第39話 作戦: 同盟準備

「では、隣街に行く準備しましょうか。カイさん」


「そうですね」


 同盟交渉をするために出発を早めないと。1ヶ月後に大会だから、時間は多く残されてない。


「セツナさん、シルエさん。資金確保のため、街での売り物を用意お願いします」


 ハルさんが2人に声をかけた。セツナさんは肉関係。シルエさんは装飾関係の専門だ。街との交易品は2人がほとんど用意している。


「ドルハさんとポーロさん、私とカイさんは3日後に出発します。現地集合で」


「おう、がんばれよ」


 彼ら2人は選手として参加予定だ。


「ハルさん少し考えさせてもらっていいですか」


 出発したら、見落としがあったときに取り替えせない。なんせ隣街にいくだけで1週間かかるのだ。


 俺は目を閉じて、これからの行動をシミュレーションした。


「ハルさん。選手をドルハさんとシズクさんに変更していいですか?」


「どうして?」


「3国同盟を前提とすると、防御でなく攻撃を重視したいので」


「そうね。シズクさんそれでいい?」


「了解」


 シズクさんは弓の名手で、俺の師匠でもある。彼女の弓は化け物じみている。大会では大活躍してくれるだろう。


「あと、カルロさんにお願いがあります」


「おお、私ですか。予想外のご指名ですね」


「これからギルドとして初クエストを発注します。そのクエストのリーダーとして、冒険者と受けてもらいたいです」


「いいですとも」


「クエストは鉱山ゴーレムの調査です。報酬は100万です」


 カルロさんは魔物研究者。なので、カルロさんにうってつけの依頼だ。


 ゴーレムのドロップ品として鉱物が取れるとセシリアさんから聞いた。ドワーフ村との交渉材料の1つとして、この調査は欠かせない。


 よし、こんなところでいいかな。んん? 誰かが、俺の裾を引っ張っている。見るとアカネちゃんだった。


「トイレ行きたいんだったら、行っていいよ」

というやいなや、みぞおちにパンチが飛んできた。


 そう何度も同じ手にかかると思ってたか。十字ブロックでパンチを受け止めた。この十字ブロックは強い衝撃に強いのだ。俺の研究成果にひれ伏せ。


 と思ったら、俺がガードしている腕が跳ね飛ばされた。


「まった、まった。わかってるから」


 慌ててアカネちゃんを止めた。アカネちゃんをからかうのも命がけだ。


「アカネちゃんとジョルドさんは、大人3人に混じって、三首争奪戦の特訓。将来のエースとして期待しているよ」


「うん、栄光の世代として頑張る」


 アカネちゃんは『栄光の世代』という言葉が気に入ったようだ。ほんとにかっこよさげな言葉が好きだなぁ。


「村をあげての総力戦ですね」


 ハルさんは実に楽しそうだった。




◆◆◆


 決起会から2日後、俺はハルさん達とアルガン街に向けて歩いていた。その間、アルガン街の現状と世界の情勢をいろいろハルさんから教えてもらった。


 なんでハルさんがこんなに詳しいのか少し不思議だった。


「カイさん、どうやってアルガン街と同盟を結ぶの?」


「無理ですね」


「…」


「ちょっと、首絞めないで下さい」


「冗談だから」


 いや、かなりきつく締められたぞ。ご褒美と思ったのは一瞬で、絞め落とされるかと思った。


「正確に言うと今年は無理です。来年同盟を結ぶための下準備をします」


「どのような準備?」


「アルガン街の現状勢力を一つずつ説得して、仲間にしていきます」


 アルガン街は、貴族/ギルド/教会の3団体の合意で運営されている。重要事項の承認を得るには、2つの組織からの支持が必要だ。


「そのターゲットは貴族とギルドです」


「ギルドの説得は無理じゃない?」


 アルガン街のギルド長はこの前撃退したからな。恨まれていることは間違いない


「今のギルド長は、更迭することを目標にします」


 アルガン街のギルドは、冒険者ギルドと商業ギルドの2つに分かれているという話だった。


 今のギルド長が更迭されれば、商業ギルド長が代表になる可能性が高い。そうすれば目的を達成できる。


「カイさんのお陰で、また別の領地対抗戦の楽しみ方ができたわ」


「私もです。さあ、ゲーム開始です」


 三首争奪戦まであと2週間。俺達は敵地アルガン街に足を踏み入れた。

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