エピローグ
第31話 《俺》これから
街へ戻った俺たちはギルドへ報告に向かう。俺たちより先にギルドにはシルバーの遺品と遺跡の報告書は届いているはずだが、それとは別に、無事に戻った報告が必要だった。ギルドの厩舎に馬車を止め、俺たちは受付へ向かった。
「ただいま戻りました」
「マーリンさん。お疲れ様です。ギルドマスターを呼んできますので、あちらの部屋でお待ちください」
リズに労いの言葉をもらい、俺たちは打ち合わせ部屋に入り、ギルドマスターの到着を待った。
「ご苦労様」
「ただいま戻りました」
悲痛な表情のギルドマスターから労いの言葉を受け、パムのギルドで話したことと同じだが、俺は遺跡内での事を話した。
「そうか、ありがとう。シルバーは長年、俺の元で働いてくれた。残念だ」
俺にギルドマスターを慰める言葉は見つからなかった。
俺たちはギルドを後にした。明日、明後日は休養し、その後に今後の活動やパーティーの事を話し合うことにした。
翌日、遅めに起きた俺は茶を飲みながら『ボー』っとしていた。
こちら世界に来て1か月ぐらいになるだろうか。サラに介抱され目覚めた時はどうなる事かと思ったが、カリンと出会い、この世界の知識を覚え、狩りに、ダンジョンに、と忙しくしている。命の価値が安い世界だから俺もあっさりと死んでしまうかもしれないが、こちらに来てからの方が俺は充実しているんじゃないだろうか。
それでも前の世界に残してきた両親の事は気になっている。前の世界で俺は死んでいるのか、それとも意識無く入院しているのか。墓の中ならまだ良いが、入院して面倒を掛けていると思うと気が滅入ってしまう。どちらだとしても、この世界にいては分からい事ではあるが。
この世界に来てからの事を考えていると、ドアを叩く音が聞こえた。
『トン、トン』
誰だろうとドアを開けてみると、いつものショートパンツにブーツで、腰に短剣の休日スタイルのカリンであった。
「マーリンさん。鍛冶屋へ行きませんか」
鍛冶屋か・・・。武器も防具も壊れているので丁度いい。俺は武器と防具を鞄に入れ、カリンと鍛冶屋を目指す。
前の世界みたいに長生きは出来ないかもしれないが、仲間も出来たし、ここで生活するのも悪くない。俺はこの世界で暮らしてみようと思う。
『父さん、母さん、俺はこの世界で元気でやっている。長生きしてくれ』
この異世界で暮らしてみようと思う 森野正 @morinoma
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