第9話 狩り:冒険者と狩り
次の日から3日間、狩りに行ったが成果はなかった。
ターブはそこら中にいるのだが、近づくとサッと逃げてしまう。
一番近づけたのでも、2メートル。
日が出てから暗くなるまで駆け回ったが、それでも駄目だった。
今日も、もうそろそろ日が暮れる。
きっかけだけでも掴まないと。
気持ちは焦るばかりだった。
「カイー。何をしているんだー?」
声の方向を見ると、ガルドさんが手をふっているのが見えた。
彼はギルドに泊まっている冒険者だ。
「狩りをしているんですよ。こっちに来ないですか?」
いいことひらめいた。狩りを手伝ってもらおう。
「へぇー、いい場所だね」
狩り場まで登ったガルドさんは、しきりに感心していた。
「いつもは、狩りをしないのですか?」
「魔獣を倒すために来ているからね。」
「魔獣を倒すとどのぐらい報奨金もらえるのですか?」
ギルドで報酬を渡しているのを見たことなかったので、気になっていたのだ。
「出してくれると助かんだけどね。」
と言ってちらりとこちらを見た。
思えば、魔獣討伐は村民を守るための依頼。
だから、村が報酬をださないといけないのか。
「では、何のために、魔獣討伐しているのですか?」
「強くなるためだよ。能力やスキルがあがりやすいんだよ」
「へぇー、そうだったんですね」
俺も魔獣狩りできるようになれれば、スキルを身につけられるかも。
今度魔獣狩りに行ってみるか。
「で、手伝ってもらいたいんだろ?」
「わかってました?」
「バレバレだよ。どうやって、狩りをする?」
「密かに近づいていくのはどうですか?」
これは、今まで俺がしていた狩りの方法だ。
というかこの方法しか思いつかなかった。
「それは難しいな。魔獣は襲ってくるから楽だけど、獣は逃げるからな。」
「それでは、追い込み猟をしましょう」
「できるか?」
追い込み猟は、初日にジョルドさんとした狩りの方法だ。
この3日さんざんターブに逃げられたお陰で、ターブの逃げ道がわかってきた。
今だったらどこから迫ったらどこに逃げるかが、だいたいわかる。
「たぶん……。いえ、きっとできます。」
◆◆◆
「やっと一匹狩れましたね」
4回目で、やっとガルドさんの方向に追い込むことができた。
ガルドさんは流石の実力で、1回で仕留めてくれた。
狩りをしたのは1時間ぐらいだったが、すごく疲れた、
2回や3回も仕留め逃されたら殺意が湧くかもしれない。
って前回5回も、仕留め逃したのって俺じゃん。
それを考えるとジョルドさんは、神レベルの優しさだ。
「よし、休憩はもういいかな。帰りながら話そうか。」
とガルドさんは腰をあげた。
「いつも、一人でやっているのか?」
「はい、忍んで近づいて切り込んでます。」
「罠か弓使った方がいいんじゃないか?」
「そうですね」
罠か。焦る気持から、じっくり待つ罠という考えがすっぽ抜けていた。
「追い込みは、サマになっていたから、金を稼ぐんだったら罠が手っ取り早いな」
「そうですね。罠作ってみます」
「ただ、カイは遠回りでも弓を鍛えた方がいいぞ」
「何でですか?」
「武力上げないと、この村で生きるのは厳しいからな。魔物ほどじゃないが、狩りでも経験値は稼げるぞ」
「すごく参考になります」
なるほど弓か。いいこと聞いた。
弓だと弓聖だったかな。
『辺境の地より出(射)でし弓聖カイ』いいかもしれない。
「……… カイ、カイ!」
「えっ何でしょうか?」
「今話し聞いてなかっただろ?」
完全に妄想の世界に入っていた。
弓は武力が低くても、なんとかいけそうな気がする。
希望がでてきたぞ。
「いやぁ、そんなことないですよ。そういえば、ガルドさんはたまにターブの肉売ってますよね」
「ああ、帰りに見つけたら狩るんだよ。宿代稼ぎにね。」
「ガルドさんの実力でしたら、1日で2匹は余裕ですよね。お金なんてすぐでたまるじやないですか。」
「経験値稼ぎに時間をかけたいんだよ。ターブ狩りに行くと、その日は魔物狩りにいけないからな」
ターブを狩る時間は惜しいけど、狩らないと宿代が足りない。
そういったところか。
「今日みたいに帰りにちょっとならいいんだがな」
なるほど。冒険者さんもいろいろたいへんだ。
「そういえばこの道、魔獣狩りと方向逆ですよね。どうして歩いていたんですか?」
「まぁまぁ。ハルさんに感謝しときな」
「ハルさん?」
何でハルさんの話が突然出たのだろうか?
疑問に思いながらギルドまで一緒に帰っていった。
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残り 2日
今月の目標 20万
本日の成果 2万
残り 12万
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