第4話 報酬
一通り踏みつけて、雪名さんが満足すると、この謎の時間は終了する。
そして雪名さんは、私の靴下を脱がせて足のマッサージを始めるのだ。
「今日はね、ラベンダーのオイルを持ってきたの。ほら、足を出しなさい」
雪名さんはそう言って、私の足に丁寧にオイルを塗っていく。私の知っているラベンダーの香りとは違い、明らかに高級な香りがする。
「今日は少しいいオイル持ってきたから。急に呼び出しちゃったお詫びよ」
「お詫びなんて……雪名さんにこうしてもらうの、恐れ多いんですけど」
私の訴えを無視して、雪名さんは丁寧に、足の指の間まで丁寧にオイルを塗っていく。くすぐったくて私はムズムズと腰を揺らした。
「せめて好葉が踏んでくれる報酬を受け取ってくれるなら私の気も晴れるけど、受取ってくれないから。何もしないのは私の気持ちが悪いの」
「だって、踏んでお金もらうって……なんかこう……不健全じゃないですか?」
私の言葉に、雪名さんは少し考え込んだ。
「ま、そうね。女優の私が跪いて足にオイルを塗って差し上げる方が健全よね」
「意地悪な言い方しないでくださいよ」
「冗談よ」
冗談言ってる顔じゃないのよ、雪名さんのは!
そうこうしているうちに、雪名さんのマッサージが終わった。
私はスベスベになった足を、靴に滑り込ませた。
「ところで好葉、私来週の午後オフなんだけど、あなたは?」
「私ですか?私は基本的に暇人ですよ。雪名さんと違って売れてないので」
「あら、自虐ネタ言うようなアイドルなんて売れなそうね」
雪名さんは辛辣だ。
私はぷくっと頬を膨らませてそっぽを向いた。
「そんな事より。好葉もオフなら来週デートするわよ」
「は?」
思わず私は変な声が出た。
「でえと?」
「そう、デート。映えるスイーツ食べてショッピングする、デート」
「何で私と?雪名さん友達いないんですか?それか、イケメン俳優とでもデートすればいんじゃないですか」
「オフの日も演技しなきゃいけないの?まっぴらよ」
雪名さんは冷たくそう言い放つ。
「決定ね」
「まあ、いいですけど」
私は頷くと、雪名さんは少しだけ口を歪ませた。この歪んだ顔が雪名さんの微笑みなのを私は知っている。テレビではあんなに美しく微笑む事が出来るのに、なぜプライベートのリアルな微笑みはあんなに不細工なのだと、私はいつも不思議に思っている。
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