SS009  小鳥たちの襲撃


 上から急降下してくる小鳥たちをヒカリと二人でさばいていく。どんどん突撃してくる小鳥たちは愛くるしい見た目なのだが、そのくちばしの鋭さが殺傷能力の高さを物語っていた。

 これはほんとに辺りどこが悪いと即死かもしれない。



 槍を振り回し何とかしのぐが刺突ダメージ特化の武器なので真っ直ぐに突っ込んでくる攻撃との相性が悪い。


 仕方が無いので魔弾で対抗しよう。幸い、この小鳥たちの1匹あたりのHPはかなり低い。問題は数だが魔弾を〔細分化〕することで威力を犠牲に弾数を増やして攻撃する。



ーーーー



スキル:細分化


カテゴリー:動作系

ランク:黄

発動:アクティブ

概要:魔力により生成する魔弾や生成物を〔細分化〕した状態で生み出す。細分化する度合いにより追加でMPを消費する。



ーーーー



「MP。気をつけて」


「ラジャー!!」



 ヒカリからの注意喚起ちゅういかんきもあったようにこの小鳥たちは上からかなりの数現れている。このまま無作為に魔弾を出し続けるとあっという間にMP切れになるだろうことは予想できる。



 小さい魔弾一発一発を丁寧ていねいに小鳥たちに当てていく。まるで関係ないと突っ込んでくる小鳥。避ける素振りも見せない。避けられないから当てやすいが恐怖心は無いのだろうか?


 無駄弾を無くすために全ての魔弾を同時に射出せずに〔待機〕状態で自身の付近にまとわせる。こうすることで即席の防御にもなる。


ーーーー



スキル:待機


カテゴリー:命令系

ランク:白

発動:アクティブ

概要:実行中の行動を〔待機〕状態にする。待機状態中自身の半径1.5m以内に実行対象がある場合のみ魔弾や技を再構成し発射することが出来る。また再構成に掛かる時間をほぼゼロにする。再構成コストは必要ない。ただし再構成に使えるスキルは既に構成されていたスキルのみで生成時の個数、属性、スキルを途中変更することは出来ない。待機最大時間は120秒。



ーーーー



 ヒカリの方はグローブで小鳥たちを迎撃げいげきしている。さながら反射神経ゲーのような無理やり「飛んできたのを殴る」行為だがコスパはいい。何せ素手だから。

 ついでに魔弾で自分の視角範囲外を処理するヒカリ。なかなか上手い。


 鳥達の攻撃は2分ほど。その間2人で…。考えたくもないが落ちたら死ぬであろう高さかつ極少の足場を移動し戦った。

 そうして鳥の数が次第に減り全て処理しきることに成功する。MPは半分くらい消費した。これで安全に幹登りができるが少し回復ついでにゆっくり上に登ろうと思う。



「んじゃ、ゆっくり行こうか?」


「ん。またこられる。MP無くなる」



 槍だと対応しずらいしね。一応技を使えば行けそうだけどMPが心もとない。まだまだ上が続いている以上ここで消費しすぎるのは嫌だ。



 それから10分。何事も無かった私たちは順調に上に登って行く。ヒカリも足場が真っ直ぐ平面ならと慣れた様子で後を着いてきていた。




 が…




「んッ!?!?!?」



 短い悲鳴。即座に何かあったのかと後ろを振り向くといるはずのヒカリがいなかった。


「ヒカリ!?」


 想定できる可能性はただ1つ。


「え!?嘘でしょ!?落ちた!?」



 この高さから落ちたらまず助からない。本来なら後ろを着いてくるはずのヒカリはだがしかし。後ろを振り返るとおらず、短い悲鳴とともに消えた。

 最悪の予想に従い即座に下を覗く。もう下も見えない高さであるが…




「生き…てる…。ん…」



 その落下したポイントが良かったのか途中ちょうどよくあった足場に落ちたらしくダメージ無くヒカリは生きていた。


「良かった…。下まで落ちたのかと」


「足元…確認。大事…。細心の注意…」



 この後更に登るスピードが落ちた。ヒカリがとても、それはそれはとても細心の注意をはらって着いてくるため速度が落ちたのである。

 さすがにもうあんな経験はしたくないらしいヒカリはその時だけは顔が真っ青で言葉が震えていた。


 うん。だから死ぬ時は一緒みたいに服つかみながら着いてくるのやめようか。それヒカリ落ちたら私も道ずれ喰らうんですけど!?

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