魔物狩り

第11話 《俺》馬車

 俺とカリンはギルドを訪れ依頼掲示板を確認する。色んな依頼が張り出されているが、初めての依頼なので難しくないのにしたいと思う。依頼は護衛、討伐、常設の3種がある。護衛は文字通りに行商や商隊の護衛で、魔物や盗賊から守る依頼になる。討伐は魔物が出た村からの狩り依頼だ。常設は薬草採取や獣狩りのいつでもできる依頼だ。俺のBランクは護衛依頼が主になるが、護衛なんてやったことが無い。

「これ、どうですか?」

 カリンが何か見つけたのは『村にボアが出て困っています』。ボア・・・イノシシか。その依頼が2つ。カリンが言うには森を挟んで隣合った村で街から馬車で2日ぐらいの距離にあるようだ。森にいるボアが2つの村を行き来しているのだろうか。最初だし、これでいいか。

「それにするか」

 俺は2つの依頼票を剥がし受付へ持っていく。今日はリズは居ないようだ。依頼を受理してもらい遠征の準備で家に戻ってきた。カリンも家に帰って準備してくるそうだ。街から1つ目の村には駅馬車と言えば良いのだろうか、乗合馬車あるようだ。1日目は山の麓までで、2日目に山越えして村に入るようだ。街からでる馬車は昼頃のようで、逆に村から出る馬車は朝一で山越えしてくるらしい。

 日帰りから2泊ならそのまま行くが、3泊以上するだろうからそれなりの準備が要る。着替え、ポーション、携帯食、予備の装備などなど。俺の場合、ゲームの鞄が使えるから大体は入っている。何故、ゲーム時の鞄が使えるかは知らんが。

 カリンが戻ってきた。体の倍以上ありそうなリュックを担いでいる。

「何入ってるんだ」

「宿に泊れるのか、野宿なのか分からないので、野宿できる道具が入ってます。それと狩ったボアを入れる袋と解体する道具に食料です」

 あぁそうか。狩って終わりじゃないんだな。村に持ち帰り、解体したりしないとだな。それに野宿か、すっかり忘れてた。宿に泊ることしか考えていなかった。カリンは頼りになる。


 馬車の停車場に行くと午後便の準備中だった。俺たちも村までの旅券を購入し馬車へ乗り込んだ。カリンの大きなリュックをどうするのかと思っていたら、馬車の後にある荷物置き場に括りつけた。軽トラの荷台みたいだなぁと思う。乗客は俺たちの他に3人。運転手?御者を入れて6人の旅だ。初馬車にワクワクしている。

「何だか嬉しそうですね」

 隣に座るカリンに言われたが、『馬車が始めてでワクワクしている』なんて言えないので、旅に行けるのが嬉しいと誤魔化した。短い付き合いのカリンだが俺の本心は分かっているのかも知れない。

 今日は4時間ほど進んだところにある中継地点で1泊だが、街を出て1時間ぐらいで尻が痛い。馬車の衝撃がダイレクトにくるから仕方ないのだが、長時間の馬車旅はキツイな。カリンは平気そうだなと思って視線を向けると座布団のような物が見えた。キッタネーなおい!

「何それ?座布団?クッション?」

「え?これは前の席に重ねてありますよ。持ってきますか」

 カリンから座布団を受取り座る。ちょっと快適。馬車に備え付けの座布団なのか。俺が無知なのが悪いのだが最初に言って欲しいなとは思う。

 1日目の中継地点には、街と村からの馬車が2台と乗客と御者、合わせて15人。宿というか雑魚寝する小屋が1棟。外に炊事用のカマドがあり、小屋の後に小川が流れていて水には困らなそうだ。小屋の周りには簡易な柵があり、そこに魔物除けの魔法みたいのが掛けてあるそうだが、大型の魔物が出た場合は冒険者が居ればお任せになるそうだ。居ない時はどうするのだろうか。まぁ逃げるしかないか。

 夕飯は個々に食べるそうで、俺たちは街で買ったホットドッグのような具材の挟んであるパンを食べた。カリンが水筒から茶を注ぐ。この世界に来て初めて嗅ぐ紅茶のようなハーブのような香り。この前言っていた柑橘の茶だそうだが、中々に上手い。これなら俺でも飲めそうだ。コーヒーは高いと言っていたが、この辺なら自生してそうな気もするが、コーヒーの木がどんなのか知らんしな。日本で売っていたのは豆か轢いた状態だし。

 翌朝、日が出たぐらいで皆、起きだす。早えなぁ。昨日の茶と黒パンと言われるこの辺では一般的なパンで朝食を済まし、馬車に乗り込んだ。この世界に来て最初に食べたギルドのパンだが、あれは堅パンというパンだそうだ。単純にパンといえば堅パンを指すから注文時には黒パンと言わないとダメらしい。この世界のそんな常識知らんがな。

 馬車は森の中の山道をつづら折りしながら上へ登っていく。山頂手前の開けた場所で昼休憩だ。ここからだと遠くに街が微かに見える。結構遠くまで来たんだなと思う。昼休憩後、今度はつづら折りの下り坂で村を目指していく。

 村に着いたのは夕方手前ぐらいで感覚的には夕方4時か5時ぐらいだろうか。街しか見慣れていない俺には寂れているように見える訳だが、馬車の停留所があるだけで他の村よりは発展しているそうで、この村には宿があるので今日はそこで1泊となる。明日は依頼を出したこの村の村長の話を聞いてから、隣村に行きそちらの村長の話も聞く予定である。

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