第160話 カリフォルニア日本化計画

 織田幕府において国内の安定化と経済発展は最優先課題である。現代人の幸田広之は日本はおろか世界を俯瞰し、未来予期出来るという時点で神に等しい。


 幕末期、日本の人口は3400万程と推測されるが、現在の人口を出来る限り早く倍増させるつもりだ。


 人が多ければよいというわけではないが、やはり国力に直結する。最終的には幕末期くらいまでは増やしたい。


 16世紀の欧州はそれほど人口が居らず、イングランド、ウェールズ、スコットランド、オランダ、ベルギー、フランス、スペイン、ポルトガルを全部足し手も日本の文化幕末期と同じくらいであろう。


 徳川幕府のように事実上の鎖国をせず技術レベルを世界水準にして、アジア含め、西洋列強に蹂躙されないような国の礎を築きたい。


 そのため、明は潰さず共存の道を探りつつ、アジア全体の発展が目標だ。


 最終的にはポルトガルやイスパニアをアジアから駆逐する。何れは南アに拠点を築き、欧州の船は喜望峰を越えさせない。


 アメリカ大陸(新亜州)のヌエバ・エスパーニャ副王領やペルー副王領は犠牲を払っても消滅させる。出来れば欧州の船はホーン岬を越えさせない。


 欧州人がアジアの産物を欲しければ南アかカリブ海の何処かで買ってもらう。宗教の自由と奴隷貿易の禁止をしない限りアジアへは立ち入らせない。


 無論、莫大な金が必要になる。そのためには海外州の開拓、明との貿易及び経済進出、アラスカの金山、ポトシ銀山などが不可欠だ。


 将来、必要になる油田、ガス田、鉱山なども出来る限り抑えてしまう。


 海外の大規模な入植地(北海道、樺太、千島列島は除く)としては、沿海州と黒竜江省、台湾、南ア、オーストラリア(ニュージーランド含む)、カリフォルニア州、チリを念頭に置いている。


 アメリカ大陸で最重要なのはカリフォルニア州であろう。日本と大差ない国土面積。現代でいえば日本の倍以上となる農地・牧地面積(最盛期は恐らく約3倍くらい?)。


 サクラメント・バレーでは水稲栽培が可能だ。同地域の面積は関東のおよそ4倍。太閤検地によれば約330万石。その4倍なら1320万石。


 耕し放題というのが農民にとって有り難いのか置いておき、とにかく巨大な穀倉地帯足り得るのは間違いない。


 カリフォルニア州を死守しつつアカプルコを落としメキシコシティを制圧。さらに南下してポトシ銀山を確保。パナマからテキサスを抑えつつミシシッピー川沿いのコットンベルトやコーンベルトへ展開したい。


 その間、ネバダ州でアラブ馬を繁殖させる。計算では仮に200頭ほど牝馬を輸入出来れば20年で10倍くらいにはなるかも知れない。 

 

 いや、それでは間に合わないだろう。やはり大量のアラブ牝馬は難しい。ならば交雑種という事になる。実は一昨年バンテン王国の使節がアラブ牡馬を持って来た。


 それを昨年春頃、在来馬に掛け合わせている。さらに中西部はマスタングという野生馬が生息しているはずだ。


 イスパニア人が連れてきたコロニアル・スパニッシュ・ホースと言われる小型の馬が野生化したものである。現代ではネバダ州に多い。気性が荒いことで有名だ。


 この時代ではまだネバダには居ない可能性がある。もし居たら交雑種在来馬と掛け合わてみたい。


 また、フランスにはペルシュロンという馬が居て、短足でありながら大きい。大砲を引かせたり馬車に向いている。この馬もいつかは欲しい。


 本来の歴史であれば日本がペルシュロンを輸入し在来馬と掛け合わせている。無論、戦争のためだ。

 

 問題なのは大きい馬に日本人が乗れるのかどうか……。この時代の日本人はやはり背が小さい。大半は160cm未満だ。


 本来の歴史では西暦1939年に約152cmで、戦後の1948年は何と146cm(何れも17歳男児)。恐ろしい数字だが、逆にいえば、栄養を十分取った場合、短期間で大幅な改善も可能だろう。


 ポルトガルやイスパニアと敵対する前に何としても乳牛が欲しい。すでに打診はしている。


 カリフォルニア州は酪農も盛んであり、乳牛を繁殖させ牛乳やチーズを普及させたい。すでに豆乳を使ったラテで下地は作ってある。


 カリフォルニア州の開拓がうまく行けば将来南北戦争は起きず、東西戦争になるかも知れない。それ以前にボストン茶会事件も起きないだろう。


 有名なボストン茶会事件は西暦1773年に起きている。英国は米国への茶に税を掛けていた。しかし、米国から英国へ投票権を持った代表が送り込めず怒りが爆発したものだ。


 この時代の茶は中国産である。英国人がアッサムで中国種と異なる茶樹を発見するのは西暦1823年。英国領に茶を売りつけ、そのうち禁輸にするもよし。あるいはアヘン中毒にして逆アロー号事件も面白い。


 構想を練りながら不気味に笑う広之であった。

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