第8話 《俺》家
カリンに案内してもらってギルドに戻ってきたが、今度は、家に行ける自信がない。方向音痴ではないと思うが、初めての場所は良く分からない。帰りもカリンに頼むか、飯ぐらい奢らんとな。
部屋を解約した。3日いたので18大銅貨。2銀貨だして大銅貨の釣りをもらった。
「住むところが決まったのですか」
受付のリズに聞かれた。この人にも世話になっているなと思う。
「じつは・・・忘れていたらしいのですが、西区に借家がありまして、サポーターのカリンに教えてもらいました」
俺の後でモジモジしてニヤケてるカリンを指してリズに答えた。カリンは何してんだ?
「あぁ、カリンさんと以前に依頼で出掛けてましたね」
リズもいろいろ覚えているな、流石は受付だと感心する。
「それで、体も大丈夫そうなので、西区の家に住もうかと思いましてね。ダメなときはまたお世話になります」
「はい。ギルドとしてもBランク冒険者は貴重なので、いつでも頼ってください」
「ありがとうございます。それと家に金があったので借りてるお金も返します」
借金を返し、挨拶をして俺とカリンはギルドを出た。ギルドを出るとき、リズの目がカリンを刺すようだったがなんでだろ。
「カリンは休日だったんだろ。今日はいろいろ頼んで悪かったな。どこかで飯でもおごるぞ」
「あ、いえ、大丈夫です。マーリンさんの家、台所ありましたよね。市場でお買い物して私作りますよ」
「飯、作れんの?」
「サポーターは何でもできるんです」
どこかの飯屋で飯でもと思ったけど、作ってくれるなら甘えちゃおかな。しかし、若い娘が男の家に来て飯作るとか、その後、あんな事やこんな事になったらどうすんだろ。俺はやらないけど・・・
市場に来て『何が食いたい』といわれれば『肉』と答える。もちろん金も渡す。2銀貨で良いそうだ。酒は?と聞けば、小樽で売ってくれるようだ。次以降は樽を持ってくれば中身だけ売ってくれるようだ。とりあえず小樽入りのエールを購入した。カリンはあちこちの店を回り、色々購入しているようだ。台所はあっても調味料があるかは知らんしな、食器類はあったとカリンは言っていたが、いつ確認したんだろ。
家に帰って来たが、市場を回ったので道を覚えていない・・・明日散歩するか。
カリンが台所でテキパキと動いている。火はどうするのかと思っているとコンロ脇の穴に石を入れた。魔道具というものらしい、IH調理器みたいだな。街中で火は危ないもんな。スープを作り肉を焼く。その間俺はリビングで樽からエールをコップに注ぎ1杯。昼のとは少し味が違うようだが、メーカーが違うようなもんかな。俺ばかり飲むのも気が引けるのでコップに注ぎカリンにも渡してある。何も言わずに受け取ったし、カリンも酒の飲める歳なんだろうな。
カリンが作ったスープと肉焼き、パン、サラダをテーブルに並べた。全部やってもらうのは気が引けるので配膳は手伝った。改めて乾杯して食事を始めたわけだが、これが上手いのだ。
「上手いな」
俺は感嘆の声を出してしまった。
「言ったじゃないですか、私は上手だって」
「これは恐れ入りました」
2人して笑った。これだけの物が作れるのであれば遠征の限られた物資でも上手に作りそうだ。良いサポーターのようだ。この子が仲間なら安心して食事を任せられそうだと思った。
「私、所属するパーティーが決まっていないんですよ。良かったらマーリンさんの仲間に入れてもらえませんか」
「俺はソロだし、ずっとかどうか分からんぞ」
「それでも良いです。ギルドで付いていくパーティーを探すの大変なんです。私と行くと毎回美味しいご飯ですよ」
サポーターはサポーターで悩みがある訳か。飯が上手いのには越したことはないから、仲間になるのは構わないのだが。
「とりあえず、臨時パーティーで組んでみるか。それからどうするか決めるか」
「やったー。ありがとうございます」
俺がきちんと活躍できるか分からんし、カリンに迷惑も掛けられんから、依頼ごとにパーティーを組む、臨時パーティーした。この世界で生きていけるのか悩む前に外堀が埋まってきている気がするのは気のせいだろうか。
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