第26話 豪邸:夜這い

 そのあと2月の後半は、忙しく過ごした。


 まずはレオナルドさんの豪邸への引越。


 引越にあたって、レオナルドさんの食事/掃除/洗濯をポーロさんの奥さんに月30万で委託した。


 これは、レオナルドさんがハルさんを嫌がったためだ。


『ハルさんは、鋭くて気が抜けない』と話したためである。


 これはわかる気がする。ハルさんは人物鑑定師だから、素性を明かしたくないレオナルドさんにとっては天敵だ。


 俺はというと宿に戻ることにした。ハルさんは快く引き受けてくれた。おかげで、ハルさんと将来の話もいろいろできた。将来の話って、結婚の話じゃないよ。


 誰もそんな勘違いしないって・・・・・・。そんな悲しいことを言わないでよ。


 宿には、新規にコテージタイプの部屋を増やしていくことで話し合った。


 月50万~150万ぐらいの部屋を充実させていき、お金のある冒険者にいい部屋を紹介するのだ。


 今回の一件で金持ち向けのサービスが儲かることがわかったからね。この方向で稼がせてもらうよ。


 ポーロさんにコテージの発注を依頼したら、奥さんが狂喜乱舞した。何でも憧れの景色とか部屋を日夜妄想、じゃなくてデザインしているらしい。それを実現できるということで喜んでいた。


 ちなみに奥さんの名前はシルエ。彼女は普段飾り物や小物のを作る仕事をしている。


 建物を作るのが得意なポーロさんと、内装が得意な奥さんでいいコンビだ。


 そうそう、ニワトリの飼育もドルハさん一家で始めた。まだ手探り状態で、たいへんだということだ。


 動物想いのドルハさんだったらうまくやってくれるだろう。


 数日前、初めて採れた卵だと言って持ってきてくれた。卵の大きさはまちまちだったが、殻を割ると黄身が浮き出て新鮮さが一目瞭然だった。


 その卵を焼いて、その日は卵パーティをした。そんな感じで忙しくはあるが、楽しい日々を過ごしていた。


 俺の収支も豪邸の貸出費用で、かなり余裕ができている。


 豪邸はもともと村の資産だということで、俺自身の取り分は30万となったが、村の利益につながる目的であれば、残りの金額は自由に使えることになった。


詳細を書くとこんな感じだが、要は月30万貯金できている。


 収入 360万

  サブスク     60万

  豪邸貸出    300万


 支出 330万

  サブスク保守費  30万

  豪邸の保守費   30万

  豪邸の税金    30万

  各種建築発注  210万 

  宿代       30万

  


◆◆◆


 2月の最後の日のことだった。


「カイさん。あの噂はどういうこと?」


 ハルさんはなぜか怒っている。怒っているハルさんも可愛い。


 はっ、そんなことを考えている場合ではない。噂ってなんのことだろう。心当たりがない。


「どのような噂ですか?」


 ハルさんは周りを見回して、誰もいないことを確認したあと話しだした。


「私がカイさんに夜這いしに行くという噂よ」


 ハルさんが俺に夜這い?? 俺がハルさんにならわかるけど。何だその噂は。


「初耳です」


「しかも、私が家の地面を掘り潜ってまでして忍びこむ、とか言われてるのよ」


 顔を真っ赤にしてプルプルしている。ひどい噂だ。


 誰だそんな噂を流したのは、けしからん。

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