第4話 始動:左遷させられてました
さてと、もう部屋で休むか。
ジョブにがっかりした俺は、もらったスキルカードを鞄にしまって、席を立とうとした。
「ああー、この封書。中央ギルドのだー。いいな、いいな」
「ああ、これ?」
アカネちゃんが興味を示したのは、鞄に入った封書だった。
転生後に手に持っていた鞄の中に入っていたのだが、他人宛だったので放置していたものだ。
「すごーい。すごーい。カイは中央ギルドの人なの?」
模様が入った蝋の封をしきりに見ている。
なるほど、ひし形が組み合わされたこの形が中央ギルドの紋様か。
俺も何でこんな封書を持っているのかがわからない。
所属員なのか、それとも単に封書を運ぶように依頼されただけなのかが。
ふーむ。なんと答えるか。
「ええ、所属していたとも言えるし、所属してないともいとも言えるかな」
とりあえず、曖昧な言葉で誤魔化した。
「お金どれくらいもらえるの?」
どうもアカネちゃんは、中央ギルド職員だったと捉えたようだ。
「そんなに、中央ギルドってすごいですか?」
「またぁ、謙遜して。世界中からのよりすぐりのエリートの集まりじゃないですか。各地のギルドを統治する機関ですよ」
転生前でいうと、国家公務員のイメージに近いのかな。
ということは、俺はエリートの一員だったのか。
俺は封書をまじまじと見た。封書を裏返して表を見ると、パプキン殿へと書かれていた。
その宛名を目にしたハルさんは、露骨に嫌そうな顔をした。
もしかして知っている人なのだろうか?
「パプキンさんをご存知ですか?」
「ええ、隣街のギルド長です」
「金に群がるコバエ長だよ」
「こら、アカネちゃん。そんなこと言わないの!」
今のやり取りで、どんな人だか何となくわかった気がする。
「何の封書なのですか?」
「俺もわからないです」
「見よーよ、見よう!」
名高い中央ギルドの封書ということで、俺も興味が湧いてきた。
アカネちゃんの言葉に従って開けてみたい気もする。
しかし、他人宛の封書を開けて、後でトラブルにならないだろうか?
そうだ!! いいこと思いつた。
「ハルさん、ナイフありますか?」
「はいどうぞ。どうするのですか?」
俺はハルさんから、ナイフを受け取ると、封筒の下を丁寧に切った。
こうすれば、後で何かあったときに誤魔化しやすい。
手品でもそうだが、しっかりした封があるほどそこに目がいく。
それ以外の抜け穴が逆に見落としやすくなるのだ。
中身を取り出すと厚手の立派な紙が出できた。
「おっ、これは俺の辞令ですね。読みますよ。『辞令 カイ殿』」
「殿だって。さすがギルド長に任命されるだけあるわね」
「よっ、カイ殿!!」
アカネちゃんが合いの手を入れる。
ハルさんもアカネちゃんも、楽しそうだ。
身を乗り出して、次の言葉を待っている。
「お静かに。では、続きを読みま〜す。『サラヘイム村のギルド長として左遷する』」
……
…………
「左遷ってな~に?」
「しっ、アカネちゃん」
何? 左遷って何なの?
俺の方が聞きたいぐらいだよ。
地方ギルド長への栄転て、転生の募集には書いてあったぞ。
いったい元の人は、何をやって左遷になったんだ!!
数年過ごしたら、別の地方都市のギルド長として移動できるかも!!
とちょっと期待していたが、その道も完全に絶たれた。
続きの文章がまだあったが、このまま通知を読む気力がわかない。
「夜風にあたってくる」
と言って、俺はギルドの外に出た。
「カイは大丈夫?」
「まだ昼なのに、夜風って。相当重症ね」
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