Ⅱ 学僧二人
「本物だ……本物だぞあれは!」
足早に歩きながら、声を震わせて彼は言いました。
同じく
「本物といっても……どちらのです?」
神の奇蹟を受けた聖女か、悪魔の力を授けられた魔女か――正直、そんなことを考える羽目になるとは思っておりませんでした。私も、おそらく彼も。
申し上げるまでもないことでございますが、やはり時折いるのです。神から奇蹟の力を授かったと称し、奇妙な
無論彼らが神の御力など、与えられているわけはございません。しかし、ならば悪魔より力を授けられたかと申しますと。それも違うのでございます。
何もない机に伏せた手から、聖なる護符を出してみせる男。彼の
相手の選んだカードの数字を、百発百中で当てる女。彼女のカードには巧妙な目印がつけられておりました。
生きた魚を口から出す男は、飲み込んで吐くことが達者なだけでしたし、手を触れずに木皿を動かす男には、鉄を仕込んだ木皿と、演台の下に磁石を持った相方がありました。
要するに、種も仕掛けもある
奇蹟か否か、それを起こす者が聖者か否か。それを査定される
……余計なことを申しました。さて、彼は
「どちらかだと? 知るか、そんなことはどうでもいい! 大事なのは、だ――」
ずい、とこちらに身を寄せ、
「神の力、悪魔の
花を持った手を握りしめ、友は天を仰ぎました。その拍子に、かぶっていたフードがずり落ち。
――彼は奇妙な男でした、そして真の信仰者でした。
学僧としての入学の日、彼は学び
『神の使徒たる我らに
そうして、その場で
無論、神の教えに
それでも、
射抜くような目つきのまま、口の端を吊り上げて彼は笑います。
「あの力が、よしんば悪魔のそれだとしてもだ。悪魔が実在し神が不在、そのようなことはあるまいよ。神の存在証明、オレたちは目にしたというわけだ」
私は小さく笑い、
「貴方ともあろう方が、理論的とは申せませんね。仮に悪魔の実在が証明されたとして、それが直ちに神の存在を証明することにはつながりません。……そも、神の存在について疑ってよいとは思われません。神を試すことなかれ、主はそう仰ったはずです」
彼は歩みを止め、小さく口を開けましたが。すぐに微笑みました。
「そうだな、全くそのとおりだ。お前のように賢い奴が、友で良かった」
同じく足を止めていた、
その勢いにむせた後、ともかく巡礼宿へと歩きながら。
「ともあれ、何らかの不可思議であることに疑いはありません。仮に何か仕掛けがあったところで――」
手にした植物に目を落とします。彼女の脚に伸び、
「植物が目に見える速度で伸び、花を咲かすなどとは有り得ないことです。さらに言えば、開花の時期も違う植物。これだけ見事に咲いたものが同時に在るというのも、尋常のことではありません」
彼もうなずきます。そして、自らが手にしたいくつかの植物に目を向けました。
「これらのもの、手に入れられて良かったが。見る限りただの植物だな……
花代と称して、彼女に小銭をせびり取られはしましたが。確かに、手に入れられて良かった。
抱き締めずにはおれませんでした、彼女の胸から伸びた
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