第33話 生い茂る薬草達と旅の目的
昼ごはんを食べ終わった一行はザリニア王国側の入国審査窓口があるナスハワの街まで歩き始めた。
アレクさん達によるとここからナスハワの街まではちょうど丸1日くらいかかるらしい。
例によってまた道中ちょくちょく採取させてもらいつつ進んでいると数日前帝国内で採取していた時とはまた別の違和感を感じる。
あの時は珍しいものばかりがあって変だなと思ったが、今回は珍しいものがあるわけではないが、思った以上にあちこちにいろんなものが残りすぎている様に感じたのだ。
これから向かうナスハワの街もタリアと同じかそれ以上に人口があるとの事で、近頃の情勢もありここを通る人は少なくないはずだ。
なのにこの辺りの薬草や木の実などは取るのに手間のかからないすぐに採れる物すらわんさか生えており、ろくに採集されている感じがしなかった。
あまりにも採取された形跡がなく、全てがそのまま残ってるので不安になったオレオルはとうとう白冠草を前にして採集する手が止まる。
そして目と鼻の先、すぐそこにある街道を行く冒険者達を見た。
街道からの距離…あっても6~7メートル…
なのに残ってる白冠草…
「何が起こってる…? 」
この白冠草はオレオルの故郷であるタリアの街で売ったら最低でも大金貨2枚はいく。
庶民の生活費がひと月金貨1~2枚。金貨10枚で大金貨1枚と同じ金額。
大金貨2枚と言うと一般庶民の丸1年分の生活費にもできる額だ。
なぜ、こんな所に生えてる白冠草。
なぜ、こんな所で残ってる白冠草。
そこ歩いてるお前らなんでこれを素通りできてるんだ!?
バカか? バカなのか!?
いや、待てよ?
「あの、白冠草ってザリニア王国ではそこまで高く売れないとか、じつはたくさんあちこちに生えてるとかあります? 」
まあ、そうだったとしても俺は自分用に欲しいから採るんだけど。
いや、まてよ…ここは採っちゃいけない場所です、とか無いよな?
ここに来るまでにすでにいろいろ採取してしまった後だぞ!?
オレオルが今さらになって不安になっているとアレクが近づいて来てオレオルの足元にある白い花を咲かせている植物を見た。
「俺は見た事ない花だな…これはハッカン草?と言うのか? 」
アレクがまじまじと白冠草を見つつそう言った。
「お前らコレ知ってるか? 」
「ぼく知らない」
「ワタシも知らないわね」
「私は見た事はありますけど名前までは…すみません」
あれ? もしかして知られてないだけ?
…いや、それだとこれが残ってるのはわかるけどこの辺りの薬草とかが軒並み茂ったままの理由にはならないか。
「…その白冠草はザリニア王国でも普通に帝国と変わらない値段で売買されてるし、この辺りも特別法で禁止されてる地域って訳でもないから欲しいなら好きに取ればいい」
このままでは埒が明かないと思ったのかクロがそう言って教えてくれた。
「そうなんだ…教えてくれてありがとう」
「冒険者ギルドに登録してたらこういう時に教えてくれるから便利だ。行き先の街で起こってる異常を教えてくれるからな。その様子じゃしてないだろ…街に着いたら登録しとけ」
ナスハワの街についたらギルドに登録しに行くつもりではあったけど、それはあくまで商業ギルドだけで、冒険者ギルドには依頼する側くらいでしかいくつもりなかったんだけどなぁ。
「俺、戦えないから冒険者ギルドはちょっと…」
「これからできるようになるから問題ねえな」
「誰が? 」
「お前が、以外にあると思うか? 」
「俺痛い事も怖い事もしたくないから嫌です」
「やりたいかやりたくないかじゃねえ」
クロはそう言ってオルオルをじっと見て一言。
「やれ」
ギロリと睨まれそう言われても恐怖しか感じない上に、『なんで会ったばかりのクロに指図されないといけないのか』という気持ちしか湧かない。
「経緯はどうあれお前はこれから旅をするんだろうが」
「それはそう…かもだけど、これまでも逃げるだけで何とかなって来たし…」
痛いのは嫌だ。
可哀想だって思ってしまう。
心が伝わってくるから。
オレオルはやらなくて済むならなるべく戦闘はやりたくなかった。
だが、クロはオレオルのそんな甘えた考えを見透かしたようにオレオルを睨みつけた。
「最低限やれるようになっとかねえと何かあった時に…死ぬぞ? 」
そう言ったクロは真剣な目をしていて…でもどこか悲しそうでもあって…オレオルはそれ以上何も言えなくなってしまう。
そしてそのまま気まずい沈黙が二人の間に流れる。
「まあまあ、お2人とも…今はそれくらいにしておきませんか? 」
「……はぁ。詰め込んでも身にならなきゃ意味ねえしな…」
見かねたアントンのおかげでこの場でこの話題はひとまず終わりとなったようだ。
クロは1人難しい顔をして何かを考え込むとそのまま先にスタスタと歩いて行ってしまった。
オレオルはそれを見て白冠草を急いで根っこごと取るとリュックの中にしまってクロを追いかけた。
そこからは会話もなく道中は静かだった。
これまでも道中で取ってきたヒーリング草という傷薬で1番よく使う薬草を始めとして、マナリング草という魔力回復薬で1番よく使う薬草、キュアリング草という毒や麻痺などの状態異常に効く回復薬に1番よく使う薬草、シックリング草という軽い病気の時に飲む万能薬の主な材料になる薬草などなど…たくさんの薬草を手に入れる事もできた。
この〇〇リング草という名前の薬草は一般的にリング種と呼ばれている薬草達だ。この薬草は名前の由来にもなっているリングのようになっている葉と花びらの部分が特徴の植物で、花びらのリング部分の色の違いによって傷薬、魔力回復薬、解毒薬、解麻痺薬、万能薬などの中からどれが作れるのが変わるという少し変わった特性を持っている。
そのため薬草の中では初心者冒険者が依頼などで採集する時に最も間違えられにくく簡単な為、初心者がまず教えられるのがこの薬草の採取方法だったりする。
そしてそんな薬草の他にもポカタスの木やスサフグリの木もあった。
ポカタスは葉が薬になるので葉を、スサフグリはたくさんの小さな黄色い実をつけるのだがその実のジャムが人気なので実をそれぞれ収穫していく。
実はこの2本は春先が時期な種類なのでどちらも収穫時期とはかけ離れているのだが、たくさんあるので取れるもんは貰っておこうと思う。
オレオルはあると思ってなかったものがあり、自然からの思わぬ贈り物に目を輝かせて採取していった。
ポカタスの葉は寒さが苦手なオレオルには必須でもあるとある物の材料になるし、スサフグリの実も酸っぱいのでオレオルはあまり好きでは無いが、フィーとクロは好きだという事なのでたくさん必要になるだろう。
スサフグリの実は1個1個が小さいので沢山取らないとジャムにできないのだ。
あまりの数なので途中でクロにも『食べたいなら手伝え! 』と言って手伝わせたが、予想外に慣れた手つきで取っていくのでオレオルは見た目とのギャップでびっくりした。
気になって聞くと、なんでも前に旅をしていた仲間にも同じ事を言われてしょっちゅう手伝わされていたらしい。
オレオルはそういう事ならこれからはこいつにも手伝ってもらおうと密かに思った。
そして最終的にはアレクさん達まで手伝ってくれた採取は思ったより早く終わり、オレオル達はナスハワの街の方へ再び歩き始めた。
*
あの後夕方まで街道沿いにひたすら歩きながら生い茂る薬草を採集しまくった。
オレオルにとって今回の謎に生い茂る薬草達はまんま宝の山の中にいる様なそんな状況だったので『あっちにある、こっちにある、そっちにもある』とハイテンションで採集しつつ進んで、気づけば辺りは暗くなり始めていた。
辺りが暗くなりだしたので、採取をやめてペースを上げて街道を進むと少し行った所にたくさんのテントが立ち並ぶ大きな広場があった。
広場に着いた頃にはあたりはすっかり暗くなっていたため周りはあまりよくわからないが、冒険者達がそれぞれ灯している魔道具のランプの光がずっと先まであったのでかなり広い広場だと言う事がわかる。
オレオルは現在地が気になってアレクに聞くとゴルゴン帝国とザリニア王国の国境からナスハワの街までの間のちょうど中間地点にあたるらしく、街まであと半日の距離だと教えてくれた。
「ここの休憩広場はほんとに広いな…」
じいちゃんから話だけは聞いていたけど、実際に来てみるとびっくりする大きさだ。
普通休憩広場は1日で移動できる距離を基準に設置されている事が多いのに、ここは国境近くにもあるのに、そこから半日で移動できる距離にもう次がある。
ここまで過剰なほどに用意されているのはどうしてなんだろう。
「昔はここにこんな大きな休憩広場なかったが、帝国が戦争起こす度に難民がここの道を使うってんで徐々に整備されていってこうなったんだ」
オレオルの疑問にクロがそう答えた。
「なるほど…だからこんなふうになってるんだ…」
*
その後、今晩は野営用の休憩広場でオレオル達は1晩を明かす事になった。
オレオルはアレク達のテント含めて2つ分が張れそうな所を探し、空いている場所を見つけてテントを張ることにした。
広い休憩広場だった事が幸いして場所はすぐに見つかったが、暗いのでテントをはるのに手こずっているとクロが魔法で一瞬のうちにテントを完成させてくれた。
「すごい…今のどうやったの!? 」
シュルシュルシュルとテントが動いて、勝手に組み上がったのに興奮したオレオルがクロに尋ねた。
「別に大した事はしてねえよ、テントの時間を巻き戻しただけだ」
クロがなんて事ない魔法であるかのようにそう言う。
「"だけ"じゃないけど!? 」
「俺が契約してる時の最上位精霊に頼めばこんなのすぐだ」
「と、時の最上位精霊…? 」
聞き間違いか?
最上位精霊って言わなかったか? こいつ。
言ったよな?
嘘ついてる感じもしないし本当なんだろうけど…
こいつやばくないか。意味わからんだろ。
そんな精霊いるのになんで死にかけてたんだよ。
「気になるならそのうち会わせてやるからお前も契約したいって言ってみるといい、お前ならたぶん気に入られるだろう」
クロがそんな事を言い出すのでオレオルは思わず反射的に「時の最上位精霊様には会ってみたいけど、最上位精霊と…しかも時属性のと契約とか厄介事の種にしかならなそうだからいらない」と言って断った。
クロはオレオルのその返事に何か言葉を返すことは無かったが、何やらニヤニヤしていたので嫌な予感がした。
だからオレオルはその場から逃げるようにしてアレク達のテントの方へ向かった。
*
テントを張り終えたオレオルは横にあるアレク達のテントに様子を見に行く事にした。
アレク達のテントはクロが今組み立てた3人用のものと違って6人用で倍以上大きく組み立てにもそれだけ時間がかかる。
だからクロのおかげで思ったよりも早く終わったオレオルはアレク達が終わってない様なら手伝おうと思ったのだ。
だがアレク達もちょうど今組み立て終わった所の様で、こちらにやってきたオレオルに気付いて椅子を出して座るとオレオルの方に手招きをした。
「おーい、お前達もテントも張り終わったのか? だったらちょっとこっち来いよ! 」
断る理由がなかったのでオレオルがアレク達の近くに座るとアレクはバックの中から地図を取り出して見せてくれた。
オレオルも地図は持っているが、オレオルの地図は帝国で買った地図なので、帝国外の事はほとんど描いていない。
そのためオレオルはアレクの持っている見た事のない地図がとても新鮮で興味深く感じた。
「あと半日くらい歩いたらナスハワの街に着くんですよね? 」
「あぁ、ここが関所からナスハワまでの道のりのちょうど中間地点だからな」
アレクがそう言って現在地を指して教えてくれた。
「この横に長い国がザリニア王国ですか? 」
「そうだよ。で、オレオル君が手紙を預かってるって言うグランミリア王国のティミラの街が…ほら、ココ! このザリニア王国から1番近い所にある大きな街がそうだよ! 」
「……こうしてみるとそんなに距離は無いんですね」
ティミラの街の詳しい行き方はナスハワの街の商業ギルドで地図購入と行商登録ついでに聞こうと思ってたけど、この距離ならわざわざ聞かなくても定期馬車がありそうだし大丈夫かもしれない。
「国境2つも越えないといけないって聞いてたので、もっと距離があるのかと思ってました」
「それぼくも最初にティミラの街に依頼で行った時に思ったよ」
「セレーナもティミラへの依頼が初の国外だったものね」
「そうそう、なんだか懐かしいね! あの時はすごく長旅になる事を覚悟してたのに実際は街何個か挟むだけで結構近いって聞いてびっくりしたんだよ、ぼく」
「街の仲いい人たちと今生の別れかってくらいに大袈裟にお別れしてたもんな」
「あー! それ恥ずかしいんだから言わないでよ! もー! 」
恥ずかしそうにするセレーナに3人の笑いが起こった。
「皆さん本当に仲がいいんですね…」
これまで店に客として来たいろんな冒険者達と会ってきたが、ここまで気安い関係は中々見なかったのでオレオルは珍しいなと思った。
「集落跡地での戦闘でも事前に打ち合わせしてる様子がなかったのに息ピッタリだったので、すごいなって思ってました」
Bランクの中では若い部類に入るだろうがそれも納得だと感心もした。
「俺たちは元々同じ街に住んでた幼なじみでガキの頃からの付き合いだからな」
「幼なじみ、道理で…だから連携も慣れてたんですね」
「まあな、故郷は帝国の北にあるドルチェの街なんだが、その街にある学校で俺たち4人がたまたま同じ班になってそれが始まりだ」
「ドルチェと言うと…帝国北部最大の街の…」
ドルチェの街はゴルゴン帝国で首都ゾーラに次ぐ第2位の大都市と言われている。
「そうそう、人が多いからゴミゴミしてるし、工房とか工場とか多いから空気悪いしで、ぼくは子どもの頃によく病気してたな〜」
幼い頃はしょっちゅう寝込んでいたというセレーナさんの治療に来てくれていたのが、当時ドルチェの街のいちばん大きな教会で大神官をしていた人らしい。
そしてその人が、セレーナさんが十字架ちゃんを譲ってもらったお師匠様でもあるらしい。
一方アレクさんは帝国では有名な鍛治工房リヴァルディの長男だったらしく、小さい頃は鍛冶職人になるための修行をさせられていたらしい。
だがアレクさん本人はそれが嫌で嫌で仕方なかったらしく、よく修行をサボって隣に住んでいたリリアと一緒に遊んでいたらしい。
「なんだかアレクさんらしいなって思ってしまいました」
「だろ? 本当に自分でもびっくりするくらい鍛冶の才能がなかったんだぜ」
アレクが自信満々にそう言うのでオレオルはおかしくなってしまって思わず声に出して笑ってしまった。
「だから冒険者になったんですか? 」
「ああ、冒険者になって探したいものもあったし、戦闘の才能はあったみたいで楽しかったしな! 」
店の方は鍛冶職人の才能があった弟に跡継ぎを譲って、両親の反対を押し切って冒険者になったらしい。
そしてこれまでずっと冒険者をしながら帝国国内をメインにあちこちあるものを探していたという。
「何を探しているんですか? 」
オレオルがそう聞くとアレクは照れくさそうに頭をポリポリ書いて決まりが悪そうに笑った。
「子どもの頃に…1度だけ会ったんだよ聖獣様にな」
「聖獣様!? 」
聖獣とはこの世界の各地にそれぞれ存在しており、だいたいがその地で神として崇められている。
オレオルがクロを助けた時に使った[聖命復活の火種]。これの元となったブルーフェニックスの羽も不死鳥と呼ばれている火の鳥の姿をした聖獣様だ。
オレオルはそんなすごい存在に会った事があると言うアレクを尊敬の眼差しで見た。
「そんな目で見られると照れるが…聖獣様は美しかったぜ」
「どの聖獣様に会ったんですか!? 」
「俺が会ったのは今このパーティの名前にもなってる、かの有名なブルーフェニックス様だ」
アレクはその時の光景を思い返しているのか、瞳を輝かせている。それを見たリリアが心なしか呆れているような表情でアレクを見た。
「当時のアレクってば聖獣様に会って以降、口を開けばその話ばっかり…おかげでワタシは会ってないのにワタシまでその聖獣様に会った様な気分になったわ」
「だってしょうがねえだろ!? あの頃の俺にはその後の人生を変えるくらいにすげえ衝撃的だったんだからよ」
まるで子どものように話すアレクとそれをからかうリリア。
オレオルがその様子を少し羨ましく思っていると少し離れたオレオルのテントの前にある椅子の上にいたクロがオレオル達の方へやってきた。
「それはいつ頃の事だ? 」
クロがそう言った途端またアレクがピシッと固まって動かなくなる。
それを見てリリアが不思議そうにしつつもアレクが答えないならと当時からの年数を計算する。
「アレクが聖獣様の話ばっかりし始めたのはワタシ達が5歳の時だから約22年前だと思うわ」
「ふむ…なるほどな」
「当の本人がこんな調子だからもしかしたらちょっと間違ってるかもしれないけどその時はアレクに文句を言ってちょうだいね」
「わかった、その時はそうさせてもらおう」
クロがリリアに微笑んでそう返した。
クロを知らない人が見れば見とれるほどの微笑みだが、クロの性格を知っているオレオルからすると背筋がゾッとする恐ろしい微笑みにしか感じない。
ちょくちょく思ってたけど、クロって男女で態度が違いすぎるんだよなぁ。
道中でもリリアさんとかセレーナさんが転けそうになった時はそれとなく手を差し伸べてたけど、アレクさんとかアントンさんが転けそうになってても知らん顔してたし。
クロは女たらしなのかもしれない等と考えているオレオルはまだ気づいておらず、後から知る話だが、クロは強い魔力を常に身にまとっており、その魔力からの圧が魔力の見えるアレクには少々刺激が強く、つい気圧されてしまっている。
そしてクロもそれを知っていたからアレクとは意識していたし、今も少し離れた場所にいた。
だがアレク達が少々気になる事を話していたのでわざわざ声をかけてきたと言うわけだ。
オレオルはそんなクロとアレクの事情は知らない。
だが、さっきからなぜかわざとアレク達とは距離をとっている様子だったクロがわざわざこちらに来てまでフェニックスの事を尋ねてきた事が気になった。
なので何となく『クロも聖獣様に会いたいのかな』と感じそれを聞いてみることにした。
「やっぱりクロくらい強くても聖獣様には会いたいの? 」
オレオルがそう聞くと数秒キョトンとした顔をした後に遠くを見るような目になったクロがただ一言。
「もしもまた会えるなら…俺ももう一度だけあいつに会いたいとは思うな」
もう一度って事はクロもフェニックスに会った事あるんだ!
「いいなぁ…俺も聖獣様に会いたい! 」
オレオルは聖獣様に会ったことがあるという2人が羨ましくてそう言った。
「オレオル君も旅を続けていたら会えるわよ」
「そうですかね? そうだったらいいなぁ」
実はオレオルはフェニックスに会えたら言っておかなければならない事と聞いてみたい事があるのだ。
「俺、フェニックスにはあったら代わりに伝えて欲しいってじいちゃんに頼まれてる事があるんです」
「伝えて欲しい事? 」
オレオルの言葉にクロがそう尋ねた。
「うん」
なんでもじいちゃんは何度かフェニックスと会い、顔と名前を覚えられている友人関係らしいのだが、初めて会った時に『愛などとくだらない』と言われて大喧嘩になったらしい。
当然、神様が生み出し、崇められている聖獣のフェニックスに人間がかなうわけもなくボコボコにされたらしいのだがその時に羽を貰ったらしい。
『クソガキ、いつかお前が死ぬ時に死にたくないと思ったらその羽を燃やせ。それでこちらに伝わるようになっている。気が向いたら助けに来てやろう…』
じいちゃんはその言葉に違和感を感じたらしい。
だって負けてボコボコにされた上に、自分の意見を認めてくれた様子でもないのに助けてやるって言われたからだ。
だからじいちゃんは、その事を聞いたらしい。
するとフェニックスが『愛だなんだと言うやつは総じて早死する。それは羽根を燃やされた時に死にかけているお前を嘲笑ってやるためだ』と言ってさらに見下してきたらしい。
じいちゃんはそれにイラッとしたらしくて『俺が羽根を燃やすこと無く死んだらどうするんだ』って言い返したらしいんだけど『その時はその時で"助けを求める事すら出来ずに死んだ弱き者"だと思われるだけだ』とこれまたムカつく事を言ってきたらしい。
それまでの喧嘩が尾を引いていたのもあってムカついたじいちゃんは『死にたくないと思わないかもしれないじゃないか』と返したらしいのだが『そんなやつだと思ったら羽を渡したりなどしていない』と返されたらしい。
だからじいちゃんは死ぬ間際になったらその羽を燃やしてこう言ってやるつもりだったらしい『儂は後悔しとらんし、やっぱり愛は素晴らしいもんじゃ』って。
でも死ぬ数日前に急に俺にフェニックスの羽を渡して来て『やっぱりオレオルに代わりに伝えてもらうことにした』と言ってきたのだ。
「じいちゃんがフェニックスにあったら『儂は最後までこの生き方に後悔なんてなかったぞ、ざまあみろ』って…そう伝えておいてくれって」
オレオルがこのフェニックスにまつわるエピソードを初めて聞いた時は『聖獣様に会ったことあるの!? 話したこともあるなんてじいちゃんすごい! 』という気持ちが大きすぎで深く考えてなかったけど、今改めて考えてみるとただの子どもの喧嘩だ。
「それはまた愉快な話ね」
クロが険しい表情で黙り込んでしまったのを見てリリアがそう言った。
クロのそれは一体どう言う感情なんだろう…すごい顔してる…あれかな…クロさっきの口調的にブルーフェニックスと知り合いっぽかったし、知り合いのこんな話聞かされて微妙な気持ちになったとかかな?
でも、じいちゃんの話だしなぁ。
「じいちゃんの話ですし、どこまで本当かわからないですよ」
面白いこと大好きだったから、これもおもしろおかしく脚色されてるかもしれない。
だから、いつかフェニックス様にあったらその時の事がどこまでほんとなのか聞いてみたい。
そして、その時にじいちゃんの伝言もそのフェニックス様に伝えられたらいいなぁ…
あとはあれだな。
フェニックスって言えば赤いはずなのにブルーフェニックスって言うくらいだから青いんだろう。
だからなぜ青いのかも聞いてみたい。
^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─
お読み下さりありがとうございます!
この話はいい加減街につきたかったので、ちょっと駆け足で進めました。
会話少なくて読みにくく感じたかもしれません…
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