第288話 豪州開拓

 西暦1595年5月。織田幕府による豪州(オーストラリア)の開拓が進んでいた。あまりにも大きい上、当面は金や鉄などの鉱物資源の採掘が主である。


 特に鉄は現代でいうところの西オーストラリア州へ集中していた。不毛な台地での採掘を進めるため、幕府はジャワ島から大量の人や物資を集めてはダービー経由でローブ川上流へ送り込んだ。


 そこには豊富な鉄鉱石が眠っている。さらに、豪州の西海岸線を南下し、パースあたりに拠点が作られた。ここでは、じゃが芋、薩摩芋、とうもろこし、麦などが栽培されている他、鶏、豚、羊が育てられている。


 東南アジア各地やインドからも買い集めた馬はパースへ送って放牧した。河川も無い、不毛な荒野の果てにある鉱山開発は馬が無い限り厳しい。


 採掘した鉄や金などを何とか人力にて河川まで運び、簡単な一次加工を行い、河口付近からバンテン王国へ運ぶ。大量の鉱物資源は魅力的であるが、西豪州の開発は時間を要する。


 西豪州に比べ比較的容易なのは東部だ。北からケアンズ、ブリスベーン、メルボルン、アデレード、タスマニア島などへ開拓団を送り、先ずは食料生産を地味に行っている。


 そして、徐々に東南部の鉱物資源を採掘するなど、こちらも時間がかかってしまう。豪州がこれまで、あまり荒らされなかったかは地図を見れば一目瞭然である。


 インドネシア諸島やパプアニューギニアから豪州北部までは比較的近い。それでも相応の距離がある。折角、渡海してもほぼ何も無い。


 得るものはほぼ無い以上、そこから先へ進むかといえば、否であろう。仮に進んだとしても、砂漠などの乾燥地帯が途方もない規模で広がっているのだ。


 幸田広之は現代人なので豪州にどれだけの鉱物資源が眠り、ウランさえある事を知っている。いくら金を使っても必ず元は取れると知っていた。


 開拓民の苦難は相当なものである。それでも幕府御用船がバンテン王国、シャム国、台湾、インドから、米、麦、豆、塩、砂糖、茶、酒などを運んで来た。


 農耕開拓地などでは、台湾と同じ形式により、当面は芋類、とうもろこし、麦を育て、水稲栽培は後回しだ。原住民に対しては北海道と同じ方式である。


 ちなみに以前はアボリジニと呼ばれたが、侮蔑的意味合いがあるとして、現在では差別用語のような扱いだ。結果、アボリジナルと呼ばれている。そのへんは、ブッシュマンがサン人に変わったのと似たようなものであろうか。


 基本、好きにさせつつ、近隣の集落へ酒、茶、砂糖、煙草などを贈って友好関係が築かれていた。無論、自然の環境で暮らしてきた人たちには麻薬のような破壊力がある。


 豪州開拓団は他にも現代でいうところのソロモン諸島からニュージーランドあたりの島も探索していた。


 



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