第19話 《カリン》打ち上げと鍛冶屋と買い物と

 初めてのパーティー依頼を完了してギルドに戻ってきました。なんですかね、あのボアの数は。以前行った時には、あんなにボアは居なかったと思うのですけど、狩人が狩ってないんでしょうか。狩人が狩ってないとお肉が不足しますから、そういう事ではないんでしょうけど。

 ギルドで報告して報酬を頂きました。マーリンさんから『これからも宜しく』と言われ、4割の報酬を頂きました。貰いすぎですと返そうとしたのですが、『次の狩りの時もお願いしたい』と言われると返せないじゃないですか。私はマーリンさん意外とパーティーを組む気はないので、次もマーリンさんになりますけどね。


『祝杯をあげたい』というマーリンさんと酒場に来ました。酒場はあまり知らないのですが、前に所属したパーティーで来たことのある酒場にしました。料理が美味しかったと思います。初めてのパーティー依頼の打ち上げです。

「パーティー依頼。お疲れ様」

「お疲れ様です」

 私もエールを貰い、マーリンさんと乾杯しました。果実系の香りがしてエールが美味しいです。ついつい飲み過ぎてしまいそうな味わいです。そして、このポトフが美味しいのです。肉が柔らかくなるまで煮込まれ、芋と野菜に味がしみ込んでいて絶品です。マーリンさんも気に入ったようでパクパクと食べています。マーリンさんに、この店を紹介して良かったと思います。

「最初はどうなるかと思ったけど上手くいってよかったよ。煙玉があんなに効くとは思わなかった」

「私、寝ちゃいましたもんね」

 寝たのは事実なので否定はしませんが、煙玉が効きすぎて、私は寝たのです。寝たのを挽回するように、ボアを袋に入れ、村に戻り、解体と、その後の処理は頑張りました。

「2、3日休んだら、また依頼を受けようと思う。そうそう、鍛冶屋の知り合いはいない?」

 鍛冶屋?マーリンさんは武器のメンテナンスに行くのですね。であれば、私のボーガンを作って貰った、ドワーフの鍛冶屋を紹介しない手はありません。ただ、エルフとドワーフって・・・


 翌日の午後、マーリンさんと南区の鍛冶屋へとやってきました。マーリンさんは南区は初めてなのでしょうか、店先の商品をいろいろと興味有り気にみています。西区には無い商品もありますし、いいんですけど。

 ドワーフのグラルさんの鍛冶屋へ到着しました。

「こんにちは。グラルさんは居ますか」

 グラルさんの奥さんが店番をしています。奥から音が聞こえるのでグラルさんも居るようですね。

「おうカリン。ボーガンの調子はどうだ?」

「とっても良いです。今日はボーガンのメンテナンスと、新しいお客さんを連れてきました」

「エルフか・・・」

 やっぱり仲がわるいのかなと私は聞いてみました。

「エルフとドワーフって仲が悪いんでしたっけ?」

「それは昔の話だ。俺の爺さんぐらいの世代だと喧嘩してたかもな」

 マーリンさんはビックリしたようは表情を一瞬したあと、元に戻りました。グラルさんは何とも思っていないようで。握手しています。私はボーガンをグラルさんに渡してメンテナンスをして貰います。

 マーリンさんも武器、防具を出してメンテナンスしてもらうようです。あと、剣を作って欲しいそうで、金属を鞄から出しています。グラルさんの驚き方を見ると、珍しい金属みたいですが、私には良く分かりません。

「マーリンさんはギルドで倒れて、記憶が無いみたいです」

 グラルさんが金属の事をマーリンさんに聞いているようなので、マーリンさんが記憶を無くしているとホローしました。

 メンテナンスは明後日できてるとの事なので、明後日の午後に来る約束をしました。


 鍛冶屋の後は、お買い物です。マーリンさんとデートなのです・・・という妄想です。

 市場もマーリンさんには珍しいのでしょうか。それとも何か探しているのでしょうか、キョロキョロしています。

「ここには麺はないのか」

 メン?何でしょうか。

「こう、小麦を練って細長くしたようなもので、汁に浸かってたり、汁に絡めて食べるやつ」

 知らない食べ物ですね。

「この前の肉煮込みの汁の材料って分かるか?」

 それなら、たぶん・・・

 私たちは、市場の外れにある変わったお店へとやってきました。このお店、ドアが横にズレます。私は、初めて見ますが、マーリンさんは知っているようで、お店に入っていきました。奥からあまり見ない服を着た老人が出てきました。店主の方でしょうか。

「いらっしゃい。何かお探しですかな」

「茶色い塩気の強い液体で煮物に使うものが欲しいんだが」

 店主らしき方とマーリンさんが話をしています。『ヒシオ』という調味料だそうで、少し入れて使うものだそうです。今度、煮込みを作る時に私も入れて見ましょう。

 私はお店を見て回ります。お店の中には棚があり、いろんなビンが並べてあります。私も料理をするので調味料はいろいろ知っていますが、始めて見るのもあります。黄色いのとか、緑色のとか、黒いツブツブとか、は何の調味料でしょうか。

 マーリンさんのお話が終わったようです。裏にある店に行くそうです。


 こちらのお店もドアが横にズレします。お店は食堂のようでテーブルがあります。肉煮込みの匂いがします。この匂いは知っています、先ほどの『ヒシオ』が使われているようです。マーリンさんが『麺』を注文しました。メンとは、どんな料理何でしょうか。

 お椀には、肉が少しと、茶色い液体に、長い物体が沈んでいます。見た目が茶色一色で地味ですね。マーリンさんはテーブル横にある箱から短い棒を2本取り出しました。棒で何をするのでしょうか。『箸』というものらしく、2本使って食べ物を挟んで食べるそうです。マーリンさんが器用に動かしています。私も試してみましたが、ちょっと無理・・・

「なんだか嬉しそうですね」

 マーリンさんはニコニコしながら『麺』を食べています。メンはパンと同じように小麦を練って作られるそうです。私には塩味が強かったですが、メンは美味しかったです。マーリンさんが嬉しそうなので、良いとしましょう。

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