第304話 オーツミルクと麦麹の甘酒
エテルニタスやアストラで大人気の飲み物があった。ラクテラエとラクヴィーテである。両方ともラテン語であり、ラクテラエは大地のミルク、ラクヴィーテは生命のミルクという意味だ。
ラクテラエは麦乳で、現代だとサステナブルな食品としてもてはやされており、恐らく環境活動家のグレタさんも好物であろうオーツミルクに他ならない。
もう一方のラクヴィーテは甘酒である。ただし、日本のような米麹や酒粕で作ったものではない。麦麹を使った甘酒だ。兵士の栄養補給として、本来ならば牛乳を飲ませたいが、常に新鮮な牛乳は大量確保出来ない。そのためオーツミルクと甘酒に白羽の矢が立った。
欧州に来て以来、幕府の将兵にはお馴染みの飲み物だ。特にオーツミルクで作るミルクティーはご馳走であり、酒並みに兵士の指揮を高めた。
逆に言えば、オーツミルクのミルクティーが頻繁に出ると何か危ない任務や大きな出陣だったりする。嬉しい反面、少し緊張感がほとばしった。
オーツは燕麦だが、寒冷地に強いためウクライナやロシア南部でも生産されており、調達は容易という事もあって、大量調達している。
イスパニアへ遠征した際も兵士の主食は麦類の粥であり、ほぼ毎日食べていた。ロシアやウクライナではカーシャといわれる粥を食べる。小麦、大麦、デュラム小麦、オーツ、蕎麦、黍、米などを使う。
ちなみにオーツの場合だが、先ず皮を剥いてホール状態にする。これを挽き割りにして蒸した後、ローラーで潰したのが、インスタントオーツだ。また、インスタントオーツを粉にするとオーツ粉となる。
インスタントオーツはそのまま食べる事も出来る上、煮込む場合は2分あれば十分だ。オーツミルクにする場合は粉に水を加え撹拌するだけでいい。陣中食としては、これ以上のものはないといえる。
武将級が食べる場合は牛乳やオーツミルクで煮込み、ディーツ(ナツメヤシ)、バター、チーズ、蜂蜜などが入ったり豪華だ。これに、漢人が作る餡餅(シャーピン)や薄焼きパンも添えられたりする。
そして、ラクヴィーテこと甘酒だが、麹を作る必要から、長期に及ぶ滞在時とかに作られた。しかし、エテルニタスのような都市では常に作られて、提供される。
甘酒は飲む点滴ともいわれており、ビタミン、ブドウ糖、必須アミノ酸などが豊富だ。そのため、疲労回復に効果があり、ロシア人やタタール系労働者の大好物となっていた。
牛も大分集まってきたが、まだ十分とはいえない。牛乳を全員へ飲ませる程はないため、バター、チーズ、ヨーグルト、パン作りで消費されてしまう。
ラクテラエとラクヴィーテは欠かせない飲み物となっていた。
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