:風


カテゴリー:属性系

ランク:白

発動:アクティブ

概要:風をMP消費で発現させ、魔弾として飛ばすことができる。風弾は半透明で、物体に当たると霧散する。またMPを節約することで風として0ダメージの魔弾になる。


ーーーー




「数が多い!」


「きり、ない」



 MPにはまだ余裕はあるものの、あまりにも多いキツツキに2人では対応しきれない。



「〔爆発〕はダメだからねッ!」


「がってむッ」


 ここは大樹の中。もちろん滅多なことでは無いが万が一燃えるとみだ。

 キツツキは一旦旋回せんかいを挟み、さらに私たち目掛けて突撃攻撃を再開する。2人ともできるだけ弾幕を張りつつ回避に専念するが被弾は増える一方だ。


「多い多い!!弾幕間に合わない!」


「アキ!魔弾、できるだけ、MP追加消費、ない。最大、最小サイズ!で!」


「最大の最小!?」


 ヒカリは魔弾をできるだけ小さくし代わりに魔弾の数を増やす。

 キツツキ本体は貧弱なのか、そんな小さな魔弾でさえも当たれば一撃で消えていっていた。


「なーる」


 そんな光景を見てヒカリの言っていた意味を理解した。同じく魔弾をできるだけ小さくしつつついでにその魔弾を盾のように前方に集めて即席のバリアを作る。そこに突っ込んできたキツツキは消滅しょうめつしていく。昨日私がしてた戦法の応用だ。


「ひとまず死ぬことはなさそうだけどこのままだと進めないよ?どうする」


 回避とガードができるため先程までと違い被弾はしなくなった。だがしかし、キツツキの数はまだまだ圧倒的な量を残しており、MP的にもここで持久戦になるのは避けたい。


 大樹の中にいるが、ある程度登ってきたことを考えると頂上はあとほんの少し残す程度だろうと思う。だが、まだこの階段を抜けた先がゴールとは限らない。


「魔弾、キリがない。だから、〔魔法〕」


「…、えと?何か違ったっけ?」


 うん。私、ヒカリ程スキルのこと詳しくない。


「とりま、「ウィンドカッター」。撃つ」



 そう言って説明するよりも見せた方が早いとヒカリは「魔弾」ではなく〔魔法〕を放った。


 その風の斬撃はキツツキの群れにまっすぐ突っ込み、そして…。



「おおー!!後ろも全部斬っていく!!」



 ウィンドカッターに触れダメージを受けたものを通りしてさらに後ろにいたものまで斬り進む。


ーーーー

スキル:魔法


カテゴリー:魔法系

ランク:白

発動:アクティブ

概要:起こしたい現象、範囲、数、効果、属性を指定した定型の魔法をMP消費で出現、発動させる。発動に詠唱が必要。その代わり、発動する魔法は魔弾と違った効果を持つものが多い。


魔法ジャンル

・ノーマル

属性に応じた形態の特殊攻撃

・スピア種

威力、刺突攻撃、弾速がとても早い魔法攻撃を飛ばす。

・ボール種

威力、爆発攻撃のタイプ攻撃。弾速が遅い代わりに爆発タイミング指定可能

・ウォール種

攻撃速度ゼロ。出現箇所から動かない魔法盾。

・マン系

〔■■〕使用それぞれ精霊型となり自動追尾する。

・ガン系

弾速特化。刺突攻撃では無い。

・ニードル系

刺突攻撃特化。どこまでも貫通していく。

・レーザー系

〔■■〕使用。一直線に属性攻撃をゼロタイムで伸ばす。

・トラップ系

〔■■〕使用。感知型爆発攻撃を任意の場所に設置する。

・スラッシュ系

斬撃攻撃の魔法。

・スタンプ系

打撃攻撃の魔法攻撃。

・エフェクト系

〔■■〕使用。見た目華やかな飾り。

・マトイ系

〔■■〕使用。普通の物理的ななにかに魔法を重ねる。


ーーーー



 魔弾と魔法。どちらもMPを必要とするが厳密には仕組みが違う。

 魔弾は相手に、もっと正確には相手のMPに当たれば付与された属性系、変化系などの効果を発動させながらダメージを与え。また物理的なものに当たっても消える。魔弾そのものの核は消え、現象だけが残る。


 対して魔法は、MP消費して属性系に「タイプ」を付与し、その現象を攻撃とする。魔弾のようにMPに当たろうと、物理的なものに当たろうとその現象は変わらず、物理法則的にその現象がゼロになるまでそれは続く。


 MP消費は多いものの。魔法の本質は現象そのものであり、魔弾のように単純な「弾」では無い。




 ヒカリはさらにウィンドカッター。風属性ノーマル魔法。


[〔風〕属性に「斬撃攻撃」タイプを付与した現象]


をキツツキに当てたのだった。


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