第123話 出禁の人
ライブは盛況だった。新曲は大盛りあがりだったし、爽香と奈美穂の言葉を胸に、私はこの一件をネタとしてMCで話してみた。そしたら結構ウケたし、反応も悪くなかった。
「好葉!」
ライブの合間、ファンの声援が聞こえた。
「好葉のダンスが最高に好きだぞー」
ふと、声の方を向く。
「好葉の実力は俺達が一番わかってるぞー」
誰か分からないけど、そのファンの言葉が身に染みる。
そうだ、ちゃんと私達をみてくれているはファンがいるのに、何不貞腐れてたんだろう。
「ありがとー!!」
私は思わず声の方に手を振った。
……ん?あれ?出禁のトモさんでは……?見間違い……いや、まさか。いや、でもこの妙に欲しいタイミングで欲しい言葉を言ってくれるこの感じは……。
まあ。いいや。
気づかなかったことにしよう。一応後で盗聴器確認しよう。
私は気持ちを切り替えて、ライブの後半を精を出すのであった。
〜〜〜
ライブが終わり、盗聴器も無いことを確認して、私達は赤坂さんに送ってもらって帰路についた。
爽香を降ろし、奈美穂を降ろし、最後に私のアパートの前に着いた赤坂さんは、真面目な顔で言った。
「花実雪名さんに謝らなきゃってさっき言ってたけど、よかったら私も付き合うよ?仕事に関わることだし、私にも責任はあるし」
「いいえ、その、大丈夫です」
私は慌てて首を振った。赤坂さんの気持ちは嬉しいけど、赤坂さんがいたらまた雪名さんは演技をしてしまう。それじゃあ意味がないのだ。
「私がちゃんといいます。大丈夫です」
そう?と赤坂さんは最後まで心配した顔だったが、私が必死でニコニコしてみせたので、何とか納得してもらえたようだ。
赤坂さんを見送り、すぐに雪名さんに連絡を取ろうとスマホを開いた。すると噂をすれば、白井さんからのメッセージが入っていた。
『お仕事が終わったら連絡下さい』
私は覚悟を決めてすぐに白井さんへ電話をする。
数回のコール音の後に白井さんがでて、困ったような声で言った。
「ごめんね、忙しいのに」
「いえ、雪名さんの件、ですよね?」
「そうなの」
「怒ってます、よね?雪名さん」
「いやぁ、その、怒っているっていうかねぇ」
困った声で白井さんが言葉を濁らせた。こんな白井さんは珍しい。
「あの、遅くにご迷惑じゃなければ私雪名さんのところにお伺いしてもいいですか」
「ありがとう、それは願ったり叶ったりだわ。遅いから迎えにいくね」
白井さんはそう言って、電話を切った。
雪名さん、怒って……るんだよね?白井さんの曖昧な態度に、私は逆に不安になってきてしまった。
冷血女王様は踏まれたい りりぃこ @ririiko
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