第10話 《リズ》受付
マーリンさんが倒れた時は焦ったわ。ギルド職員としてこの街で活動している冒険者は一通り把握しているわ。マーリンさんは他の街で活動してランクを上げてからこの街にきた冒険者で、街に来て半年ぐらいかしら。この街には数人しかいない上級ランクの冒険者で街には貴重な存在。そんな彼が倒れるって大変なことよ。でも何とか回復して技量も問題ないようだけど記憶が無いみたい。あのまま依頼を受けても大丈夫なのかしら。ちょっと心配。
そんなマーリンさんだけど、散歩に出かけたときに、以前、臨時パーティーを組んだサポーターのカリンさんと再会したようだわ。そしてカリンさんから借家の話を聞いて、ギルドを出て借家で暮らすそうだわ。それは良いのだけれどカリンさんのはしゃぎ方が気になるわ。一緒に住む?いやそんな事はないよね。私は何を気にしてるんだろ。確かにマーリンさんは良い男だし、仕事も確かだから稼ぎも良いだろうけど、でも・・・
翌日、マーリンさんとカリンさんが臨時パーティー登録にやってきました。やっぱりそうなるよね。記憶が無いまま依頼を受けるより頼れるサポーターが居た方が良いのはわかるんだけど、何かモヤモヤする。今日は準備に費やすようでカリンさんは買い物に向かい、マーリンさんは体を動かしたいから教官と訓練をしたいそうだ。とりあえずギルドマスターに聞いてみましょう。午後から空くということで、マーリンさんはそれまで訓練場で体を動かすそうだ。まじめだわね。
そろそろ始まるかなという時、ギルド内に居る冒険者に私は声を掛けました。高ランクの方の打ち稽古は珍しいのです。
「高ランクの方が訓練場で打ち稽古をしますので、興味のある方は見学してください」
この時間帯にいる冒険者は朝一の依頼を終えた新人や街中専門の方、割の良い依頼が出るまで待とうとする方で、皆、暇なのです。全員で訓練場へ移動しました。私も見に行きます。主にマーリンさんをですが。
訓練場に行くと、ギルドマスターが長い棒の先に魔物の顔模型が付いた道具を仕舞うところでした。あれは新人に魔物の狩り方を教える時に使う疑似魔物で、正面、横、後から魔物が来た時にどう対処するか教える為に使うのだとか。マーリンさんは記憶を無くしているので新人と同じことを教えているようです。
その後、打ち稽古が始まりました。2人の武器の種類が違いすぎる気もしますが、当の2人は気にしないようです。マーリンさんが打ち込みギルドマスターが応戦する、ギルドマスターが打ち込みマーリンさんが応戦する、交互に攻撃しているようです。素人の私の目には色々と速すぎますし、あれで怪我をしないのか心配になります。手に汗かいちゃいました。私の横にカリンさんが来ました。2人の動きを見てウンウンと頷いていますが、分かっているのでしょうか?
休憩になりマーリンさんはこちらを見ました。ドキッとします。ギルドマスターと言葉を交わしていますが、こちらまでは聞こえてきません。『私がカワイイ』とか言っているのでしょうか。休憩後、先ほどと同じ稽古が始まりました。その後、休憩を2回挟み訓練は終了しました。
「やっぱ高ランクはすげえなぁ」
「俺もBランク目指そう」
「エルフはカッコよくてズルい」
見学していた冒険者からいろんな感想が出てきます。私も素直に凄いと思いました。カリンさんも関心しているようです。自分のパーティーメンバーは弱いより、強い方がいいですよね。マーリンさんはカッコいい。おっと何か違う感情が出ています。仕事に戻らないと。
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