第191話 幸田広之、現代に戻る④
いよいよ最後の日になった。朝早く起きた幸田広之はミロを飲みながら、検索のラストスパートへ入る。犬神霊時が出て行った後、昼まで作業に没頭。冷蔵庫からRedBullを取り出して飲む。
そして、犬神ハウスを出ると、インバウンド客でごった返す浅草を軽く散策してから、秋葉原へ向かった。肉山298と合流し、牛カツ屋へ入る。2人共、黒毛和牛御膳を注文。
豚カツは過去でも食えるが、牛カツは今のところ無理だ。久々の牛カツはやはり美味い。298や犬神もカード使い放題な身分であり、持つべきは友というか大変助かる。
というか過去へ迷い込んだ時、財布も一緒だった。いま、新紙幣になっており、使用すれば目立つ。外国の銀行(日本の支店)で作ったカードがあって通帳や書類も自宅に置いてなかったから、恐らくは両親も存在を知らない。700万円ほど入っており、次回来る事があれば試してみたい、と思うのであった。
そして、298に連れられコンカフェへ入店。店員はみんなウサギ耳を付け、衣装はモフモフしている。
「お帰りなさいませ御主人様。ら〜りるれれれ……298様、見かけない御主人様と一緒だぴょ〜ん。萌え萌え、ぴょぴょ〜ん」
「……」
「新しい御主人様、お名前教えてだぴょん」
「あっ……ひ、ひろぴょん」
「何か、ひろぴょん可愛い。萌え萌えぴょんぴょこり〜ん」
和んだところで広之と298はドリンクを注文。
「そ〜れ、ふりふり、シャカシャカ。萌え萌えキュンキュン。美味しくなるんだぴょんぴょこぴょ〜ん」
「……」
メイドカフェやコンカフェのメイドは年齢非公表で永遠の17歳などと言われるが、どう見ても20代半ばだ。どちらかといえば、西川口や赤羽のピンサロに居そうな嬢である。そうはいいつつも、広之はこの後、ぴょんぴょんサンデーも注文し、堪能したのだった。
店を出た後、新聞や雑誌などを買いつつ、帰りに御徒町の吉池で信孝への土産としてシャインマスカットと高級バナナを購入。さらに、犬神ハウスへ戻って食べるため、刺し身や寿司も買った。
こうしては18時前に戻ると、帰宅した犬神や鬼墓亜衣子も揃う。広之は結構な量の荷物を風呂敷にまとめた。最後の食事となり、3人から刺し身や寿司を勧められ頬張る。
鬼墓から酔う前に、と念を注入した石や札が渡された。さらに、紙も渡されたが、このような部屋を作れば引き寄せやすいのだそうだ。庭へ新たに堂を作る他ない。
いよいよ、時間が迫ってくると広之は元の服装へ着替えた。21時頃から鬼墓は結界のようなものを作り何やら念じる。
「幸田君、次来る時は精密検査したり歯医者へ行けるよう手配しておくよ」
「幸田氏、今度来る時は金の延べ棒よろしくでござる」
こうして広之は結界の中に入り、横たわる。鬼墓からパワーを送られる事数十分で3人の前から消えた。
長い眠りから目覚めたような状態となり、見渡す限り、広之が1人で寝起きする時の部屋だ。風呂敷包みもある。中身を確認すると全て揃っていた。次に広之は廊下へ出ると当直の者が控えている間へ行く。
「猪名川……妙な事尋ねるが、今日は何日であったか」
怪訝な顔しながら、猪名川がいうには天正20年9月20日(1592年10月25日)である。やはり、引き寄せられる前とほぼ同じ時刻のようだ。犬神じゃないが、転生・転移の小説ならチートを超えて、ほぼ禁じ手に近い展開だ。
広之は部屋に戻ると、風呂敷包みを隠し、もう一度床へ入って錬いった。翌日、風呂敷包みを持って登城すると開かずの間へ籠もり、織田信孝、岡本良勝、蜂屋頼隆を呼んだ。
「左衛門よ、如何いたしたのじゃ」
「上様、誠に信じ難い事ではござりますが、元の世へ行き、3日3晩ほど過ごし戻って参りした」
「異な事を申す。そなたは昨日も登城しているではないか」
広之は現代で過ごした後、消える直前に戻った事を伝えた。
「天狗の仕業ではありませぬかな」
頼隆が真剣な顔でいう。
「土産が沢山ございます」
広之は風呂敷包みを開けた。新聞、雑誌、歴史書籍、ポケット六法、地図、コピーの束、種、シャインマスカット、チョコレートなどが並ぶ。
「以前の新聞とやらは令和5年であったが、これは15年。同じ時の進み具合という事でござろうか……」
頼隆が重要な事を指摘する。信孝は298が無理やり入れた週間プレイボーイを手に取り破廉恥なグラビア見て驚いている。それを他の2人も見て目を丸くした。
「左衛門よ、数百年後のおなごは綺麗じゃの。それにしても何という不埒な格好をしておるのじゃ」
「上様、この下帯(下着)も実に奇っ怪でございますな」
良勝が食い入るように見ている。そして信孝がページをめくるとグラビアタレントがストッキング姿であった。
「左衛門殿、この黒いのは一体……」
頼隆がストッキングを指差した。
「それはストッキングと申して、主におなごが着けるものでございます」
その後、コピーの束を見た一同の顔色が変わる。古今東西の城、建築物、都市、帆船、大砲、銃、紡績機、昔の時計設計図などであり、意味するところは明白だ。
「左衛門よ、これらを書き写してくれ」
「ガッテン承知の助」
その後、シャインマスカット、バナナ、チョコレートを食べて驚く3人であった。
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