第24話 豪邸:ニワトリ小屋の発注
「カイさん。こんなに小さな家でいいのですか?」
ポーロさんと一緒に、ニワトリ小屋の作成予定地で話していた。
「はい、寝るだけだからいいですよ。普段は外にいますし」
ニワトリ小屋は、外で飼育する平飼いにした。
他の獣から守るためには、完全に囲った建物の方が安心だ。しかし、ノウハウがないのでまずは小さな小屋からスタートすることにした。
「この面積ですと、屋根と床板合わせても、木材は少なくてすみますね」
「そういえば、床板はいらないですよ」
「ええ??」
床板を作ると掃除がたいへんになる。そのため、下は土のままにする予定だ。
「どこで寝るんですか?」
「この腰ぐらいのところに、板をつけてくれるかな?」
「こんな狭くて大丈夫ですか?」
「ええ、狭くて暗いほうがいいんですよ」
「そういうものなんですね」
ニワトリは狭くて暗い場所に卵を生む。外で卵を生むと回収がたいへんになるので、小屋で生むように快適な場所を作るのだ。
必要なのは、こんなところかな。あっそうだ。一つ大切なことを忘れていた。
「小屋の壁ですが、地面の下50センチは埋め込むようにしてもらえますか?」
「何でですか?」
「穴を掘って、侵入されると困るので」
ポーロさんはかなり驚いている。だが、これはよくある被害だと聞いたことがある。
イタチや狐が地面を掘って、下から侵入してくるらしい。そうなったら、小屋に閉じ込められているニワトリは全滅だ。
「いやいや。侵入されることなんてないですよ」
と渋るポーロさんを説得して、ニワトリ小屋の打ち合わせが終わった。
「そのう、発注がこれでお終いってことないですよね」
ポーロさんが心配するのももっともだ。この発注内容だと600万なんて到底いかない。
お金もらえなきゃ一家心中とか言ってたからな。
「この後も、いろいろ発注しますので、心配しなくても大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
いや、俺の方がありがたい。ポーロさんに発注しないといけないことは、昨日まで重荷だった。
だが、考え方を変えたら、楽しくなってきた。
お金を設けができる施設を作成してくれる人というように発想を逆転したのだ。
これから、どんどん儲かる施設を発注するから頼むよ、ボーロさん。
次は獣の血抜き場所の発注だな。新しい狩り場が2箇所追加されるから、必用になる。
これから忙しくなるぞ。
◆◆◆
この勢いにのって、もう一件の負債を資産に変えてみるか。残っているのはこれ。
④ 豪邸に住む権利
豪邸は、掃除も大変だし保守費用もかかる。身の丈に合ってない住居は負担が大きい。
俺は、アイディアを練るためにも豪邸に夕食を食べに戻っていた。
この豪邸での初めての食事だ。居間というか食事を取るスペースは20畳はある。下手したら宿の食堂よりも大きい。
部屋の壁は複雑な模様が描かれており、マホガニーのような深みのある赤色の木材が使われている。
視線をテーブルの上に置かれた夕食に戻す。テーブルに置かれた皿には、帰りに拾った雑草6枚。これが俺の夕食だ。
ちょっと惨めすぎる。建物の豪華さが、余計に食事の貧相さを際立たせている。
なんか、涙がでてきた。全然俺とこの空間がマッチしていないじゃないか。
というかこの村で、この豪邸に似合う人なんて1人もいないだろう。
いや待てよ、冒険者に貴族の人がいたな。服装もパリッとしていて、所作も洗練していた記憶がある。
こんな豪邸、あの冒険者ぐらいしか合わないよなぁ。
いっそ、あの人が住めばいいのに。
そうだよ。
いいんじゃない。そのアイディア。
あの冒険者にこの建物を借りないか打診してみよう。ホテルのスィートルームのような位置づけだ。この建物を提供したらいけるかもしれない。
狩りのサブスクを打診したときも、お金は十分あるからいいと話していた。借りてくれる可能性は高い。
俺は夕食の雑草を一枚とり、口に放り込むと宿に向かった。
うん、まずい。
食事はハルさんに頼んで、宿で食べることにしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます