第95話 ヒロザップ

 幸田広之は現代においてライターをしていたが食べ物関係も多かった。単純なグルメ記事から食料自給率や添加物など多岐に及ぶ。


 無添加、無農薬、放射線育種米など無知がはびこっている。無添加や無農薬を健康と安全に結びつける場合が多い。しかし無添加食品にこだわっても砂糖、糖質、脂質、塩、アルコールなどを大量摂取すれば当然身体に有害。


 よく勘違いされるのは砂糖は太る原因であるとか、字面見て糖尿病を想起したりする。砂糖を含む糖質(炭水化物に含まれる)を一気に過剰摂取すれば血糖値が急激に上昇してしまう。


 そうなるとインスリンも大量に放出。消費エネルギー以上の糖質は消費されず、インスリンの働きによって脂肪として蓄えられる。

 

 糖質を大量摂取すれば、インスリンが血糖値を急下降させようと作用し、身体は空腹感を覚え、血糖値を上げるため、さらに糖質接取を繰り返す。なので急激な血糖上昇を抑えるのは大事だ。


 また炭水化物を消費する過程で多量のエネルギーも使われる。そもそも寝ていてもエネルギーは消費されるわけで砂糖、糖質、脂質とかあまり関係なく、重要なのはエネルギー消費を超える暴飲暴食をしないのが最良であろう。


 広之はやさ男風だが、元々高校時代、ラグビーの花園常連校で左フランカーのレギュラーだったこともあり、筋肉質だ。戦国時代の人も現代に比べて筋力は強いし頑強である。


 つまり基礎代謝が高いので、そのへんも織り込んで栄養摂取している。普段は玄米をよく食べる。当然、噛む回数は増え、魚や牛蒡を含む野菜が多く、血糖値の上昇は緩やかだ。


 飲む酒も糖質の高い日本酒(以前は南都諸白というほぼ清酒に近いものを飲んでいた。現在では灘、伊丹、西宮、伏見などで改良されたものが作られており、幸田家も酒蔵を所有している)は控え、焼酎を中心に飲んでいたりする。


 昔の人は保存と安全に力を注いだ。シロップ漬け、ジャム、佃煮、梅干し、塩辛などは叡智の賜物と言えるだろう。昔の梅干しや塩鮭はとても塩っぱかった。


 寿司にしても江戸前は煮たり酢で〆るなどしている。そのうえ酢飯、ガリ、山葵、茶など二重三重に対策していた。


 そして放射線育種米(あきたこまちRが大きな話題になるのは広之転移後だが、その前からくすぶっていた)などは意味不明である。

 

 現代で食べられている作物や家畜は狂ったような品種改良や選別を重ねた結果だ。放射線、放射能、放射性物質が全て脳内で渾然一体化しているのかも知れない。


 放射線育種米で騒ぐなら、じゃが芋はどうなるのだろう。じゃが芋の芽には毒がある。ソラニンという神経毒が含まれているのだ。


 じゃが芋の芽を必ず除去するのが常識として浸透しているのはそのため。そこで発芽を防ぐため、放射線を照射したりする。 放射性物質を使い、ガンマ線という放射線を照射することで、発芽を抑えこむ。


 照射するのはガンマ線という放射線であって、放射性物質自体でない。ガンマ線は透過力が強く、じゃが芋へ照射しても通過するから汚染するはずもなく、無論食べても被爆せず大丈夫だ。


 食料自給率にしても、飼料も含めたいわゆるカロリーベースで自給率が低いと騒いでも意味ない。食べるものを大幅に制限すれば100%近い自給率も可能だろう。


 ただしラーメンや定食が1人前3千円とかになるかも知れない。完全自給を達成したとしても地球規模の気象異常や戦争が起きたらどうにもならないはず。それこそ石油を止められたら終わりだ。


 燃料がなければ作物、飼育、漁は難しい上、加工もままならず、消費地へ運べない。そんなことを考えつつ広之は楽しい食事とストレス少なめ、さらに適度な運動で健康な生活を目指していた。


 食べて身も心も健康になれば、これ以上のものはない。よくSNSなどで女性タレントが焼肉食べている写真を掲載すると必ずオッサンなどから「◯◯ちゃん野菜も食べないと」などというクソリプが大量につく。いわゆるベジハラというやつだ。


 野菜を食えばいいというものでもない。ベジハラを見るたび広之は苦笑していた。それはさておき酒好きの広之は、ウコンの生産を奨励しており、粉にしたものやウコン茶が手放せない。


 また生ウコンラテは自身が営む茶房や茶荘でも人気となっている。生のウコンをすりおろして、ウコン茶で煮出し豆乳を加えたものだ。


 ウコンは春、秋、紫、黒などあって日本で一般的なのは春と秋。黒ウコンはタイのクラチャイダムが有名だが広之はタイから取り寄せ、紀伊などで栽培させている。幸田家運営の薬種問屋で人気商品となっていた。


 黒ウコンは運動機能や脂肪燃焼にも高価があるとされている(滋養強壮や精力増強にも効果あるとされ現在マカより凄いと言う声もある)。


 広之は紀伊より届いたばかりの黒ウコンをいつも徳川家康へ届けていた。薬マニアで子作りに励む家康はすりおろして蜂蜜と混ぜ飲んでいる。


 かなり値の張るものなので庶民は手が出ない。幸田家の薬種問屋で売っている薬酒も種類が多数ある。最高ランクには朝鮮ニンジンと黒ウコンが沢山入っていた。


 広之は運動もそれなりにする。大坂城の外堀内を日に1周以上歩き、反復横跳び、懸垂、プッシュアップ、シットアップ、クランチ、ストレッチ、四股(相撲の)、木刀の素振りなどを時間のあるときは行っていた。


 五徳たちや女中も指導を受け運動に励んでいたが、なおさら食欲は増してしまうのである。


 



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