第277話 現代の織田家御用学者

 幸田広之、犬神霊時、肉山298、竹原元教授による過去というよりはほぼ異世界の国家戦略についての協議が行われていた。


「一応、皆さんの事は信孝や三法師改め信之に話してあります。織田家の御用学者という事で俸禄が出ました」


「幸田氏、拙者織田家の家臣みたいなものでござるか」


「家臣ではないけど。給料は出るよ」


「いくらでござるか」


「海外用の金貨500枚」


「幸田君、金何グラムくらいかな」


「1枚2匁(7.5g)くらいですかね」


「幸田さん、つまり年に3.75kgですか……」


「竹原さん、そういう事になりますね。少ないですか」


「いや、とんでもない。脱税の心配しなきゃならないですね」


「そのへんは俺の得意領域だから。心配要らないよ。換金含めてうまく処理するんで」


「幸田氏、信孝殿と信之殿によろしくでござる」


「298君、良かったな。これで毎週コンカフェでクリュッグ開けられるぞ。モテモテだろ」


「いや、それ程でも」


「幸田君、そうなったからには報酬分の仕事しないとだな」


「よろしくお願いします。それと、酒をもっと買ってこいとうるさくてかないません。チキンラーメンもお気に入りだし。無理やり作らされましたよ」


「幸田氏、まさか伊府麺でござるか」


「それだよ。麺を揚げた後、醤油ダレくぐらせて乾燥させたけど、やはり再現はイマイチだね」


 そういうと広之は過去から持参した金貨を犬神に渡した。この場に居ない鬼墓の分も含まれている。広之が持参した紙に受領したむねの署名を行う。そして、過去における日本の海外領土や派兵状況を示した図面コピーが差し出された。


「来年の春に織田信勝の艦隊がモロッコを経由してフランスへ行きます。脇坂安治率いる幕府地中海艦隊と合流した上、フランス艦隊、オランダ艦隊、さらにイングランド艦隊も参加する可能性が高くイスパニアとポルトガルの海軍や制海圏へ致命的な打撃与える予定でして……」


「ジブラルタル海峡抑えればフランスはイタリアへ攻勢掛けれるな」


「犬神さん、その後幕府の戦力補強してサルデーニャ、ミラノ、ナポリ、シチリアといったイスパニア領を削りたいんですよ」


「来年の補強はどうなってるの?」


「立花宗茂などに3万の兵で遼東へ渡らせてます。そのまま西へ行かせますので来春には地中海へ到達するはずか、と」


「幸田さん、いよいよ立花宗茂の出番ですか」


「大友潰した際、織田家の直臣となりまして、ついに大舞台です」


「イスパニア軍と立花宗茂とか凄いカードでござるな」


「イスパニア追い詰めて放し討ちとかしそうですね」


「竹原氏、放し討ちって何でござる…」


「肥後の一揆を鎮圧した際、宗茂の家臣と隈部一族(一揆首謀者)が12人揃えて斬り合いに及んだという記録あります。本来なら城を攻め落とした後なので、そんな事しなくてもいいんですけど。隈部の家名と名誉を尊重した行為だとか……」


「宗茂、怖すぎでござる」


「確か、それで宗茂の家臣も何人か死んでるだろ。いい迷惑だよな。立ち会った浅野長政もドン引きしたらしいよ。まあ、畿内の方からすれば宗茂や島津とか理解の範疇超えるだろ」


「そのエピソードは信孝や長秀に聞かせましたが、やはりドン引きでしたよ。凄いけど死んだ家臣可哀想だって。でも子々孫々に伝わる名誉だからいいっか……みたいな」


「麻痺というか現代人とメンタリティ違うでござるな」


「だいぶ改善したけど、未だに順番や座る位置など物凄く神経使うよ。家格とかも当然うるさいし」 


「おっと、そうそうフランスといえばノストラダムスじゃないか幸田君。16世紀の人物だぞ」


「フランス的にはミシェル・ド・ノートルダムですかね。一応、書籍集めるようには指示してあるんですが……」


「俺も散々商売で利用したけど、正直予言の能力なんかなかったと思うよ。でも、この際だから、彼の予言集を利用して実現させるという手もある。それと別口でフェリペ2世やエリザベス1世の死も予言しちゃうとかさ。パニックになるぞ」


「流石、犬神さん。そんな事、思いつかなかった」


 こうして大神が所有するノストラダムス関連の資料を皆で読み込むのであった。


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