Ⅲ 神はきっと
さて、
改めて申し上げるまでもなく、我々二人は見習い学僧。その課題の一つとして、いくつかの聖地、教堂を巡る巡礼の旅に出ておりました。
その者がなぜ、聖女――あるいは魔女――など訪ねたかと、
恥ずかしながら。ただの好奇心、我々なりの
聖者と自称する
そして今回のことも。――そういえば、まだ
それを彼に話したところ。ならば一つ旅路の途中、それを見物していこうではないか。そういう話になったのでございます。
「聞かせろ、女。どこで神から力を
再び会うなり、彼はそう言いました。彼女の管理する小さな墓地で。
布袋を担いだ彼女は、ひどく顔をしかめます。そして彼を指差し、私の方へ顔を向けました。
「ね、この人。だいぶ頭悪いんじゃない、昨日言ったこと全く聞いてないんですけど」
私は苦笑し――鼓動の高鳴りを感じ、彼女の視線からわずかに目をそらしつつ――、答えます。
「確かに、
頭を下げ、手にしていた包みを差し出しました。
「つまらぬ物ですが、お詫びとお近づきの印に。お納めいただければ幸いです」
彼女は口を尖らせたまま、私の顔を見ていましたが。包みを受け取って、ちら、と開きます。
中にあるのは、市場で買い求めた蜜がけのパン、チーズ入りのパン。
彼女は鼻で息をつき、包みを小脇に抱えました。未だ固い表情のまま口を開きます。
「で? 用は何、さっきの話をしに来たわけ?」
勢い込んで口を開こうとした彼を手で制し、
「端的に申せばそうなりますが。まずご理解いただきたいことは、何も心配はない、ということでございます」
眉根を寄せた彼女をもう片手で制し、
「我々は
このときばかりは、彼女の目を見据えて言いました。とにかくこれだけは――彼女の力が何であろうと――伝えなければならない。不安にさせてはいけない。
「悔い改めるなら。神はきっと、お許し下さいます」
横から彼が口を出します。
「あーそうだな、そのとおりだ。で、それより、神の、神からの力だというのなら」
鼻を相手にぶつけるかのような勢いで顔を突き出し、急き込んで言います。
「いつ! どこで! どのようにしてその力を
「神は……いるのか」
彼女は身を引き、目を瞬かせていましたが。
長く鼻で息をつき、答えました。肩をすくめ、苦笑して。
「お
視線をうつむけ、言葉を続けます。
「この体質だって、気がついたらこのとおり。気持ちが
彼女は苦笑し、首を横に振りました。
「よして、本当に前の話。だいぶ経って父さんも死んで、墓守を継がせてもらったけど。
長くため息をつき、彼女は
「悪いけどね、今日はこれで。仕事もあるし」
そうして担ぎ直した袋から、白い花がこぼれ落ちました。
「これは――」
「ああ、造花。商売道具、
「かわいそうにね、せっかく来たのに手ぶらで帰るなんて。また、花を売りつけてやれればよかったんだけどね」
彼は鼻で息をつきます。
「ふん。何にせよ……いずれ見定めてやる、お前を」
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