5th PHASE:NEVER SHUT UP

「おお、まさか子供の身体が適合するとは……」

「ソフィア神、われわれをお導きください。そしてナトゥーラの連中にどうか裁きを」

 グラーチア教はトランスフェール・システムを使ってソフィアと女性の子供を融合させ、ここに神が再臨した。

 ソフィアはしばらく自身の身体を眺めまわした。そして口を開いた。「神に名前など要らぬ」

「失礼いたしました神よ。どうかテロリストに裁きの雷を」

 ここは国会議事堂の地下。ソフィアの周りに数人の信徒がぐるりと座っている。

 ソフィアはゆっくりと腕を上げ、信徒の一人を指差した。すると信徒の身体がボコボコと泡立ち、破裂した。

「な……。神よ! 何をなさるのか! あなたの敵はナトゥーラです!」そう言った信徒の身体もソフィアによって破砕された。

 残された信徒は驚愕の表情を浮かべ、何も言えないでいる。

 ソフィアは上を向き、飛翔した。


 成瀬では死闘が繰り広げられていた。互いに腕を斬り、足を裂き、爆死された者がいた。

 戦闘は膠着状態に至った。「やるわね」と田渕。「そっちこそ……」薫が受けた。

 そこで軍が怪しげな動きを見せた。戦車が公安を狙ったのである。日高は背中に砲弾を受け、爆死した。

「な……何をしている!」田渕が激昂した。「われわれは立憲主義に正義を見た! 悪政を為すゲルフ党に裁きを!」薫は京の仕事か? と思ったが、違った。「これはわれわれの意志である。ハッキングによるものではない!」

 地方の各都市のゲルフ党支部も軍が押さえたと言う。かくしてクーデターが起こった。これにて公安課四名は苦しい立場に立たされた。「くっ、どうする……」田渕が嘆いた。「わしも同感だな」公安課課長、市川が現れた。「ゲルフ党こそが悪だ」「課長……わたしだって、本当は……」

 その時、ピンク色の光線が成瀬に直撃した。「ビーム兵器!?」「われわれはそんな装備を持っていない!」「では何だ!?」「あれは……ソフィア神だ」と田渕。「おお、偉大なる神よ! 蘇ってくださったのですね!」「われわれをお導きください!」神よ、神よとみなが言う。その時またピンク色のビームが着弾し、数十名の兵を消し炭にした。「忘れたのか! サケル大戦でのソフィアを! あれは破壊神だ!」と薫が叫んだ。「グラーチア教め、トランスフェールを使ったか! 撤退するぞ!」またビームが発射され、大地を穿った。「われわれも撤退だ! 急げ!」市川が絶叫した。「本部まで戻ればシェルターがある。急ごう!」とキリト。だが行く手をビームが走り、大地が沈んだ。「大丈夫だ! ディシプリン・アーマーの跳躍力なら届く!」そして薫は思った。(京、無事でいてくれ……!)そしてまたビームが降り注ぐ。その内の一射が薫の下半身を蒸発させた。「薫!」「俺のことはいい、みんな行け!」「大丈夫だ、いま助ける!」「うるさい! 早く行け!」ソフィアはビームを連射した。大地が割れ、町を焼き、そして薫ごと大地を貫いた。「薫!」ソフィアはビームを乱射し成瀬を寸断させた。

 京はコンソールでみなの位置を探った。「みんなが、ばらばらに……!」「京、早くシェルターへ!」イザムが現れて催促した。「うん……。薫……!」次のビームはナトゥーラ本部に直撃した。ソフィアは全包囲にビームを乱射し、大地を、国家を、民族を焼き払った。かくして世界は崩壊した。

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