第35話 番外編 クロの髪型誕生秘話?

 これは国境線を越えてザリニア王国に入ってから半日と一晩がたった頃のこと。


 オレオルはアレク達とクロとフィーの6人と1羽で、帝国との国境から、ナスハワの街までの道のりのちょうど中間地点にある、街道沿いの休憩広場で一夜を明かした。



 自らかって出たクロの夜間の見張り番の順番はちょうど真ん中の真夜中。


 そのため、他の時間帯の人と比べて1番睡眠時間を確保できないので、キツい時間帯のはずだった。


 なのにもかかわらず、見張り番をクロに却下され、ぐっすりと眠ったオレオルよりも早く起きたクロ。

 起きてすぐに、まだ寝ているフィーとオレオルを置いてどこかに姿を消した。


 そしてクロがどこかへ行ってから40分ほどが経過した頃。


 オレオルも目を覚ましたが、クロの寝ていた場所は綺麗に片付けられており、どこにも姿がない。


 オレオルは一瞬、クロがもう戻ってこないのかと不安に思ったが、すぐ横で眠そうに自分の羽を整えているフィーの姿が目に入ったためそれは無さそうだと思ってほっとした。


「フィー、クロは? 」


「ピ? (しらないよ? )」


「そっか」


 なんだろ、トイレか?


 まあ、なんにせよだな…

 フィー置いて行ったままだし俺との契約もあるからその内戻ってくるだろ…


 まだ半分くらい寝ぼけている頭でそう結論を出したオレオル。

 クロの行き先を考えるのをやめ、自分の身だしなみを整える事にした。


 そして、そうしていると、この広場から少し離れた場所でクロらしき魔力の大きな反応を感知した。


「この反応…クロの? 」


「ピィ? (とうさまいた? )」


「うん、ここから北西に少し行った所で何かしてるみたいだよ」


「ピィ…(ふぃーもいきたかった…)」


「クロが帰ってきたらそう言ってみたら? 」


「ピィ! (そうする! )」


 フィーとオレオルがそんな会話をしているとクロの反応が一瞬で移動して来てテントに帰ってきた。


 何をしていたのか知らないが、帰ってきたクロの魔力はさっきのクソでかい反応が嘘のように昨晩寝る前と何も変化が無い。


 それでもなお、無理矢理昨晩と違う点をあげるとするならば…

 生え際のど真ん中から生えていたフィーの冠羽そっくりの髪の束が無くなっている事くらいだろうか。


「頭の上の青いトサカみたいなの無くなってる…」


 クロの頭の上で異彩を放つ青と金の髪の毛。

 それが無くなっているのが違和感でついそう言ってしまったオレオル。


「ピィ! (だいじょうぶ! )」


 フィーが寝ぼけたオレオルのつぶやきを聞いてそう返した。


「大丈夫って何が? 」


「ピィ、ピ! (いつもあさになったらなくなるけど、すこししたらふっかつしてるの! )」


「朝になったら無くなる? 少ししたら復活? 」


 どういうこと?

 意味がわからない…


 まだ寝ぼけている頭ではフィーが言った事をちゃんと理解できないオレオルは頭にたくさんの?が浮かんでは消えていった。


「ピィ! (ふぃーとおそろい! )」


 ?を浮かべているオレオルを他所に嬉しそうに鳴くフィー。


 そんな全身ふわふわなフィーの頭には小さな冠羽がピンッと一つ立っていてとても可愛らしい。


「おそろいなんだね…フィーかわいい」


 オレオルはポテポテと歩くフィーが可愛くて『もうなんでもいいや』という気持ちになりかけた。

 そして、思わずそう呟いてしまった後からふと思う。


 ちょっと待て、俺。

 可愛さに騙されるな。


「なんにも答えになってないじゃん。朝になったら無くなるってなんだそれ…」


 なぞなぞか何か?


 というかそもそもが、なぜクロは自分も冠羽を生やそうと思ったのか。


 オレオルは目が完全に覚めていたがそれでもわけがわからなかった。


「ピ、ピィピ! (ふぃーもあさになったらふっかつ! )」


「そ、そうなんだ…? 」


 え、フィーも復活するの…???

 だ、ダメだ意味わからん…


「アホ共が…朝になったら消えてるんじゃなくて朝、髪型セットする時に作ってるだけだ…」


 クロはアホな会話をしているオレオルとフィーに耐えきれなくなり、吐き捨てる様にそう言った。


「あぁ、なるほど! 朝になったら消えてるって言うのはフィーがクロよりも寝るのが早いからいつも朝になったら消えてるように感じるだけか! 」


「ピ!? (そーなの!? )」


「はぁ…」


 驚いている様子の1人と1羽にクロは思わずため息がでた。

 そしてそんな呆れている様子のクロを見てオレオルは思った。


『フィーの言葉って聞く側の聞き取りやすさを考慮されてない事が多いから、すぐに理解できない時がないか? 』と。


 まだ子どもだからかな。

 クロが初めて話した時からずっと偉そうだから、その分素直なフィーと話すのは楽しい。


 それに、癒されるからほっこりする。


 けど、たまにわけわかんなくて思考が停止しかけるんだよなぁ…


 あ、そういや初めて話した時と言えば…


「…クロってなんで髪の毛と目が全部黒いの? 」


 洞窟の中で倒れてる所を発見した時は服とかアクセサリーとかしか黒じゃなかったはずだ。


 オレオルがふと気になってクロの黒い髪を見るとクロも動きを止めてオレオルの方を見た。


「それは魔術で変えてるだけだ、こんなふうにな」


 そう言うやいなやクロは髪の毛と目、眉毛、まつ毛、着ている服や靴、アクセサリーに至るまで、全てをどぎついピンクに変えてみせた。


「え、凄…どうやってるの? 」


 オレオルは『よりにもよってなんでこの色を選んだんだろう』とは思ったが、やってる事は普通に凄かった。


 なので、純粋に感心し、何をしているのかその仕組みが気になった。


「この魔術は光属性と闇属性の合わせ技で、人の目にうつる光をいじって別の色の様に見せてるだけだ」


「目にうつる光をいじる? しかも他人の認識を? 」


 それってそんなサラッとできる事だったっけ?


 ただでさえ複数属性を同時にコントロールしないといけないっぽいのに…

 それだけじゃなく、やる事自体も光の粒子の操作とかいうめっちゃくっちゃ複雑そう事だし…やたらと魔力も消費しそうなんだけど。


 そんなとんでも魔術を無詠唱で、かつ、常時発動してるとか…バケモノかこいつ。


 オレオルは信じられないものを見るような目でクロを見た。


 時の最上位精霊といいマジで何者だよ…


「『理解不能』みたいな顔してるが、関所で兵士に使った魔術はともかく…こっちは光属性がメインなんだからお前にも使えるはずだが? 」


『なぜそんな顔をしてくるのかわからない』と言った様子のクロ。

 演技なのか、本気なのか、いまいち判断がつかない真顔でそう言ってきた。


「いやいやいや、『理論的にはできるんだからお前もやれて当然だろ』みたいな顔されても、無理なもんは無理ですけど!? 」


「………そうか…雛鳥にはまだ無理、か」


 クロが心做しか呆然とした様な表情でそう言って、テントの隅に行った。


 そのため、結局オレオルには先程のクロの言葉が純粋にわかってなかっただけなのか、自分をバカにしていたのか、区別はつかなかった。


 これまでの言動からすると、バカにされてる確率の方が高い気はした。

 だが、クロ相手にこの程度で腹を立てていては身が持たないとも思ったので気にしないことにした。


 そして一方クロは、内心でオレオルの魔法技術レベルの低さにびっくりしつつも、身支度をさっさと終わらせるためにテントの奥の方へ体を向けると自身の魔力を練り始めた。


 そして、空間属性の転移魔術の応用で自分の私物がある異次元空間から1人がけのソファを取り出す。

 貴族の屋敷にある様な上等なやつだ。


 なんの断りなくも突然出現した大きなソファにびっくりしているオレオル。


 それを放置してそこに座ったクロは自分の正面にさっきと同じ応用魔術で大きなドレッサーを出した。


「はぁ!? 」


 一瞬で3人用テントの半分以上のスペースを占領したクロ。


 しかし当のクロはその事を気にもとめず、ドレッサーの引き出しを引き、くしと整髪料を取り出しているようだ。


 こいつやべぇ。


 貴族の屋敷にしか無い様な…クッソ高そうなソファと、同じくらい高そうなドレッサー…持ち歩いてやがる…

 頭おかしい…


 い、意味がわからない。


 呆然となっているオレオルが先程出した叫び声はクロにも聞こえているはずだ。


 だが、クロはなんの反応も返さない。


 ただただ…鏡と向き合って、どピンクの髪の毛をくしでとかし、整髪料を手に取り、慣れた手つきで髪型をセットしていくだけだ。


「あの、クロ」


「なんだよ」


「いや、いつまでその目に優しくない色にしてるのかな…と」


 正直言って、今の全身どピンクなクロは完全に変な人だ。

 なので、その格好でテントから出るなら、俺は他人のフリをするし、もっと言うなら知り合いだと思われたくないから近づかないで欲しいとも思う。


「あぁ、忘れてたな」


「そんな高度な魔術使ってるのに!? 使ってる本人がなんでその事忘れられるんだ!? 」


 オレオルが思わずそう指摘すると、クロが「俺の目に映る色は何も変わってねえからな」と言った。


「ん? どういう事? 」


「言っただろ『人の目にうつる光をいじって別の色の様に見せてる』って。今、色がピンクに見えてるのはお前だけだ」


 クロが使っている魔術をようやくちゃんと理解したオレオルは『すごくクロらしい術だな』と思った。


「自分の体の色変えるのに自分にじゃなくて周囲に魔術をかけるってのがなんかすごくクロらしい…」


『俺は自分の色を変える気は無いが、目に映る色は変えたい、だから、てめえらが変われ』みたいな感じだもんな…この魔術って。


「別にそんなにつもりはないぞ。色替えの魔法は細かい調整が精霊任せで、自分で調節できねえから好きじゃねえだけだしな」


「こ、こだわりあるんだな…全身どピンクのくせに…」


 オレオルが耐えきれずにそう言うとクロが魔術を発動させた様でクロの全身の色が黒に戻った。


「あ、戻った」


 さっき俺は『なんでクロの髪と目が黒なんだろう』などと思っていた。

 だが、今は黒で良かったと心の底からほっとしている自分がいる。


 なんだかクロにいいように操られている様な気がしなくも無い。


「お前、そんなとこで寝巻きのままでぼーっとしてていいのか? 」


「あっ! よくない! 」


 クロの身支度をぼーっと眺めてないで俺も自分の支度しないとだな。


 俺は【清潔化】の魔術が込められている魔道具を起動した。


 そして、寝ている間にかいた汗等の体に付いた汚れを落とすとその魔道具を停止させて再びしまった。


 最後に寝巻きを着替えると冒険用の装備に着替えて自分の髪を整える。


 こうして後は髪のみになったオレオルが、ふと気になり、ちらりとクロの方を見てみた。


 すると、冠羽みたいな髪が復活していた。


「トサカ復活…」


 オレオルが思わずそうつぶやくとクロが顔を顰めてオレオルを見た。


「トサカじゃねえ、冠羽だ。トサカって言われるとバカみたいだろうが」


 …そうか?


 どっちの言い方だったとしても変なのは変わらないと思うけどな。

 他が黒1色の人の頭にそんな目立つ青色があったら普通の人以上にそこに目がいくのは自然な事だと思う。


 それに、そのせいで普通以上に変に目立ってるその見た目は言い方くらいじゃ何も変わらないと思うんだけど…


 というか


「バカみたいって自覚あったんだ」


 そこの方がびっくり。


「フィーがいなきゃこんな髪型してねえな」


「そうなんだ…」


 わかってるんならやめればいいのに…


 オレオルはそう思って、冠羽みたいな髪を見た。すると、クロにもオレオルのその考えがわかったようで…


「それは無理だ」


クロが真面目な顔をしてそう言った。


「なんでダメなんだ? 」


「これがあった方がフィーの機嫌がいいから俺の苦労が減る」


 えぇぇ…


「そんな理由…? 」


「何言ってる、フィーの機嫌は重要な事だ」


 そうなんだ…いや、そうか?


「ブルーテイルは幸運を運ぶ鳥と言われているが、フィーはその亜種がさらに変異した新種だ。そんなフィーは他人の運勢を操作する力がある。」


 クロが淡々とそう説明する。


「他人の運勢を操作? 」


 それってどういうものなんだろう。


「フィーは自分以外の生きているもの『全ての"運"』を奪ったり、増幅させたりできる上に、周囲の者へ好感度に応じて『幸運を付与』したりもできる」


 え、そうなの?


「フィーすご…」


 オレオルは思わずそう呟いた。


「すごいのは俺もそう思うがフィーはまだ幼鳥なのもあり、その力の制御が不完全なんだ」


「つまり? 」


「理解の遅いヤツだな…」


 クロはもはや様式美の様にオレオルを罵るとフィーの力の効果を説明してくれた。


 なんでも、フィーに運を奪われると、その人がその先に歩むかもしれない運命の道筋。

 それの内の1番不幸になる道にしか行けなくなるらしい。


 これまでに、犯罪がバレていない犯罪者を対象にして、その力を訓練させてきたとの事だ。


 その時の結果は、なんとも凄まじい事にフィーが少し運を奪っただけで、面白いようにこれまでの犯罪がバレて捕まり、犯罪奴隷落ちしたりしたとの事。


 そこまで聞いて恐ろしくなったオレオル。

 これ以上は聞くのをやめたが、クロいわくフィーの本気はこんなもんじゃないらしい。


「フィーがすごいのはわかったけど、それって運を奪われない限り関係ないんじゃないの? 」


 クロがわざわざ髪型変えてまでフィーのご機嫌取る理由ってある?


「関係なら大ありだ」


「どう関係あるんだよ」


「フィーがご機嫌だとフィーが好意を感じている者には好感度に応じた幸運が、フィーが不機嫌だと周囲にいる者に好感度に応じた不幸が、それぞれ起こる」


 クロが何か嫌な事を思い出した様で顔を顰めた。


「不幸ってちなみにどんな? 」


「前にフィーの機嫌を損ねた時は…大きな岩が降ってきたり…突然雨に降られたり…魔物に出くわしたり…散々だったぞ」


「うわぁ…どういう理屈かわかんないけどやばいな、それ」


「どういう理屈かも何も、お前だって楽しい事をしてる時や嬉しいと思ってる時の方が何事もうまくいくだろうが…それと同じだ」


「な…なるほど。そう、なんだ…? 確かにそうかも? 」


 なんかわかったような…わからないような…


「完全に理解できてるかは自信ない…でも、クロがその青い髪を毎朝わざわざ作ってる理由はわかった。でも、そういう事なら…最初からその髪してたわけじゃないんだな? 」


「そうだな」


 クロがそりゃそうだろという顔をしてオレオルを見て言った。


 そういう反応されると最初にその髪型にした時の状況が気になりすぎるんだけど…


「最初にこの髪型にしたのはなんでだと思う? 」


「え、なんだよ突然」


「当たったら冒険者登録するのは勘弁してやるぞ」


「本当!? 」


「あぁ…」


 そういう事なら絶対正解する!

 冒険者登録するなんて嫌だもん!!


「時間制限は俺の準備が終わってソファとドレッサーをしまうまでだ、はいスタート」


「え、ちょ、そんな急に!? 」


 その髪型になったきっかけだろ?

 え、なんだろ…


 クロが律儀に毎朝その髪にするのはフィーのため…

 なんだよな…だったら最初にその髪型にしたのもフィーのため、なのかな?


「あっ! フィーの訓練のために親代わりになってあげて精神状態を安定させたかったから! とか? 」


「違うな」


「えぇー…じゃあ…親がいないの悲しがって鳴くフィーを慰めるため…とか? 」


「ピィ? (ふぃーとうさまいるよ? )」


「え? 」


 オレオルは思わぬ方向から否定する声が聞こえてきて一瞬思考が停止した。


「フィー、正解はまだ言うなよ」


「ピ! (わかった! )」


「父様はクロがいるかもしれないけど、フィーを産んだ生みの親がいるだろ? 」


「ピ? ピィ! (いないよ? ふぃーはとうさまがうんでくれたよ! )」


「え、どういうこと…クロが産んだの? 」


「こいつのその手の言葉を真剣にとると疲れるぞ」


「え、じゃあ嘘なの? 」


「ピィ! (うそじゃないもん! )」


 フィーがクロの青い髪の所に飛び乗ってそう主張した。


「あぁーはいはい…そうだな、お前は俺の魔力で変異したんだもんな、それはわかってるから大丈夫だぞ…」


「ピィ? ピィ! (ほんと? もう忘れないでね! )」


「あぁ、もう忘れないぞ…」


 クロはそう言ってフィーをなだめていく。

 そしてフィーが落ち着いたのを確認してからオレオルの方を向いた。


「ったく、お前が変な事言うからだぞ」


「えぇ!? これ俺のせいなのかよ!? 」


「お前の的はずれな言葉が原因じゃねえか…」


「えっと…的はずれって事は…かすってすらない? 」


「欠片もな」


「えぇー…嘘だろ…こんなのわかんないって! なにかヒント! 」


 オレオルがそう言うとクロはこれみよがしにため息をついた。


「しゃあねえな…じゃあ特大ヒントだ。フィーは大して関係ねえからその思考からまず離れろ。」


「えぇ!? ないの!!? 」


「全く関係ないことは無いが主はあくまでも俺だな」


 はー…クロが主なの?

 なおさらわかんなくなったんだけど…


「じゃあ…ウケ狙いとか? 」


「……ウケ狙いとはなんの事だ」


「だってクロ顔立ち整ってるし、強者って感じの雰囲気もしてるから、黙ってるとすごいとっつきにくそうだって思う人多そうだなって…」


 クロってリリアさんとかセレーナさんへの接し方から察するにフェミニストそうな感じがする。


 だからフィーの存在をしつこすぎない程度に主張して目を引いて、同時に自分の近寄り難さも払拭できるその髪型はいいんじゃないかと思う。


 最初はクロの事立場のあるしっかりした大人って感じの印象だったから、その髪型は変でしかないって思った。


 だけど、クロとこうやって少しだけど話してみて…

 なんか結構いい性格してるってわかったし、楽しい事が好きだったじいちゃんと近しいものも感じる。


 クロの性格を知った上で改めて見てみると、ないと逆に物足りなさを感じ始めてもいる。


「…すごいな」


「あってる!? 」


「不正解だ」


「違うのかよ!! じゃあさっきのすごいなってのはなんだったんだ! 」


「よくもまあ…そこまであれこれ考えるなと思ってな…」


 クロが普通に感心した様子でそう言った。


「もしかしてクロさっきから俺の事バカにしてる? 」


「そんなつもりはねえが…面白いヤツだなとは思ってるぞ」


 クロはそう言ってニヤニヤとした笑みを浮かべた。


「まあでもさすがにこれ以上は待てないから時間切れだな」


 クロが魔術で椅子とドレッサーをどこかへ消した。


「ああぁあ!? 」


「ちなみに正解は『俺が寝ぼけて魔術の調整ミスったから』だ」


 はぁ?


「…それマジで言ってる? 」


「まじもまじだ。ちょうど俺がフィーの卵産んだブルーテイルの親鳥と同じくらいの大きさの…でかい鳥になって、フィーと一緒に空飛ぶ夢を見た日の朝でな…夢と混同して魔術の加減をちょっとミスったんだがフィーがあまりに喜ぶんでそのままにしてたらやめ時を失ったんだ…」


 え…えぇ?


 これマジで言ってる?


 クロってしっかりしてそうだし、寝ぼけてそんな事するようなタイプにも思えないんだけど…


「次の日の朝、これまで通りの黒1色の髪型に戻したら、フィーがあんまりにもしょんぼりするんでな。その日も冠羽風の髪型にセットして、その次の日も同じ流れで…ってふうに、以降それがずっと続いて現在に至る」


 その顔は嘘ついてる感じじゃない気がする…


 なんか意外だ…

 クロの事しっかりした大人の男って印象しかなかったから…

 そんな凡ミス?と言っていいのかわかんないけど、こんなミスもするって…

 しかもそれをそんなに楽しそうに俺に話すとか…ちょっと意外だった。


 これは正解当てられた気はしないな。


『寝ぼけて間違えた』とかクロとは1番遠そうな答えだしな。


 いや、ちょっと待てよ。


「……それって俺がどう答えてたら正解だったの? 」


 オレオルはクロが明確に正解としていたものがなんだったのかをちゃんとは聞いていない事を思い出し尋ねた。


「今回のクイズの答えは『でっかい鳥になってフィーと空飛ぶ夢見た俺が寝ぼけて魔術の調整を間違えた』まで答えて初めて正解だ」


「細けえな!? わかるか!! んなもん!! 」


『正解させる気なんて最初からないじゃねえか』と思った俺はめいっぱい力を込めて叫んだ。


「…って事で、不正解だったから冒険者登録は予定通りさせるからな」


 そう言ってクロがニヤニヤと笑った。


 くっそ…ムカつく顔しやがって…

 それにやな顔してても顔がいいんだから、なおムカつくわ…


 というかこいつ、最初からこうなるのを見越していたんじゃないか?


 こいつ絶対、冒険者登録を勘弁してやる気なんて欠片もなかっただろ!


「お前、ここまでの話本当に本当の話か? 俺をからかって遊ぶための嘘じゃないだろうな!? 」


 オレオルがそう言うとクロはニヤリと笑ってオレオルを高い位置から見下ろした。


「………さぁ? どうだろうな? それもクイズにしてみるか? 」


「もういいわ、誰かやるか! ひとりでやってろ!! 」


 オレオルはこれは付き合ってたら永遠におちょくられ続けるだけだ。

 そう感じたオレオルは、そう言い捨ててテントを出た。



 結局、クロの髪型の秘密はわからなかったけど、ふざけた性格してるクロにはちょうどいいなとオレオルは心の底から思った。



^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─

 お読み下さりありがとうございます!


 実はクロが使ってる色変えの魔術はかなり高度なものなのですがその話の続きはまたいつか別のところで。


 この作品の総応援(♡)数が500を超えました!

 皆様本当にありがとうございます!

 次から新章です


 最後に↓の♡をポチッと押してくださると私のやる気とモチベが爆上がりするのでぜひ♡を押して行ってくださいお願いします

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る