第28話 《俺》遺跡2
扉の先は通路になっている。俺たちに『進む』以外の選択肢はないが、広場で休憩している最中にミノタウロスが復活したら大変なので通路に出て、扉を背にして小休止をとった。みんな疲弊している。無理もない、冒険者は死と隣わせの職業だ。知り合いではなかったが彼らの死は心苦しい。
「みんな、どうした。俺たちが彼らを連れ帰ってやらんでどうする」
「そうね。私たちが元気で帰らなきゃね」
「「はい」」
俺たちは通路を歩き出した。左の曲がり右に曲がり、小部屋がいくつかあるが、全部スルーする。階段を下りると、豪華な扉の前に出た。ここがラスボスの部屋になるのだろうか。扉の前で休憩をしつつ装備の点検をする。
「ここが最後だといいな」
「はい。そうですね」
俺の呟きに答えたのは誰だろうか。皆が生きて帰れればいう事はない。扉を開けて中に入ると、そこも広場になっていた。中央には、元が分からないが、とにかくデカい角のあるスケルトンがいた。スケルトンの右側には、これもデカいスライム。某ゲームに出てくるような青い頭の尖ったプニプニのアレだ。この2体以外に仲間は見当たらない。ボス部屋と思われる所にいる2体が見た目通りに弱者では無いと思うのだが・・・。
レベッカがスライムに氷魔法を、サラがスケルトンに聖魔法を放つ。スライムもスケルトンも体が固まり、動きを止めた。俺はすかさず走り込み、剣で2体を投打する。2体は砕け、床に散らばった。こんな呆気なく終わりなのだろうか。しばらくするとスライムとスケルトンの破片がモゾモゾと動き出し、それぞれが意志をもつように動き出した。
「ぶ、分裂しやがった・・・」
2体が分裂し100体になった。1体づつは弱いが、群れは手ごわい。俺たちは1体づつ潰していくが、潰しても分裂して増えていく。スライムの体液で鎧や剣が溶け始めている。このまま溶けてしまえば武器も防具も無くなってしまい、対応できなくなってしまう。どうしたものかと俺は考える。魔物は魔石で動いている。つまりは、どこかに魔石を持つ親玉がいるのではないかと思う。
「レベッカ。明るい玉をだしてくれ」
俺はレベッカに指示する。スライムもスケルトンも中が見えるから、明るい玉で魔石が光って見えるんじゃね?と考えた。レベッカの出した玉にスケルトンが反応し群がり始めた。スライムを見渡すと体が透けて見えているが、手前のスライムには魔石は見当たらない。最奥にいる1体の体の中央に影が見えた。あいつが親玉だ。俺は奥を指差した。
「奥のスライムが親玉だ。あいつを先に狩る」
俺は奥に行こうとするが、小さいのが多くて前へ進めない。カリンの矢がスライムに刺さるが、動きを止め、暫くすると分裂する。スライムは増える一方だ。
「マーリンさん、カリンさん、避けて!」
レベッカの杖から扇状に氷魔法が放たれ、ボス手前のスライムまで凍り付いた。俺は凍ったスライムを踏みつぶしながらボスまで走り寄り、鞄からミスリル剣を取り出しボスに突き刺した。剣はヌルっと入り、ボスの魔石を割った。しばらくするとスライムは消え去り、スケルトンだけが残った。スケルトンの親玉はどれだろうか。もう、剣も鎧もボロボロだ。俺もそうだが、女性陣の服が溶け、肌が見え始めている。
俺はスケルトンを観察する。明るい玉に群がっている1体に角が見えたが、あれが親玉だろうか。ボロボロの鉄剣を振り回し、小物のスケルトンを粉砕しながら近づき、ミスリルに持ち替え、上段から角のあるスケルトンを半分に割った。しばらくするとスケルトンは消えていった。
戦利品は、スライムが割れた魔石と不思議だがビンに入ったスライム液。スケルトンは魔石とスケルトンの骨だった。骨は何に使えるのだろうか。部屋を調べたが、他には何もない。俺たちは次への扉をくぐり、扉を背にして通路で休憩することにした。
「疲れた・・・」
「増える魔物は退治できませんよ」
「あぁ。アレは無理・・・だ」
カリンと話ながら俺はみんなを見た。鎧も服もボロボロで肌が見えていて、俺は思わず目を反らした。元が良い歳なのでウブではないが、ジロジロ見るのは憚れる。女性陣も俺の行動を理解したのか、ボロボロのマントで隠し始めた。カリンはあまり分かっていないようだが・・・
休憩を終えた俺たちは通路を進んでいった。左に曲がり右に曲がり、この通路に小部屋は無い。階段を上がると、遺跡の入り口にでた。遺跡を一回りしてきたようだが、どこをどう歩いたのか分からない。出口の階段下に俺たちのベースキャンプが見えるので、間違いなく遺跡の入り口だと思う。
焚火の前にはラル―がいた。3日後と言っていたはずだが、何故いるのだろうか。
「ラル―。3日後じゃ無かったのか?」
「今日が3日目だ」
俺たちは目が点になっていたと思う。俺たちは遺跡の中で寝ていない、一回りしただけで3日経っていた。ダンジョンの不思議、いや、遺跡が不思議なのかな。
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