第285話 イスパニアの落日①

 西暦1595年3月(天正23年2月)。アフリカ南端を越えた織田信勝の艦隊は北上。途中で遭遇したポルトガル船は拿捕するなどしつつ、イスパニア領カナリアス諸島(カナリア諸島)を占領。


 さらに、モロッコへ寄港した。一方、イスパニアは日本の新たな大艦隊襲来の報告に大混乱となっている。


 イスパニアでは取り付け騒ぎが起きており、金融不安どころの話ではない。先立って、通算4度目の破産宣告を行っており、金融や経済は破綻状態へ陥った。


「陛下、我がアルマダ(無敵艦隊で知られるがスペインでは至福の艦隊といった意味合い)は三方面からの敵と対峙する形となります。フランスのトゥーロン港には、フランス艦隊、イングランド艦隊、ネーデルラント艦隊が集結。また、フランス軍がカタルーニャ方面へ大軍を進軍させており、こちらも予断を許しませぬ。さらに、チュニスから日本とトルコの艦隊がモロッコへ停泊しており、海峡」


「おのれ、異教徒と結ぶとは恥知らずな連中め……。神の怒りによって燃え尽くされてしまえ。トゥーロンのフランス艦隊、イングランド艦隊、ネーデルラント(オランダ)艦隊、そして地中海の日本艦隊とトルコ艦隊、モロッコの日本艦隊……。これらを合流させてはならぬ。所詮は烏合の衆。各個撃破あるのみ」


「どれを先に……」


「先ずはカディスの主力艦隊で長旅で疲れている日本艦隊を叩き潰す。その後、モロッコの日本艦隊やトルコ艦隊をカディスの艦隊とカルタヘナの艦隊で挟み撃つ。最後にバルセロナの艦隊を加えトゥーロンの艦隊と戦う」


 こうしてフェリペ2世は異教徒(すなわち日本人のこと)殲滅を掲げ大号令を発した。これに対し、先に動いたのは織田信勝艦隊だ。地中海へ抜けると見せかけ、カディスのイスパニア艦隊へ迫った。


「さて、イスパニアは我らがラ・メディテラニ(地中海)へ抜ける前に叩きたいところであろう。フランスの密偵から敵艦の数も判明しておる。机上演習の通り動けば勝てよう」


 信勝は諸将へ告げると湯漬けを流し込んだ。そして2時間後、イスパニア艦隊と接近した時、信勝艦隊は一斉にUターンをする。


「ここが勝負どころじゃ、何としても敵を誘い込まねばならぬ。食いついてくれれば勝ったも同然」


 信勝艦隊は追りくるイスパニア艦隊の進路を遮るように再び進路変更した。そして、後方の艦隊はターンすると見せかけ、追ってくるイスパニア艦隊の左舷から猛烈な砲火を浴びせながら進んだ。


 V字上に包囲されたイスパニア艦隊は次々と被弾して航行不能へ陥った。イスパニア艦隊の先頭集団に前方から至近距離で放たれたカロネード砲(もどき)の破壊力は凄まじい。


 動きを封じられたイスパニア艦隊は不規則な動きをしつつ離脱。その後、信勝艦隊はモロッコの湊へ寄港。負傷者の手当や補給を済ませ、地中海へ進入したのである。


 こうして合流した幕府の艦隊はカルタヘナのイスパニア艦隊を撃滅。トゥーロンのフランス艦隊、イングランド艦隊、ネーデルラント艦隊もバルセロナのイスパニア艦隊を破った。


 セビリア半島とモロッコに挟まれた海峡両端やカディスを占拠した連合軍はセビーリャへ進撃。フランスにはフリントロック式のマスケット銃とライフルマスケット銃が3000丁、さらにカロネード砲が供与された。また、各国の将軍には日本刀も贈っている。


 その頃、カタルーニャ州では民衆の反乱に迎えられつつ、フランス軍がバルセロナを目指していた。

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