ギルド

第9話 《俺》臨時パーティーと訓練

 翌日、ドアを叩く音で目が覚めた。朝からの来客って誰だよと思ってドアを開けると、カリンが立っていた。

「どうした?」

「朝食を作りにきました」

 いやいやカリン。嬉しいけど、そこまで頼んでないよ。とりあえず家の中に入れた、カリンは台所の向かい朝食づくりを始める。俺は顔を洗い、テーブルに着いた。

「なぁ、カリン。市場でコーヒーは売ってないのか」

「コーヒー?どんなのですか」

「黒い豆を潰してお湯を注いで飲むやつなんだけど、黒い汁みたいなの」

「あぁ、それなら、みたことありますけど、遠くから持ってくるのでお高いらしいです」

 そうか、コーヒーは輸入品で高いのか、一般的じゃないなら仕方ない、諦めるか。

「お茶は?」

「お茶は柑橘の葉のものが美味しいです。今度買ってきます」

 お茶はあるのか。柑橘とな?ハーブかな。物にもよるけどハーブは得意じゃないんだような。飲んでから考えるか。そんな事を考えていると朝食ができたようだ。

 昨日も食べたパンとベーコンのような肉とサラダにスープ。ちょっと豪勢な気がする。

 食後、他愛のない話で時間を潰す。ギルドの朝一は込んでいるので、朝三ぐらいになるように俺たちはのんびりする。


 ギルド内には数人の冒険者がいるだけで受付は暇のようでリズに声を掛けカリンと臨時パーティー登録をお願いした。俺1人よりは良いとリズも賛成のようで安心した。カリンは実力的にサポーターとして問題無いんだろうな。

 その後、遠征の買い物にいくというカリンに金を渡し、俺は教官と訓練したいとリズに相談した。リズは奥の部屋に確認しに行き、午後であれば大丈夫とのことなので、俺はその時間まで訓練場で自主練をすることにした。午後になり教官を待っているとギルドマスターが出てきた。暇なのか?

「お前と同じBランクの教官がいるんだが、今はダンジョンの調査に行ってもらってる。替わりに俺が相手しよう」

「ダンジョン?」

 この世界にはダンジョンがあるのか。ダンジョンってあれだろ、ボスとかいう強いのがいるんだろ。俺は『オラ、ワクワクすっぞ!』とはならない。

「あぁ。ここから馬車で2日ぐらいのところでな、今はダンジョン町になっててギルドの出張所もある。12階層まで調査ができてるんだが、6階層の奥に新しい遺跡が見つかってな。今まで見つからなかったのが不思議なんだが、どんな遺跡か調査に行ってもらってる」

 調査もギルドの仕事なのか、なかなかギルドって大変だな。


 ギルドマスターに魔物の対処法などを聞きながら軽く体を動かす。当たり前だが基本は急所を攻める事。頭、首がメインだが相手も対応するだろうから、動きを阻害しながら隙を見つけての攻撃になる。体が温まったところで本格的な打ち稽古になる訳だが、流石はギルドマスター、元Aランクの冒険者で、動きに隙がない。この稽古は盗賊なんかの対人も想定しているが、俺に人が殺せるかは別としてだ。

 ギルドマスターは長剣、俺のは細身の剣。俺はチマチマ攻撃して弱らせてから急所に一突きだが、ギルドマスターは重さを利用してズバッとくる。あんなのを俺の剣でまともに受けたら折れてしまうので、上手く流さないといけない。盗賊もピンキリだがギルドマスターぐらい腕のある盗賊は願い下げた。俺が持たん。

 15分ぐらい打ち合いをしただろうか、一旦休憩になり、井戸で水を飲み、戻ってくると観客が居るのに気が付いた。リズとカリンも居る。

「いい動きだな」

「ありがとうございます。何ですかアレ」

 俺は観客の方を見ながらギルドマスターに聞いた。

「AランクとBランクの打ち稽古は珍しいから見に来たんだろ」

 まぁ確かに高ランクどうしで訓練場での打ち稽古は珍しいか。高ランクは街に数人しか居ないという事らしい。その後2セット稽古して終わった。俺はヘトヘトだがギルドマスターはまだ行けそうだ。どんな体力してんだか。

「ありがとうございました」

 俺はギルドを後にした。

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