第31話 契約と呼び名

 29話が誤字脱字パラダイスだったので修正いたしました。あの時の私はなぜこれで大丈夫と思えたんでしょうか…不思議でなりません(これでn回目)

 他の話もひっそりとちまちま修正してますので最初に読んだ時と変わってたりしたら察してください。

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 あれから3日と少しが経ったがオレオルは眠ったままだった。


 あの後、魔力暴走の治療のためにブルーテイルから「とうさま」と呼ばれていた男に大量に魔力を流され、それによってオレオルが魔力酔いで眠ってしまった。


 そんなオレオルを見て数時間ほどで目覚めるだろうと思ったので、一同は待っていたがあまりにも目覚めないので、アレク達はブルーテイルと男に街へと向かおうと提案した。


 男はアレク達のその提案に『そう言えば人間共は食べ物が尽きると死ぬんだったな』と思い出し、仕方が無いのでその提案にのった。


 そしてそれから約2日半。

 街道をそれていたために道無き道をいった。


 オレオルの事は何かあった時に1番対処できるのは自分だと言って男が譲らなかったのでオレオルが眠っていた3日間はずっと男が抱っこして運んだ。


 その道中はとても静かでアレク達が男に何度か話しかけてみたが男に会話を続ける気がないために会話が続かない。


 そんな気まずい雰囲気の中とうとう帝国最後の関所が見え、セレーナを筆頭に沈黙に耐えられない性格の女性陣2人が『このまま街についてもオレオル君が目覚めなかったらどうしよう』と思い始めた頃。


 オレオルはようやく目を覚ました。


 目覚めてすぐ、周辺を見渡すとアレク達の姿が見えず洞窟の奥で死にかけていた男とブルーテイルの子どもしかいない。


 洞窟内でランプの灯りを頼りに確認した時は明るい色の様に見えた髪と鑑定された時に金色に光って感じた瞳は真っ黒になっており、あの時は合っていないと感じた黒1色の服やアクセサリーとよく合っており、同性の目からでもとてもかっこいい。


 強いて言うならオールバックにされた頭の生え際のド真ん中。

 そこから生えている一部の髪の毛の束がまるで鳥の冠羽みたいにそこだけ跳ねており、色もそこだけ青と金色になっているのがものすごく目立っているくらいだ。

 他が全て黒いからなおさらそこだけが目立って見える。


 オレオルは男のその髪型と男の手の上で丸くなって幸せそうに寝ているブルーテイルの子どもを見てふと思う。


 もしかしてこいつのそのやたらと目立つ青い髪ってブルーテイルの親を意識したとかか?

 それならそのおかしい髪型もまあ納得出来なくも…いや、無理だな。普通に変だ。


「目が覚めたか」


 オレオルが心の中で男のセット後の髪型を酷評していると男がそう言って声をかけてきた。


「え、あ、はい」


 オレオルは直前まで考えていた事のせいで気まずくなってしまい思わずどもってしまいつつもそう返事をした。


「お前の護衛の冒険者共は国境線にある関所に出国前最後の手続きをしに行ってる」


 そう言われて男が指した方をよく見ると少し先にゴルゴン帝国とザリニア王国の国境線にある関所の建物であろうレンガが目に入った。


 俺が魔力酔いで寝てしまう前にいた場所からは街道をそれていた事もあり2日はかかる距離だったはずなので、俺は少なくとも2日以上は寝ていたことになる。


 魔力暴走状態だったから仕方がないと言えばそうかもしれないが、意識のない人は重たい。

 俺は体が小さいがそれでもここまで運ぶのは大変だったはずだ。


「あの…ご迷惑をおかけしました…ありがとうございます」


 誰が自分を運んでくれたのかわからないが、ここまで一緒に来ているという事はこの男にも何かしらの迷惑はかけてしまっているだろう。


 それに少なくとも次の街までは一緒でもあるだろう。


 そう判断したオレオルは眠る前の男のアレな言動があったので内心複雑ではあったものの自分から揉めに行く気もなかったので男に頭を下げた。


「あぁ、俺はそうでも無かったが冒険者共は大変そうだったぞ」


 男は他人事の様な顔でそう言うと続けて「お前が食料の肉を全部抱えたまんま3日も寝やがったせいでな」と言った。


「3日!? それに肉!! そうだった! 俺が預かってたんだった!! 」


 しかも俺のリュック俺しか中身取り出せないからせっかくとったファイヤーオストリッチの肉まだあるのに別の物を食べ…うわぁ…ものすごく申し訳ない…!


「ピ…? (う? )」


 オレオルが申し訳なさに悶えていると男の手の上で丸くなって寝ていたブルーテイルの子どもが目を覚ましてオレオルを見た。


「ピ、ピピィ! ピ! (おきてる! ふぃーはふぃー! よろしく! )」


「え、よ、よろしく? 」


 えぇ?


 鳥が話してる…?


 気のせいかな。

 気のせいだよな。


 きっとまだ寝ぼけてたんだ。


 よろしくっていう感情が伝わってきたのを本当にそう言っているのと勘違いしたんだきっと。


「ピ! ピピィ、 ピ! (ちっちゃいこ! とうさまたすけてくれて、ありがと! )」


 ち、ちっちゃいこ…俺、幼鳥に『ちっちゃいこ』って言われた…?

 しかも気のせいじゃない…がっつり喋ってる…


 気のせいであって欲しかった。


 フィーと言うらしいブルーテイルが実際に話しているピィピィという鳴き声に重なるようにして人間の子どものものの様な幼い声がオレオルの頭の中に直接響いた。


「鳥が喋ってる…」


「それはお前が俺と契約したからだな」


 男はしれっとそう言うと続けて「そういえばその事については言ってなかったな」と呟いた。


「契約…? 」


 そういえばこいつ!

 俺が寝てしまう前に契約するとか何とか言ってた!!


 もしかして現在進行形で契約関係継続中!?

 切れてないのかよ!? 嘘だろ!?


「なんだ、嫌なのか? 」


 男が意外そうにそう返してきたがオレオルは当然だと思った。

 誰だって知らない人から契約しろと言われたら断る。当然の事だ。


 それなのに何をそんなにこいつは意外そうにしてるんだ?


「勝手に契約されて喜ぶやつがいるとでも? 」


 俺おかしい事言ってないよな?

 そのはずなのになんでこいつとそこのブルーテイルは俺がおかしいみたいに見てくるんだ!?


 ふわふわした羽の青い小鳥が丸い目をぱちくりしている様子は可愛いが中身は結構いい性格していそうだとオレオルは思った。


「じゃあお前は死にたかったのか? 」


「はぁ!? そんなわけないだろ!? 」


 さっきからこいつは何を言ってるんだ。言葉が通じているはずなのに通じてない…


 オレオルは男の言っている事がわけがわからなくて頭の中がハテナでいっぱいだった。


「お前の魔力暴走を止める時、お前の魔力量が多かったからさすがの俺でも厳しくてな、契約した事によってできる繋がりを利用させてもらった」


 たとえオレオルに魔力量の多さが無かったとしても、あの時男は直前まで穢れに晒されていた事で死にかけていた。


 そのために少し前までその呪いの影響で魔力が枯渇していた。枯渇していた魔力はオレオルの[聖命復活の火種]の力もあり急速に回復していたが本調子の時と比べたらそれこそ天と地ほどにも差があった。


 そんな状態ではさすがの俺でも正攻法でお前の魔力暴走を対処しきるのはかなり厳しかっただろうと男は言った。


「それは…えっと、ご迷惑をおかけしました…。と、ところで、どういう契約条件でその繋がり? を作ったんですか? 」


「俺がお前を護る、だ」


「いつまでですか? 」


「俺が死ぬまでだな」


「は? 」


「別にいいだろ、お前があの時蒼い火で俺を助けてなけりゃ俺はあそこで死んでたんだ、なにも変わらねえ」


「いやいやいや、変わらなくはないでしょうよ!? 」


 やばいな!? こいつ!?

 いろいろどうなってんだ!?


「それにそれくらいの条件にしないと繋がりがペラペラすぎて途中で切れてお前死んでたぞ? 死にたかったのか? 」


「え……そう、なんですか…? 」


「そうなんだよ」


 なるほど…仕方なかったのか…

 それならまあ…仕方なかった…のかな。


 それならそうとそれを先に言ってくれよ!

 無駄に混乱したじゃん!


 クロは納得しつつもなにかに怒っている様子のオレオルを見て『こいつ今のこの説明で納得したのか…詐欺なんかにすぐコロッと騙されそうだな』と思った。


「そんな事よりお前はそもそもなんで魔力暴走なんかしてたんだ」


 男曰く、よっぽど精神にダメージを負わないと操作しようとした魔力が暴走状態になどならないらしく、男がオレオルに自覚症状がないのは鈍感すぎると言った。


「その鈍感さは異常だ、自覚した方がいい」


 男は「じゃないとそのうち大変な事になるぞ」と真剣な表情で脅す様に言った。


「それとお前の護衛だって連中にも道中の事はいろいろ聞いたが、お前は自己評価が低すぎる。謙遜は美徳などと言う連中がいるが俺から言わせるとそんなのはクソだ」


 男は過去にあった嫌な事を思い出した様子で眉間に皺を寄せる。


「自分はこの程度だという考えを捨てろ、お前にその考えはまだ必要ない」


 この男…初対面の俺の事を散々バカにするような言動だったが実は結構評価してくれてもいるのか?


 だったら素直に言ってくれたらいいのに…


「だが、勘違いはするなよ…自分の力を信じる事と、自分の力を過信する事は違うからな」


 この男何が言いたいんだろう…

 なんで初対面だった人にいきなり説教されてんだろう…


「……なんか学校の先生みたい」


 真面目にしてると普通に顔がいいから男の俺から見てもかっこいいな…こいつ。


「人生の先輩からのありがたい教えだ、忘れんなよ」


 さっきまでの真面目で真剣な顔とは真逆の、偉そうで、かつ、こちらをニヤニヤと笑ってバカにしてきている様な態度に急に戻った男がそんな事を言ってきた。


 あ、うん、ちょっとでもかっこいいと思ったのは勘違いだったな。


 ずっと真面目にしてたら見た目だけなら俺が憧れるかっこいい大人の男そのものって感じだったのに…


 前言撤回、気のせい…というか血迷ってたわ。


「……そういえばお前、名前はなんて言うの? 」


 契約の内容からして不本意ながら長い付き合いになりそうだと思ったので名前がわからないのは不便だと思ったオレオルが男にそう尋ねた。


「名前…? ねえよ、そんなもん」


 すごくどうでも良さそうにそう言った男にオレオルは違和感を感じた。


 どんな者でも名前はあるだろと思ったからだ。


「名前がないってそんなわけないだろ」


「過去に俺の事を呼ぶやつはいたがその時の名は全て捨てた。好きに呼べ。特別に許してやる。」


 男はそう言って先ほどから二人の会話を邪魔しないようにじっと大人しくしていたフィーに「放置にして悪かったな、偉かったぞ」と褒めて指先でほっぺのあたりを撫でた。


「ピィ? (おはなしおわった? )」


「ああ、こいつはお前よりバカそうなんでな…長期戦で行くことにした」


「ピピィ? (ばかなの? )」


「残念ながらな」


「ピピィ…(それはとうさまたいへんだね…)」


「全くだ」


 何が大変なのかはサッパリわからないがバカにされていることだけはオレオルにもよくわかった。


 そっちがそうくるならこっちにだって考えがあるんだからな!


「お前がそんなに名乗りたくないって言うならそれでいい! 」


 せいぜいこの男が名乗りたくなるような変な名前で呼んでやろうといろいろ考えたオレオルはそれにピッタリの呼び名を思いついた。


「お前が名乗らないなら、その代わりにお前の呼び名は今からクロだ! それが嫌ならちゃんとした名前を──「それでいい」──は? 」


「それでいいって言ってんだ」


 え、いいの?

 こんなペットの犬っころみたいな安直な名前で?

 本当に言ってる?


「お前それでいいのか」


「別に呼び名なんざなんだって変わりゃしねえからな」


 名前不明の男改めクロは心底どうでも良さそうにそう言った。


「それにしても『クロ』か…お前ネーミングセンスねえな」


「な!? 」


「俺はお前に拾われた捨て犬か何かか? 」


「う、うるさい! 」


 人につけるような名前じゃないのは俺だって100も承知だよ!


 変な名前にしたらお前が自分から名乗ってくれると思ったから変なのいっぱい考えてたのに、なんで一発目であっさり許すんだよ!!


 仮にも自分の名前だろ!?


 もう少しこだわれ!!


 オレオルは内心でそんな文句をずっと思っていたが、クロにはその考えがバレバレのようでオレオルの事を見て鼻で笑った。


「しょうがないから拾われてやるが、この俺を思い通りに動かそうなんざ1000年は早い。精進しろよ雛鳥。」


 クロは幼鳥のフィーを引き合いに出してオレオルの事をそう呼ぶと再び鼻で笑ってきた。


 こ、こいつ…めちゃくちゃむかつく!

 これだけ嫌味なやつなら絶対友達少ないだろ!



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 お読み下さりありがとうございます!


 雛鳥→産まれてから羽が生えそろうまでの間の子

 幼鳥→ふわふわの幼羽が生えそろってから成鳥になるまでの間の子

 らしいです。

 専門家では無いので間違ってたら教えてください。


 そして、ようやくクロ合流まで来ました!

 ここからはしばらく伏線を撒く必要も無いので

 テンポアップ出来たらなと思ってます(思ってるだけになる可能性もあり)

 例によってこの話もあとからひっそり修正してるかもしれません。


 そして最後のオレオルの言葉ですが、オレオルも友達がほんとに少ないので特大ブーメランだったり…(笑)

 クロとオレオルはここから徐々に信頼関係を築いていけたらいいなと思ってます。


 実はクロ内心では少しだけ焦ってたりしますが、それを皆様が『あぁ、そういうことか』と察せれる様になるほどストーリーが進むのは遥か先になりそうな予感…


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