第27話 探検:新スキル

 今日から3月だ。冬の3ヶ月間は仕事が少なく、ゆっくり過ごせる月だとハルさんが言ってた。


 来月から暖かくなる。そのため、春の訪れのイベントや農業が始まるということだった。


 冒険者4人が地元に帰るのも、春とともに増える仕事をするためだ。


 転生してからこの2ヶ月。死ぬほど忙がしかったのですが、これ以上忙しくなるの?

 恐怖でしかないんだが。


 今月もハルさんに能力の鑑定をしてもらった。


「うそ!! 武力が6もあがっている」


 武力  : 10 → 16

 知力  : 49 → 50

 コミュ力: 37 → 39


「先月も驚いていたけど、そんなにすごいの?」


 先月はシズクさんから特訓を受けた。だから自分でも強くなったことは実感できていた。


「ええ、成長期なみね。それでも1ヶ月で6上がるのは珍しいわよ」


 転生したのが原因なのかなぁ。


「知力がマックスだから、賢者とかになれない?」


「マックス? あっ、わかったわ。最大値は100なのよ。あと、戦士とか魔法使いなどの戦闘系の能力値はすべて武力ね。知力は生産系の能力値よ」


 そうだったのか。賢者になれるかもと少し希望を残していたのだが、それは叶いそうもないか。


 そうだとしたら、俺の能力値低すぎないか?


 戦国物のゲームだったら、人数の数合わせをするために、無理やり発掘しましたってレベルの武将だよ。


「おや、スキルも増えてる」

「なになに」

「3D描写だって」

「相変わらず、意味不明のスキルね」


 俺の職業はプログラマー。だから、スキルも、プログラム関係だ。


 3D描写は多分ゲームとか作成するときに3次元の空間を描き出すことを言っているのだろう。


 そんなことを説明しても、理解できないだろうから、ハルさんには黙っておくことにした。


 ファンクションのスキルで、自分の体の動きを登録して呼び出すことができた。


 3D描写も、現実世界に物を描写できるんじゃないかと、スキル名から予想している。


 例えばリンゴをスキルで描写したら、リンゴが現れるとか。そうしたら化物スキルになるぞ。これは楽しみだ。




◆◆◆


 だめだうまくいかない。手に持っている短剣をコピーするイメージをした。だが、何も起きないのである。


 4時間だよ、4時間。もう疲れた。


 こういったときは、ハルさんと話して、リフレッシュするに限る。ハルさんはこの俺の清涼剤だ。


 宿の食堂に行くとアカネちゃんしかいなかった。


「ハルさんどこにいるか知ってる?」


「畑だよ」


 そっかー残念。だったら、アカネちゃんをからかって、息抜きするか。


「アカネちゃんは、どうやって太陽が動いているか知ってる?」


「もちろんだよ」


 この世界の感じからすると、地球を中心に太陽が動いている天動説かな。


 地球が太陽をまわっているという地動説を説明して、驚かせてやろう。


「太陽は怖い神様だよ。だから見つからないようにひっそり暮らさないといけないの」


 神様ということは、何かしら宗教の教えかな。


「神様ってすごく目がいいんだね」


「どれくらい?」


「アカネちゃんが太陽の神様だとするよ。そしたら、地球の大きさは人差し指の第一関節の半分ぐらいかな。それが100メートル先にある感じ」


 アカネちゃんの純粋さに惹かれて、真面目に答えてしまった。


「人差し指出して」


「これでいいの?」


 俺が人差し指を掲げると、アカネちゃんは遠くに走り出してしまった。


「どうしたのアカネちゃん」


「100メートルってこれぐらい?」


 そういうことか。でもそんなの測れないよ。俺の指先とアカネちゃんの目まで結んだ直線の長さでしょ。と思った瞬間だった。


 俺の指先からアカネちゃんに向かってレーザー光線が発射された。


「危ない、アカネちゃん」


 ぶつかる瞬間、思わず目をきつく閉じた。今のは、どう考えても俺のスキルだ。


 3D描写のスキルでレーザー光線を具現化してしまった。

 アカネちゃんは無事だろうか?


 恐る恐る目を開くと、アカネちゃんは不思議そうにこちらを見ている。


「どうしたのカイ?」


 どうやら大丈夫なようだ。だが、光は俺の指からアカネちゃんを突き刺したままだ。


「レーザー光線、痛くない?」


「レーザー光線?」


 アカネちゃんには、このレーザー光線は見えていないらしい。


「はあ、良かった」


 なんだか知らないが3D描写のスキルを発動することができた。現実世界に自分の脳内上に描いたものを表示するスキルっぽい。


 自分しか見れないので使い道がわからないが、これから活用方法を探っていくか。





◆◆◆


「最近、その世界にご熱心ですね」


「そうだね。レベル4が発生した兆しがあるんだよ」


 二人の神が話している。


「レベル4が発生したと、どうしてわかるんですか?」


 美しい女性の神が首を傾げている。


「この2つを比べてみて。様子が違うでしょ。両方とも同じ世界からコピーしたものなのに」


「う~ん」


 女神は唸ったまま考え込んでいる。


「それですと、どちらの世界でレベル4が発生したかわからないですよね」


「その見分け方はね……」


 難しそうな議論を、楽しそうに続ける神々であった。

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