第13話 《カリン》魔物狩り

 マーリンさんと臨時パーティーを組んでの初狩りは『村に出没するボア』に決まりました。森を挟んで隣り合う2つの村がそれぞれ依頼を出しているようなので、2つ受けることにしました。この村には別のパーティーに所属していた時に2度ほど行ったことがあります。馬車便は午後なので準備に戻ってから出発するようにと私はマーリンさんに言いました。

 家に戻った私は必要な装備を考えます。1つ目の村には宿があるはずなのでいいのですが、2つ目の村はそれほど大きくないので宿は期待できません。そうすると野宿の道具が必要です。それにボアの搬出と解体をしないといけません。村人に手伝ってもらって肉を駄賃にするのもいいかも知れませんが、この辺はマーリンさんに相談しないとダメですね。それと村に着くまでの食料が必要です。マーリンさんの気にしていたお茶も入手しましたのでそれも必要ですね。香りを気に入ってくれるといいですが。

 荷物をリュックに入れマーリンさんの家に来ました。マーリンさんは荷物の多さに驚いているようですが、これが遠征では普通です。


 馬車に荷物を載せ出発です。マーリンさんは嬉しそうです。初馬車でも無いでしょうに、馬車に揺られ、しばらくした頃、マーリンさんはモゾモゾしていますが、どうしたのでしょうか。

「何それ?座布団?クッション?」

 いや、これ、前の席にあったじゃないですか。馬車の必需品ですよ。私は前の席から座布団を取り、マーリンさんに渡しました。マーリンさんは記憶を無くしているそうですが、いろいろ知らないことが多くないだろうか。そんなに忘れちゃうのかな。

 1日目の宿泊地でマーリンさんにお茶を出しました。マーリンさんは匂いを嗅いで、一口飲みました。

「うまい」

 良かった。一安心です。

 馬車は何事もなく山を越え、村に入りました。今日は宿で泊ります。


 朝食の後、村長宅に行きボアの話を聞き、現場を確認しに来ました。柵が倒れ、畑には足跡が付いています。大きいの小さいのいろいろ。ひと際大きい足跡がありました。たぶんボスですね。足の大きさからみるに大分大きいと思います。

 隣村に歩いていきます。こちらの村長にも話を聞かないといけません。最初の村と同様にボアに荒らされているとのことでした。この村で空き家を貸してくれるとのことなので、今日は空き家に泊まります。まぁ物置ですね。屋根と壁があるだけ良いです。


 翌朝、森に入りました。私は護身用のボーガンを装備します。村の近くは整備されていますが、奥は草木がいっぱいです。これじゃ獣道も分かりません。マーリンさんはどうするのでしょうか。

 マーリンさんは何か分からない言葉を呟きました。風が吹いたかと思うと草木が割れ、道が出来ました。『エー!何これ!』私は口を開けてポカンとしていたと思います。

「どうよ!エルフの力!」

 いやいや、エルフでもこんな事できる人は、居ないと思うんですけど、マーリンさんには特殊な才能があるようです。

 私たちは道に沿って進みました。洞窟のある窪地に出ました。草木が無くて土がむき出しです。ボアが土でスリスリしたんでしょうね。子供が4頭、オスが2頭、メスが9頭で全部で15頭います。ボスっぽい姿は見えません。マーリンさんと相談して子供は私が、大人はマーリンさんが狩ることで決まりました。先ずは煙玉だそうです。前に何度か使ったことがありますが、私は苦手です。眠くなっちゃうんです。マーリンさんが煙玉を風上に投げました。煙が漂います。私は・・・。


 あれ?なぜこんな森で寝ているのでしょうか。

「グォォォォォ!!!!」

 うぉ!何ですか、あの叫びは?ボスのボアでした。マーリンさんが戦っています。寝てはいられません。私はボーガンに矢をセットして近場に居るボアに放ち、1頭、2頭と撃っていきましたが、全部は倒せません。

 ボスは頭を振り、牙でマーリンさんを攻撃しています。私は狙いをつけ、ボスに矢を放ちました。目には刺さらなかったようですが、顔に当たったようです。ボスが一瞬ですが、こちらを睨みます。怖いです。隙ができたところでマーリンさんが首を切りつけました。血管を切ったのでしょうか、血が噴き出しています。あれではボスは長くはもたないでしょう。マーリンさんは剣を振りボスに傷をつけていきます。ボスの動きが鈍ったところでマーリンさんは反対側の首にも切りつけました。

「ドカーーン!!」

 ボスが倒れました、マーリンさんの勝利です。止めをさしたマーリンさんは、少し離れた所にある石に腰かけました。

「お疲れさまです」

「あぁ、疲れたよ。カリンの矢で助かったよ。あれが無かったら俺が倒れていたかもな」

 エヘ。お手伝い出来て良かったです。


 私はリュックから魔道具の袋を取りだし、ボアに被せ、魔力を注ぎました。ボアは袋に吸い込まれました。いつもの収納風景ですが、マーリンさんは目を点にしています。初めて見る光景なのでしょうか。気にせずに他のボアも同様に袋に入れていきます。1頭に1枚なので9枚の袋を使い収納しました。小さくなったボア袋をリュックの中と外に括りつけ、私たちは村へ戻りました。

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