第27話 《カリン》遺跡
カリンです。ほのかに明るい遺跡前で交代で見張りをしています。魔物の声も虫の鳴き声もない、静かでちょっと気持ち悪い所です。今回はスピード重視なのでお湯が沸かせる程度で、料理道具は全て置いてきました。夕飯も保存食の干し肉を使った簡単なスープと硬いパンです。普通の冒険者は、皆さん、こんな食事で平気なのでしょうか。サポーターが皆、料理ができるとは限りませんが、美味しい食事は基本だと私は思うのですが、どうなのでしょう。
朝になり、案内のラル―さんが帰り、私たちは遺跡に入ります。先頭は斥候の私です。一応、気配察知と罠解除はギルドで習っています。慎重に遺跡の階段を下りていきますが、罠は無いようです。階段を下り、通路に出ました。小部屋があるようですが、魔物の気配は感じません。マーリンさんがレベッカさんに光の玉を出すように言いました。光の玉を出した途端に魔物の気配が増したので、私は急いで後に下がりました。小部屋からアンデッドが出て、光の玉に群がります。何ですか、これ?虫ですか?
「レベッカ。もっと暗い玉をだして、あの玉を消してくれ」
マーリンさんが指示を出します。アンデッドは何事もなかったかのように小部屋へと帰っていきました。ここには変なのが居るんですね。マーリンさんとサラさんの話を聞きながら、周囲の警戒をしますが、魔物の気配はありません。小部屋を無視して通路を進んでいくと、装飾のついた扉のある部屋の前に来ました。マーリンさんが警戒しながら扉を開けました。広場になっているようで、私たちが入ると扉が閉まり、中からは開けれないようです。え?
「戦闘準備!」
マーリンさんの号令で私たちは展開しました。『大きい!』私の素直な感想です。ミノタウロスってこんなに大きいのでしょうか。レベッカさんが火の魔法を放ちますが、ミノタウロスが気にもしていません。私もボウガンから矢を放ちますが、当たっても弾かれてしまいました。皮膚がとんでもなく硬いようです。
ミノタウロスが咆哮し、サラさんが防御魔法を発動しましたが、あまりに大きな咆哮に私は耳を押さえました。それでも頭がクラクラします。
サラさんがマーリンさんに補助魔法を掛け、マーリンさんはミノタウロスに向かっていきました。私たちは、攻撃が効かないのでは邪魔でしかありませんので後に下がります。マーリンさんが右に左にとミノタウロスの棍棒を躱しながら切りつけていますが、ミノタウロスにあまりダメージはないようです。マーリンさんが鞄から先日使ったミスリルの剣を取り出し、青く光らせませた。マーリンさんが駆け抜けざまに一閃。今までの剣はなんだったのでしょうか、ミスリル剣はミノタウロスの脇腹を切り裂きました。切られたミノタウロスは痛みを感じていないのでしょうか。棍棒を振りかぶり、床に叩きつけました。すごい衝撃と床の石が粉砕され飛んできます。私たちはサラさんの防御魔法に守られていますが、マーリンさんは石と一緒に飛ばされ、床を転がっていきました。
サラさんがマーリンさんの回復に向かいます。私とレベッカさんでミノタウロスの注意を引き付けて置かなければなりません。レベッカさんが氷魔法で足止めを狙いますが、あまり効いていないようです。私もボウガンで顔を狙いますが、ミノタウロスは小虫を払うように矢を払います。しかし、ここで諦めてはマーリンさんが回復されません。私もレベッカさんも必死の抵抗を見せます。レベッカさんは氷、火、水と弱点を探るように魔法を繰り出します。私は矢を連射します。注意が引ければ、倒せなくても良いのです。
あっ!マーリンさんが来ました。勇者マーリンの復活です。なんだか私は興奮しています。マーリンさんは私たちの攻撃の隙間を付き、ミノタウロスの右腕を切り落としました。レベッカさんが石魔法をミノタウロスの頭に当てました。ミノタウロスが膝をつき、マーリンさんが背中側から剣を突き入れました。ミノタウロスは魔石を砕かれたのでしょう、消え始めました。ようやく、戦闘が終わりました。
ミノタウロスと戦った広場で、シルバーさんたちの装備と思われるものを発見しました。胸が痛みます。あの時、マーリンさんが回復しなければ、私たちも同じ運命だったと思います。冒険者という仕事上、死は身近ですが、あまり見たいものではありません。
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