第30話 《俺》報告
ダンジョンから帰ってきた俺たちは、ギルドの1室を借りて身支度を整えた。流石に肌が見えるようなボロボロの状態では、いろいろと面倒だ。
一息ついた俺たちは、ギルドの打ち合わせ室に集まった。ギルドマスター、受付の女性、ラル―の3人もいる。まずは遺跡で見つけた遺品をテーブルに並べた。鎧、剣、杖、服などだ。沈痛な空気が流れる。
そして遺跡の中であった事をひとつずつ話していく。遺跡の通路、小部屋、アンデッド、広場、ミノタウロス、スライム、スケルトン。ギルドマスターとラル―は聞き入り、受付の女性は報告書として提出するであろうメモをとっていた。今回、小部屋は調査していない。ボス部屋と思われる所に入れば、扉が中からは開かず、ボスを倒す必要があると注意事項を添えた。ボス部屋に入らなければ、入り口に戻ることも可能だろうと思うが、今後の調査はパムのギルドが主体で行うことになるだろう。
シルバーの遺品は、報告書と一緒に俺たちより先にラモジュのギルドに送られることとなった。
報告を終えた俺たちは、ギルドが手配してくれた近くの宿に泊ることになった。1階が酒場、2階が宿というスタイルの宿だ。部屋に荷物を置いた俺たちは1階に集まる。
「お疲れ様」
「「「お疲れ様です」」」
俺たちは杯を傾ける。依頼達成ではあるが、シルバー達を思うと陽気に振舞うのは・・・という気持ちもあるわけだが、いつまでも落ち込んでも居られない。料理が運ばれ、2杯目になるころには、いつもの俺に戻ってきていた。
「これ、上手いな」
大ぶりの焼いたソーセージを食べる。香辛料の効いた、パリッとした食感。エールに合い、とても上手い。カリンは煮込み?シチューだろうか?を黙々と食べている。サラはサラダをモリモリ食べている。肉よりも野菜が好みだろうか。レベッカはワインを勢い良く空けているようだが、酒豪なのだろうか。4人で酒を飲むのは今回が初めてだから分からないのだが。
今回のダンジョンは、1日目以外は保存食を口にしていた。それにしても1日だと思った遺跡探査が、出て来てみれば3日経過していたとは、ダンジョンは不思議だな。いや、あの遺跡が不思議なのだろうか。
サラとレベッカが居たから何とかなったが、俺とカリンだけだったらシルバー達と同じ運命を辿ったかも知れない。ミノタウロスはそれ程に強かった。
「サラとレベッカはラモジュの街に戻ったら、どうするんだ?」
「私は教会の回復士に戻りますが、レベッカはこのパーティーに残ります。今回のように回復士が必要なときは、臨時であれば、言ってくだされば参加します」
俺は酒の席の話題として出したつもりだったのだが、サラはレベッカを推してきた。しかも回復士が必要なら臨時パーティーで参加してくれるそうだ。確かに魔法使いも回復士も居ればパーティーは安定するだろうが、俺に彼女たちを導くことができるだろうか。
「魔法使いさんに援護して頂けるのはいいですね」
俺が違う事を考えていると、カリンも混ざってきた。遠距離からカリンの矢だけではなく、魔法もあれば狩りも楽になるが、その前に、レベッカはどうなのだろうか、一言も喋っていない。
「レベッカはどうなんだ?」
「私は・・・こんな感じなので・・・パーティーに・・・入れてもらえるのであれば・・・入れてください」
凄く、たどたどしいが、気持ちは分かった。そもそも俺はこの世界で今後も生きていくのだろうか。俺の気持ちが固まらずにフラっと居なくなれば、彼女たちに迷惑をかけてしまう。つまりは俺の気持ち次第なのかな。
「皆の気持ちはわかった。パーティーの事は考えておくよ」
俺はありふれた事を言って、その場を濁した。
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