第16話 弓修行:アカネちゃんと冒険
「カイ、冒険にいくよー」
まだ、朝の6時だぞ。
いったい誰だ?
外に出るとアカネちゃんが待っていた。
「どうしたのアカネちゃん」
「師匠として鍛えてあげる。ゴブリン狩りに、行こう」
アカネちゃんの姿を見ると皮の装備を身につけて、背には小さなバックを背負っている。
あれ? 武器を持ってないぞ。
「アカネちゃん職業は何?」
「アカネはモンクね」
だから武器を持っていないのか。
というか、拳が武器だったら、俺を気安く殴っちゃだめでしょ。
「危なくないの?」
「前お父さんと行ったから大丈夫」
これも経験だ。俺はドルハさんから貰った短剣を身につけ、アカネちゃんと出発した。
北にある鉱山を目指して歩いた。
その鉱山は弱いゴブリンが湧き出るので、初心者にはもってこいの場所だということだ。
1時間ほど歩くと鉱山の入り口についた。
「じゃあ、入るよ」
アカネちゃんは躊躇せずに中に入ろうとした。
「ちょっと待って。松明とか灯りはいらないの?」
「中は明るいから大丈夫だよ」
本当か?
ここから見る限り、中は真っ暗だが。
「ゴーゴー」
と言って、アカネちゃんは走って中に入ってしまった。
「待って、危ないって」
慌てて追いかけた。
やっぱり、中は真っ暗だよ。
思ったとおりだ。
まだ入り口付近だからうっすら見えるが、奥に行くと危ない。
アカネちゃんにダッシュで追いつくと肩に手をかけた。
「外に出るぞ」
あれ? アカネちゃんの肩、やけに冷たいぞ。ヒンヤリとした冷たさが手に残った。
次の瞬間、アカネちゃんのパンチが飛んできた。体を斜めにし、そのパンチを避ける。
「フフフ、何度も不意打ちは食らわないぞ。俺も成長しているからな」
「カイ、誰と話しているの?」
後ろを見るとアカネちゃんがいた。
「えっ、何で後ろにいるの? だとしたら、これは誰?」
俺が手にかけていたのは、ゴブリンだった。
子供のような体格なので、こう暗いと人間と区別がつかない。
「アカネにまかして」
アカネちゃんが突っ込んできた。
アカネちゃんの近接戦闘の強さは、俺は何度も体験している。
こんなときには頼もしい。
「死んじゃえ」
といって放った拳が顔面を捉えた。
ゴブリンでなく、俺の顔面に。
「ちょっと待て、俺だ、俺だ」
追撃が何度も体に突き刺さるのを耐えながら、叫んだ。
「このゴブリン強い」
だから、ゴブリンじゃなくって俺だって。
興奮状態にはいっているのか、俺の声が届いてない。
「逃げるぞ」
と叫んで、明るい出口に向けて走った。
アカネちゃんが後から追いついてくる。
出口の外でしばらく待ったが、ゴブリンは追いかけてこなかった。
「ふぅ。助かった」
俺はその場にへたれこんだ。
アカネちゃんは、俺の顔をまじまじと見ている。
「ひどい。アカネが仇を討ってあげる」
いや、この怪我はアカネちゃんが殴った怪我だって。
仇討つといって聞かないアカネちゃんをどうにか引き止めて、その日は宿に帰った。
◆◆◆
「魔物と戦うのに、いい先生はいないですか?」
冒険から帰ったあとすぐに、ハルさんに確認した。
アカネちゃんが師匠となったら、このさき未来はない。
「カイさんだと短剣で戦うの?」
そうか、何で戦うか考えないと。
今の俺の筋力からしたら、長剣も難しいか。
そういえば、ガルドさんからアドバイスもらったな。
「罠か弓がいいんじゃないかと、ガルドさんが言ってました」
「確かにそうねえ、弓がいいかもね。シズクさんという、弓の達人がいるから話しておくわ」
よし!!
弓だったら、テクニックさえ学べば強くなれそうな気がする。修行して強くなってやる。
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