第317話 幕府の流通網
西暦1596年1月。和暦では師走となっている。現時点における幕府の航路と陸上の街道は世界規模に達していた。先ず環日本海だが、山陰や北陸と栄寧(ウラジオストク)の日清航路。北海道から樺太を経て沿海府へ至る北前航路。栄寧から沿海府を結ぶ沿海航路。博多から対馬と竹島を経由して栄寧へ至る九清航路。以上の4航路となる。
明国・遼東方面については、博多から対馬・済州島・仁川・煙台・大連・を経由し営口へ至る渤海航路。博多と上海を結ぶ鑑真航路。営口から大連・煙台・天津・上海・厦門・潮州・香港を経由しマカオへ至る北南航路。九州から琉球・台湾・カガヤンを経由してマニラへ至る呂宋航路。以上の3航路。
東南アジア方面は、マニラからプレイノコール(現ホーチミン)やコンポンソムを経由してバンコクに至る曼谷航路。台湾から香港・澳門・海南島・ハイフォン・ツーラン・プレイノコール・曼谷へ至る越南航路。マニラからテルテナ・マカッサル・スラバヤ・ジャカルタ・ジャンビを経由して昭南に至る昭南航路。バンコクからパタニを経由して昭南へ至る曼昭航路。以上の4航路。
インド洋方面は、昭南からマラッカ・クアラルンプール・ペナン・プーケットを経由してダゴン(現ヤンゴン)へ至るダゴン航路。昭南からマラッカとアチェを経由してチェンナイ(マドラス)へ至る印昭航路。チェンナイからゴアやボンベイを経てカラチへ至る西印度航路。カラチからホルムズを経由してバスラへ至るペルシャ航路。ゴアとスエズを結ぶゴア航路。ホルムズとスエズを結ぶアラビア航路。ジャカルタから東アフリカへ至るジャカルタ航路。この他に東アフリカ航路がある。以上7航路。
これら以外にも日本と龍門(サンフランシスコ)経由でアカプルコへ至る北新亜航路。龍門から呂宋・台湾・琉球経由で日本へ至る南側新亜航路。西新亜航路。東新亜航路。西豪州航路。東豪州航路。北大西洋航路。南大西洋航路。地中海航路。カスピ海航路。西アフリカ航路。以上11航路。
また、陸上では黒龍江、松花江、遼河、メコン川、ヴォルガ川、ドン川、大陸公路、遼東や清州の諸街道などを管轄下に置いている。このような世界規模のネットワークと流通を完成させつつあった。
現在の資源・産物の調達地は以下の通りであるが、アガルタ州などはまだ初期の段階である。茶・珈琲・カカオ・ゴムなども同様で収穫するまでに至ってない国・地域も多い。
金 日本・アラスカ
東和州(カリフォルニア州)
ペルー・豪州・沿海州北遠・フィジー
パプアニューギニア・バイカル湖周辺
銀 日本・ペルー・アラスカ
銅 日本・東露斯亜・アガルタ州・東和州
ペルー・チリ・パプアニューギニア・呂宋
鉄 日本・遼東・遼西・明・豪州
南印度占領地域・メキシコ・ペルー
鉛 日本・遼東・上海・明・アラスカ・豪州
錫 日本・清州・ペルー・マレー半島
スマトラ島・ジャワ島
石灰石 日本・シャンバラ(ミャンマー)・沿海州
遼東・清州・明・エジプト・トルコ
モロッコ
珪石 日本・マレー半島・スマトラ島・ジャワ島
カリマンタン島・豪州・シャンバラ
ソーダ灰 遼西・トルコ・エジプト・イスパニア
新亜大陸
硝石 日本・チリ・印度・エジプト・イスパニア
硫黄 日本・新亜大陸・アガルタ州・フランス
ペルシャ・スマトラ島・ジャワ島・遼西
明
岩塩 蒙古・アガルタ州・ペルー・東露斯亜
シャム
木材 日本・新亜大陸(アメリカ大陸)・豪州
マレー半島・スマトラ島・ジャワ島
皮 沿海州・清州・遼東・遼西・蒙古・明
越南・アガルタ州・東露斯亜・フランス
イングランド
羊毛 遼西・蒙古・アガルタ州・イングランド
トルコ・モロッコ
綿 日本・明・印度・新亜大陸・アガルタ州
エジプト・トルコ・イスパニア・モロッコ
絹 日本・遼東・清州・印度・アガルタ州・明
エジプト・トルコ
煙草 日本・遼東・清州・スマトラ島
マレー半島・呂宋・シャム・カンボジア
シャンバラ・エジプト・アガルタ州
印度占領地域
砂糖黍糖 日本・台湾・呂宋・明・シャム
カンボジア・ジャカルタ島・印度
新亜大陸・エジプト
甜菜糖 日本・遼東・清州・沿海州・新亜大陸
アガルタ州
製紙 日本・台湾・清州・沿海州・明・呂宋
シャム・新亜大陸・カンボジア・ジャワ島
マレー半島・スマトラ島
パプアニューギニア
石炭 各地
ゴム 印度・マレーシア
茶 日本・台湾・明・カンボジア・印度
スリランカ・スマトラ島・ジャワ島
珈琲 カンボジア・スマトラ島・ジャワ島
印度・エチオピア・イエメン
新亜大陸
カカオ カリブ地域・エクアドル・コロンビア
ジャワ島・パプアニューギニア
呂宋・カンボジア
幕府御用船を建造しているのは日本・台湾・明・呂宋・シャム・カンボジア・スマトラ島・新亜大陸で製造している。完成品の調達先はフランス・ネーデルラント(オランダ)・イングランド・スウェーデン・ジェノヴァ・トルコなどの国だ(大砲もそれらのに国へ発注)。
織田幕府総裁幸田広之の総裁役宅は官房と化しており、織田家や幸田家の家臣、或いは商人・僧侶・学者を問わず日本一のテクノクラート集団である。
各省庁役人、織田家や他家の重臣、有力商人、他国の公使などの出入りが多く、まさに幕府の心臓だといえよう。広之は皆を集めた。
「皆の者、日々の役目ご苦労である。本年もいよいよ師走となり忙しいかと思うが、数字だけは間違えぬよう頼む。さて欧州からは朗報が届いておるが、この先こそ正念場といえよう。その他の外地も同じゃ。特に茶・珈琲・カカオ・砂糖・煙草はいくら作っても足りぬ。茶・珈琲・カカオ・煙草は作れるところが限られておる。寒い国へそれらを売りまくる」
「大納言様、茶は分かりますが、珈琲とカカオはそれ程売れるのでございましょうか」
「必ず売れるであろう。珈琲じゃが、アラビアやトルコなどでは銅の柄杓へ粉と湯を入れて煮立たせるそうでな。既に新たな作り方を考えておる。カカオで作りしショコラも前に食してもらったが、固める他に飲む方もいける。カカオと大麦などで作る味路(スイスのあれです)という飲み物を考えておるが、間違いなく美味なはず……」
「それと地震は誠に来るのでしょうか」
「分からぬ。さる巫女へお告げがくだされたそうじゃ。誠か分からぬが備えあれば憂い無しであろう。北条征伐の翌年に起きた天正13年(西暦1586年)の大地震は美濃・尾張・伊勢が特に酷かった。しかし、此度来るやも知れぬ大地震は京の都や大坂も同様の害を受けたとしても持ち堪えられるよう備えるのじゃ。さて、本日より茶や茶菓子など沢山用意しておる。役務に励んでくれ」
全てを秘匿するのは無理があるので、困ったときのお告げ頼みにする広之であった。
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