第13話 狩り:ガルドさんと仲直り
次の日の夜に食堂に行くと、冒険者4人は珍しくお酒を飲んでいた。セシリアさんは、みんなから見えないように隠れて手招きしている。気のりはしなかったが、俺も参加することにした。
「みなさん、お邪魔します」
「カイさん、こんばんは」
セシリアさんが挨拶を返してきてくれた。セシリアさんの狙いはわかっている。 俺とガルドさんを仲直りさせたいのだ。
「ガルドさん、この前はしつこく言ってすみませんでした」
「あぁ」
勇気を出して言ったのに、ガルドさんの反応は薄い。だから、気乗りがしなかったのだ。
「ガルドさんも、カイさんに言うことあるでしょ」
「俺はもう怒ってないよ。お前のバカさかげんに免じて、許してるやるよ」
良かった!! これで前の気さくな関係に戻れる。でも、バカさかげんという言葉が気になる。
「俺、バカなことしましたっけ?」
というや否や、ガルドさんは大声で笑った。
「アカネちゃんから聞いたよ。肉にされると思って、ハルさんから逃げてた話」
それ昨日の話だぞ。アカネちゃんのおしゃべりめ。
「そして、アカネちゃんに『師匠、助けてください』って泣いて仲裁を頼んだらしいな」
あることないこと言って、ひどいなアカネちゃんは。近いうちに、どちらの立場が上か思い知らせてやらないといけないな。
「ガルドさんも素直じゃないですよね」
セシリアさんは、冷静な感じで口を挟んた。
「俺はいつも素直だろ」
「カイさん。初日にみんなで狩りに行ったのは、ガルドさんがみんなを説得したからですよ」
「まあ、あれは俺たちにプラスになると思っただけだよ」
そんなことがあったなんて意外だった。成功したのは、ガルドさんのおかげだったということか。
「『カイは武力8なのに、朝から日が暮れるまで必死に走り回っているんだぞ。ここはヤツの将来のために、明日参加してくれないか? 頼む』と話していたのは、誰でしたっけ?」
「セシリア!! お前暴露なんてひどいぞ」
ガルドさんは、そんな風に思ってくれてたのか。ありがたい。やっぱり、ガルドさんはいい人だ。
「狩りが終わった後も『大したことしてないだろ』とか憎まれ口を叩きながら、もっと具体的に褒めろって目で合図するから、あのときは笑いそうになって大変だったんだから」
「そんな合図出してないだろ。まったく」
「でも、ガルドさんの気持ちがわかりました」
セシリアさんの声のトーンが変わった。
「カイさんを見てると、なんか応援したくなっちゃいますね」
「そうだろ。こいつは間が抜けているから、助けたくなるんだよ」
俺はそれから、楽しく飲み会をした。転生してホントに良かった。この村に来て良かったと思える1日だった。
ハルさんは女神だ。陰ながらいろいろサポートしてくれる。
ガルドさんは、根は優しく俺の事を思ってくれている。
セシリアさんも気配り上手で、お陰でガルドさんと仲直りできた。
アカネちゃんは・・・・・・。奴は絶対許さない!!
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