第281話 近衛前久、カイロに到着
「殿、近衛様御一行が到着いたしました」
「承知した」
丹羽長秀は島清興(左近)にそういうや門前へ向かう。以前から、カイロには近衛前久を始めとする公家たちが向かっているとの報も届いており、準備は調えられていた。
「これは龍山様、かような地までよくぞご無事で」
「これは五郎左殿、瀋陽以来となりますな。麿たちは船旅でしたが、なかなか楽しかったでおじゃる」
前久たちは茶で饗されたが、羊羹も添えられている。さらに、給仕する女性はエジプトの民以外にウクライナ系、カフカース(コーカサス)系、トルコ人、ロシア人、ウズベク人、インド人、シャム人など多様だ。
肌の白い金髪も居ればアフリカ系の褐色の肌など、見とれる前久たちであった。しばし休憩すると、風呂に案内されたが、トルコ式のハマムである。
昭和の時代、トルコ風呂などという名称があり問題となった。しかし、ハマムは日本でいえばただの銭湯でしかない。語源はアラビア語で“温める”や“熱する”という意味だという。
これが、どうして性サービスを意味するトルコ風呂になったのか……。恐らくは西洋の歪んだイメージにあるといわれる。
19世紀以前のロンドンにはトルコ式浴場が多数あり、性サービスが行われる場合もあったという。現在でも英国には豪勢なスパ(健全なもの)へハマムという名称が普通に使われている。
またドイツには現在でさえFKKといわれる性サービスが行われるサウナも存在しており、それらのイメージが暴走した結果、日本でトルコ風呂という名称になったのかも知れない。
本来のハマムだが、蒸し風呂であり、前久たちも違和感なく汗を流し、寛いだ。そして風呂上がりには食事が用意されていた。インド圏での食事を考慮し、和食だ。
ナイルパーチの塩麹焼き、豆腐田楽、湯豆腐、ナイルパーチの酒粕汁、白米(ジャポニカ種)などシンプルなものだが、前久たちは喜んで食べた。
翌日はピラミッド見物に行き、興奮した事はいうまでもない。晩にはトルコやカフカース地方などの料理が出された。
肉の串焼き、鶏の丸焼き、牛乳やチーズを使ったシチュー、現地風にアレンジされた餃子、ナイルパーチのフライ、ピラウ(ピラフ)、トルコのパンなどだが、日本人向けにアレンジされており、香辛料弱めとなっている。
「お味の方は如何でございましょうか」
「五郎左殿、どれも美味でおじゃる。ところで相談が……」
「イスパニア征伐ですかな」
「ほぉ、流石は五郎左殿。話が早い」
「無論、龍山様たちは我らが命に替えてもお護り致しますゆえ、ご安心召されませ」
「これは何とも頼もしい。イスパニア、フランス、イタリアなど如何なる国か、この目で是非とも見とうおじゃる」
「龍山様の御前とあらば将兵も励みになりましょう」
長秀の言葉に喜ぶ前久であった。こうして数日後、長秀たちはナイル川を船で北上。地中海へ出るや北アフリカ沿岸を西に進んだ。
長秀や脇坂安治は船中でローマ教皇と各国のが如何なる場関係か……。王が選挙で選ばれる国さえある事など、色々含めて説明した。
イスパニアとの戦いが迫る。
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