第8話 狩り:狩りの方法を教えてもらう

 そうだ、コバエ長の馬車のことを忘れてた!!

 手持ちのお金はいが、コバエ長の馬車を奪ったのだった。

 その馬車の荷物を売ればお金を稼げるかもしれない。


 俺は急いで、馬車に向かい、積み荷を確認した。


「何だこりゃ」


 積み荷にあったのは爆薬だった。しかも、馬車いっぱいだ。

 村を爆薬で飛ばして野原にするつもりだったのだろうか?

 いったい何のために、こんなに持ってきたんだ?


「ハルさん。爆薬って売れますか?」

「爆薬? ああ、コバエ長が持ってきた荷物ね。売れないわね。2つ隣の村だったら、ドワーフの鉱山用に売れるんだけど」


 なんていうことだ。がっかりだよ。

 なんでも、2つ隣村にはドワーフが住んでいるということだ。

 鍛冶が盛んで鉱物の採取も行っているため、岩盤の破壊に爆薬が使われるということだった。


 でも、2つ隣村まで行くには2週間かかる。往復で1ヶ月だ。

 とてもじゃないが行ける距離ではない。


 地道に稼ぐしかないか。

 その後、ハルさんが紹介してくれた猟師の元にいった。


 動物の狩り方を覚えて、お金を稼ぐためだ。


「兄ちゃん、ついてきな」


 筋肉質の30歳ぐらいの男性と男の子が案内してくれた。

 男性の名前はドルハさん、強面で緊張する。


 ついたのは、ギルトから10分の場所だった。


「この辺りには、ターブがいるぞ。初心者にはもってこいだ」


 膝ぐらいまでの草が生い茂っている。

 目に目える範囲に動物のグループが4つは見える。

 ギルドの近くに、こんなにいい狩り場があるなんて思いもしなかった。


「これ、やるよ。」


 ドルハさんはカイに刃渡り30センチぐらいの短刀を突き出した。


「そんな立派な短刀、頂いていいのですか?」


「アカネの弟子だろ。お祝いだよ。強くなれよ」


 見かけは怖いが、いい人みたいだ。

 でも、いつの間にアカネちゃんの弟子になったんだ俺は?


「アカネちゃんを知っているんですか?」

「知っているも何も、俺の娘だよ」


 なんとこの人がお父さんか。

 アカネちゃんが強いはずだ。

 アカネちゃんには逆らわないようにしよう。


 短剣を受け取りに、ドルハさんに近寄った瞬間だった。


「死ね!」


 ドルハさんは、突然叫び、短剣を構えて突進してきた。

 いったいどういうこと?

 俺が何かした?


 娘にまとわりつく男性は生かせておけないとかか?

 あっあれか。王子様と結婚するという夢をからかったのが原因か?

 それで、あることないことアカネちゃんがお父さんに吹き込んだのか?


 思わぬ勢いに、尻もちをついてしまった。

 ヤバい殺される。ドルハさんの目がマジだ。

 ドルハさんが迫ってくる。


 『もうだめだ』と思って目をつぶった瞬間だった。

 後ろの草が、ガサガサっと動いた。と同時に、動物が一匹勢いよく飛び出てきた。そして倒れた俺の真上をジャンプして、飛び越えた。


 ドルハさんは着地した瞬間を見計らって、横から動物を串刺しにした。


 いったい何がおきたのだろうか?

 俺は呆然として、おきあがれずに座っていた。

 

 脇に倒れているのは子豚みたいな動物だった。


「これが、ターブな。うまいよ」


 血で濡れた短剣を差し出しながら、ドルハさんは言った。

 短剣を受け取ると、ずしりと重かった。


「おい、追い込むときは、事前に情報上げろっていつも言ってるだろ」


 ドルハさんは草むらに向かって怒鳴りはじめた。

 草からひょこっと、一緒にきた少年が顔をだす。


「はい、すみません」

「種別と頭数な。基本ができないと死ぬぞ」

「それじゃ、あとは坊主と一緒に狩りしてくれ。こいつもお祝いな」

と倒れたターブを指差すと、ドルハさんは帰っていった。


「ドルハさんは君のお父さん?」

「はい、そうです。私はジョルドで12歳です」


 アカネちゃんは10歳だから2歳上か。

 細身で、アカネちゃんと同じぐらいの身長だった。


 ドルハさんとアカネちゃんとは違い、言葉遣いがしっかりしている。


「さっきは、ジョルドさんが、ターブを連れてきたの?」

「はい、私がみんなのところに追い込んで狩りをするんです。」

「大変そうだね」

「家では、優しい父親ですよ。」


 狩りがたいへんの意味て言ったのだが、父親のことと誤解したようだ。


「それでは、狩りをしますか」

と言うとジョルドさんは草むらに溶け込んでいった。


 そのあとは大変だった。

 ジョルドさんは5回追い込んでくれたが、短剣はかすりもしない。

 最後は、よれよれに傷ついたターブがふらふらと俺の前に歩いてきた。


 俺は手に力を込めると、体当たりするように突き刺しで、トドメを留めをさした。


「カイさん、おめでとう。素質があります」

と褒めてくれたが、ジョルドさんが弱らせてくれたのは、明白だった。


 その後は狩った獣の血抜きの方法を教えてもらい、その日は解散した。


 ターブは1匹3万。今日で6万稼げた。

 1日1匹狩れば、月末に24万。

 これで、宿代の目処がついた。

 幸先の良いスタートだ。



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残り      6日

今月の目標  20万

本日の成果  6万

残り   14万

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