第303話 幕府欧州進出と言葉の壁
エテルニタスではフランスとイングランドの支援で大学を創設する準備が行われていた。日本人の生徒は想定しておらず講師や学生の大半は新教徒である。
フランス人、イングランド人、ネーデルラント人(オランダ人)、ドイツ人などだが、ユダヤ人、モリスコ(イベリア半島に居住していたイスラム教徒の末裔)、イタリア人も僅かにせよ含まれる。
また、語学の学問所が作られた。日本人が各国言語を学ぶ各科とラテン語で日本語を学ぶ科に分別されている。日本人はフランス語、イングランド語、イスパニア語、イタリア語、ドイツ語、イスパニア語、ラテン語、ロシア語、ネーデルラント語(オランダ語)、ゲール語(アイルランド語)、テュルク語、ペルシャ語、アラビア語を学ぶ。
現状の言語コミュニケーションについては丹羽長秀たち北周り組と脇坂安治の南周り組で異なる。長秀たちは蒙古のアスト部とハラチン部を頼りにしていた。
蒙古人経由で各テュルク系を介しロシア人、トルコ人、ペルシャ人などと会話が行われており、十分とは言い難い。
蒙古は世界帝国を構築していただけあって、多様な民族ルーツが存在する。例えば、アスト部は元々カスピ海東岸にいたアラン人が祖であり、キリスト教徒だった(東方正教から後にネストリウス派)。
ビザンツ帝国圏の住人だったので、かなり怪しげにせよ片言のギリシャ語、テュルク系言語、ペルシャ語などを話せる者が居る。
また、ハラチン部も元はキプチャク高原に居住していたテュルク系民族なので、多少なりともテュルク系諸族と会話が最低限成り立つ。
そのため一昨年より、アスト部とハラチン部から選ばれた者へ日本語を教え、通訳に育てあげた。これらの者は日本語の上達が必須のため、常に日本人と生活を共にしている。
一方、安治たちの場合はジョホール人の同行者にサンスクリット語とトルコ語の話者が居た。無論、これらの者に日本語を教え込んだ事はいうまでもない。
さらに、ムガル帝国と交流した際、ペルシャ語の話者を招き入れた。エジプトへ上陸した後は、トルコ語の通訳が活躍。そして、エジプト人やトルコ人へ日本語を教えつつ、安治たちも必死でアラビア語やトルコ語の習得に励んだ。
ウクライナ出身の開放奴隷からウクライナ語、さらにクリミア・ハン国より、ロシア語の話者を招き入れ、ロシア語も少しだけ話せる。
フランス語、イタリア語、ラテン語、ギリシャ語、イスパニア語、イングランド語、ネーデルラント語、ドイツ語なども習得(全員が喋るわけではない)していった。
言語や学問の他に幕府が力を注いでるのは画家を集める事だ。安治は以前よりフランスへ画家を集めて送るよう依頼していた。イスパニア、イタリア、ドイツなどからも集まりつつある。
各地の動植物、建築物、風景、人物などを描かせるためだ。日本人や漢人の絵師は写実的な技法に長けていない。とりわけ現在、西欧州はルネサンスの影響により写実的な絵画が隆盛である。
集まってきた画家は破格の高待遇であり、絵を描く傍ら茶房へ集まっては交流していた。その画家たちへ少なからず日本よりもたらされる版画が影響を与えつつある。
また、建築家や医師も集められていた。こうして、建築途上のエテルニタスには欧州や西アジア各地より、優秀な学者、職人、芸術家が続々と訪れている。
急速にアガルタとエテルニタスの名は各地へ広まりつあった。
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