第79話 キッズモデル
※※※※
「はじめまして。LIP−ステップというアイドルをさせていただいております、牧村好葉、20歳です。よろしくお願いします」
次の日、可愛らしい服がたくさん並んでいるオフィスで、私は綺麗で可愛い男の社長さんと面談していた。
「よろしくお願いします。僕がベイビーベイビー取締役社長の蓮池です。牧村さん、写真で見るよりずっと大人っぽい子だね」
そう言って、蓮池社長は私をマジマジと見る。
「うん、ぱっと見はいい感じかな。あんまり子供っぽい子だと、大人のモデル使う意味ないしね。
今ね、僕達、大人でも着れる子供服、子供でも着れる大人服っていうコンセプトのラインも立ち上げててね。カタログだけじゃなくて、SNSでコーデ例とかもデイリーに更新していきたいなって思っているんだ。そのために、いつもやってくれている専属キッズモデルの
「素敵です!」
私は心からそう言う。
「私も、靴なんかはずっと子供用の靴なんですが。たまに大人っぽいのを探してもなかなか無いので。大人っぽい子供服、あったらとても嬉しいです!」
「そう言ってもらえると心強い」
蓮池社長はニッコリと言う。
「じゃ、すぐにテストに入らせてね。ファッションモデルの経験は無いって聞いたけど」
「すみません、アイドル雑誌でスナップ写真撮影したことがあるくらいです」
「ファッションモデル、全然違うから、はじめは戸惑うかもしれないけど、頑張ってみてね」
蓮池社長は、ちょっと含みをもたせたような口調で言って、スタジオに案内してくれた。
「おはようございます」
蓮池社長がスタジオに入ると、スタジオにいたスタッフ達が一斉に挨拶した。
「うん、おはよう。美里ちゃん、
蓮池社長に呼ばれて、可愛いモデルの娘と、カメラマンらしい背の高い男の人がやってきた。モデルの娘の方は雪名さんから借りたカタログでよく見たことがある。背はあまり高くない、でも大人びた顔つきの子だ。
「この子、今日テストする牧村好葉さんです。よろしく」
蓮池社長に紹介されて、私はすぐに頭を下げる。
「今日はよろしくお願いします」
「森野美里です。12歳です。こちらこそ、よろしくお願いします」
若い!若いのに、とってもいい姿勢で丁寧に挨拶してくれる。私も思わず背筋が伸びた。
「よろしく。俺はカメラマンの蜂屋。ファッションモデル初めてなんだって?」
こちらはとても軽い感じで挨拶してくる。笑顔もなく、厳しそうな印象を受けた。
「はい。ご迷惑かけないよう頑張ります」
「いやいや、初めてで迷惑かけないなんて無理でしょ。ま、酷いことにならない程度に頑張って」
蜂屋は素っ気なく言ってまた自分の持ち場に戻って行く。
「じゃ、二人に聞きながらよろしくね」
蓮池社長はそう言って、スタジオの済の机に行ってしまい、パソコンを広げて仕事を始めた。
一応、色々ファッションモデルのやり方は前に赤坂さんと事務所で勉強したけど、ちょっと心配になってきた。
「私、教えます。大丈夫です。好葉さん、頑張りましょう」
美里さんが元気にそう言ってくれた。
用意された服に着替えていると、更衣室に美里さんが入ってきた。
「どう?」
「うん、とっても着やすいです」
「子供服のモットーは着やすさ、動きやすさですから」
そういいながら、美里さんは私の姿をじっと見つめた。
「わあ凄い。聞いてはいたけど、本当に19センチの靴、入っちゃうんだぁ」
「あ。はい」
私は美里さんに足を見せる。
「すごぉい、私もモデルの中では小さめなんだ。20センチ。お姉ちゃんも小さくて、多分遺伝」
「美里さんなら」
「さん、なんて。ちゃんにしてよ。好葉ちゃんの方がずっと年上なのに」
美里ちゃんは人懐っこい顔で言った。
「美里ちゃんなら、まだ成長期だから、これからもっと成長しますよ」
私が言うと、美里ちゃんはちょっと寂しそうな顔をした。
「そうならいいんだけど。私、足もだけど、もっと背が伸びないとこれからモデルの道はキツイかなって思ってて。キッズモデルから普通のファッションモデルに行くの、なかなか競争率高いってママとかお姉ちゃんとか社長とかから言われてるの」
そっか、私は何とも思わないけど、やっぱりモデルの子は気にするんだ。そう言えば、マイカちゃんも、細かったけど結構背は大きかったもんな。
「好葉ちゃん、いつくらいから成長止まった?私、4年生の時から足のサイズ変わってないんだよね」
「どうだったかな。確か私も小学生で変わらなくなった気がします……」
「おーい、着替え終わったらサッサとおいで。化粧するぞー」
蜂屋さんの声がして、二人で慌てて更衣室を出て行った。
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