第116話 竹島(鬱陵島)の要塞化

 現在、韓国に占領されている竹島は江戸時代松島と呼ばれ、竹島は鬱陵島を指していた。織田幕府においてもそれを踏襲している。


 古事記の400年代以上も後に編纂された朝鮮半島最古の史書、三国史記・新羅本紀によれば西暦512年、新羅により服属された

于山国という国の名が出てくる。


 無論、この于山国の詳細は不明だが現代における鬱陵島に相当すると推測されているに過ぎない。


 そして李氏朝鮮時代の西暦1416年以降鬱陵島の住民を本土に強制移住させる。島民が倭寇を装い本土を襲撃したり本土から逃げてきた者が多いための処置だったようだ。


 太宗実録によれば太宗17年(西暦1417年)の記述で于山島(于山国ではない)が文献上初めて確認。


 この于山島が現在の竹島(韓国が言うところの独島)だというのが韓国側の大きな根拠となっている。


 しかし「15戸の家があり男女併せて86人の住民がいる」という記述を見れば竹島でないのは明白。


 さらに太宗実録・太宗12年(西暦1412年)、江原道高城於津へ漂着した白加勿という者たちは、11戸60人余りが武陵島から流山国島に移ったという記述がある。


 流山国島は東西と南北がそれぞれ2息、周囲が8息で豆や麦が採れると観察使に語っており、1息は約12km、外周が96km。これは鬱陵島の大きさに近い。


 武陵島=于山島、流山国島=鬱陵島と考えるのが自然であろう。ところが韓国では流山国島を鬱陵島、于山島を竹島(韓国名独島)に比定。


 普通に考えれば、武陵島=于山島は鬱陵島の北東から約2kmの竹島である可能性が大。なお、この竹島は現代における島根県竹島とは違う。


 李氏朝鮮時代の地図では鬱陵島の東隣りに同じ大きさの于山島が描かれている。推測するに鬱陵島が偽倭寇対策などで空島の時期に、朝鮮本土へ漂着した武陵島出身者は流山国島という存在しない島名を騙ったのだろう。


 いつしか流山国島が于山島と混同され、鬱陵島の隣りに同じ大きさで描かれるまでになったように思える。そう考える他ない。


 織田幕府は松島(竹島)と竹島(鬱陵島)に大きな石碑を建て、それぞれが日本国・隠岐国の島であることを刻み込んだ。


 幕府は竹島(鬱陵島)を西隠岐島と名付け奉行を配置。島民には農具、漁具、米、麦、酒、着物などを与え、年貢も取り立てなかった。


 島民に十分な賃金を与え、幕府の兵1千名、出雲や隠岐からの移民500名で簡単な城も築いている。幕府の艦船が常に停泊し、島を防備。


 西暦1591年の春頃、沿海州の創設にあわせ、幕府は西隠岐島へ大幅な増員を行った。おびただしい兵糧、武器弾薬、馬など持ち込まれた。 


 対馬の宗氏には、もし朝鮮国から詰問された際、石見、出雲、隠岐あたりに潜む賊徒の所業なれば誠意を示すべく討伐すると申し伝えるよう示し合わせている。


 島内の大半は山林であり、しかも寒冷なため、幕府はじゃが芋、かぼちゃ、とうもろこし、玉葱の栽培を奨励。豚や鶏などの畜産も行った。


 漁業においては、わかめ、烏賊、秋刀魚、スケトウダラ、ムール貝などがよく取れる。特にスケトウダラは大量備蓄された。


 ここでも北海道同様、内地よりもたらされる食材は住民の生活を一変させている。


 まず住民を歓喜させたのは、貴重な米が思う存分食べれるようになった。さらに飲んだこともない茶や日本酒にも驚きつつ、今では生活に欠かせなくなっている。


 そして数々の日本料理も定番化しつつあった。うどん、天ぷら、粕汁、佃煮、たらこ、明太子(細かいことは言いっこなしで)、烏賊の塩辛、肉じゃが、豚の角煮、焼鳥、鶏の唐揚げ、おでん、田楽、ぼた餅など……。


 対馬経由で亡命してきた朝鮮人や宗氏家中の朝鮮語話者なども常駐していることもあり、比較的円滑な統治となっていた。


 この島が、何れは豆満江流域やウラジオストク近辺へ進出する際の重要中継地となる。


 朝鮮が抗議してきた際、最終的な回答はすでに用意してあった。オランカイ(兀良哈=女直)が島を占領。


 そこから日本への略奪を行うため、やむなく島を攻めて追い出したるもので、豆満江付近のオランカイを駆逐した後、返還するというものだ。


 無論、納得するはずもないが、役人が来たら武装化した島、重武装した兵士、大量の艦船を見せ、追い返すだけの話である。


 攻め寄せてくる可能性は低いし、宗氏との貿易を停止させようが困ることはない。


 西隠岐島は着々と整備開拓されつつあった。

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