ダンジョンへ
第23話 《俺》馬車
ギルドを出た俺たちはダンジョン町のパムを目指して街道を走って行く。乗合の駅馬車だと午後出発して途中1泊して2日の工程だが、俺たちは急ぐので早朝にでて夕方に着くように進んでいる。馬を休ませるのに休憩を何度か取るのだが、あいかわらず馬車は尻が痛い。
俺はサラに世話になっているのでお礼を言った。
「サラさん。その節はお世話になりました。元気で活動できています」
「リズに呼ばれた時は驚きました。マーリンさんは意識を失っていて動かなかったんですから」
「当時の記憶がないので、自分でも良く分からないんですよね」
元々、こちらの人ではないので記憶は無いのだが、ここでも記憶喪失という事にしておこう。その後、先日のボア狩りの話になり、カリンを交えて話をした。馬車での話は俺とカリン、サラの3人になる。レベッカは人見知りなのか、元々それほど話さないのか、俺たちの話に混ざってこない。
「レベッカ。あなたも加わりなさい」
サラがレベッカに促すが、レベッカは顔を伏せ、モジモジしている。この感じは人見知りだなと俺は思う。
「レベッカ。もう少し皆と仲良くしないと、いつまでもパーティーが決まりませんよ」
何だか事情がありそうな雰囲気になってきた。この辺の話はあまり得意ではないのだがなぁ。
「レベッカと私は孤児院で一緒に育った仲です。私は教会に入り回復士に、レベッカは魔法使いなりました」
サラが俺に向かい説明し始めた。サラが言うには魔法は『使えない』『回復にむく』『攻撃にむく』の3つに分けられるそうだ。検査の結果、サラは回復士に、レベッカは魔法使いになったそうだが、孤児院に居た時からレベッカは人見知りでサラぐらいしか友達はいなかったそうだ。冒険者になりパーティーに入っても人見知りは変わらずで、1つのパーティーに長くは居れなかったようだが、それでもCランクになったのは大したものだと思う。
「レベッカ。そろそろ1つのパーティーに所属しなさい。そうじゃないと上へは行けませんよ。ねぇマーリンさん、魔法使いは必要じゃないですか?必要ですよね!」
途中から俺に話を振られた。必要か、そうじゃないか、と言われれば俺たちには必要だが・・・
「まだカリンとも臨時パーティー状態なんですよ。魔法使いが必要か?と言われれば、必要なんですけどね」
「ほらレベッカ。今回の遠征で活躍してマーリンさんに認めてもらいなさい」
なんだか、姉サラ、妹レベッカ、みたいだなぁと思った。
夕方になり、俺たちはダンジョン町のパムに着いた。
パムはあまり高くない石塀で囲まれた町で、ダンジョンを中心に大通りに面したギルドと商店、宿、裏道に少しの住宅という構成のようだ。基本、ダンジョンに入る冒険者とそれを相手にした商店になる。食料は領都のラモジュから運んできているらしく、運送費分、街よりも少し物価が高いようだ。
俺たちのギルド横に馬車を止め、ギルドの中に入った。夕方ということでダンジョン帰りと思われる冒険者が多くいた。初めての町のギルドでお約束の展開かと思われたが、ギルドに居る冒険者は皆、疲れた表情をしているが、何かあったのだろうか。受付にラモジュのギルドマスターの手紙を見せ、俺たちは奥にある打ち合わせ室に案内された。
しばらくすると、この町のギルドマスターと思われる人物と手紙を渡した受付の女性、獣人の冒険者が入ってきた。俺たちは簡単に自己紹介を済ませ、今回の本題に入った。
ラモジュのギルドマスターに聞いた通りで、シルバー教官とこちらの冒険者3人の計4人が遺跡調査に行って行方不明になり、今日で9日目。6日目に獣人の冒険者ラル―が見に行きキャンプを発見したが誰も居なかったそうだ。
明日から俺たちは遺跡調査に入るが、遺跡までの案内はラル―が務めてくれるようだ。1度、ギルドに戻り、3日後にもう1度、様子を見に来てくれるらしい。
話がひと段落したところで、俺は先ほどの疑問を聞いてみた。
「ロビーに居た冒険者が疲れているようなんだが?」
「あぁ、ダンジョン内の魔物がいつもより多いらしい。不吉な気配もするが、今のところは大丈夫だ」
魔物が増えているのには原因がありそうだがなぁ。ギルドマスターが大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。
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