第66話 呂宋奥地に謎の野人は存在した!

 南方へ向かった幕府御用船の一部は台湾北部経由で呂宋北部に到着。目的地はマニラだが、拠点作りのための調査をすることになっている。


 以前、呂宋人を日本へ連れ帰っており案内役で同行。停泊した近辺の村長から最近出没する謎の野人について話を聞いた。


 こうして調査隊が結成されたのである。隊長は川口又衛門浩実(架空人物)。冷静沈着かつ仲間思いの熱い漢だ。期間は4日間と短い。


 果たして野人は存在するのであろうか!

 存在するとしたら何者なのか?


 人類の発見を免れ、この密林で進化した新種の生物、はたまた旧石器時代に生息した旧人類の生き残り、もしくは亜種である可能性も捨てきれない。


 この密林のどこかに潜んでるかも知れない野人の正体を探るべく我々川口浩実探検隊は奥地を目指す。人を寄せ付けない原始密林の奥深くで我々を待ち構えるであろう自然の脅威。少しの油断が命取りなる。


 一行は船に乗り2刻ほど進むと、ある村が見えた。案内人によると、この部族はヤラセー族と言う比較的温厚で我々を歓迎してくれるという。


 何やら酒のようなものと果物をもらい、村人の踊りを見る。村長に野人のことを聞くと怯えきった表情で遭遇した時のことを語ってくれた。やはり存在するのだ。我々は、はやる気持ちを抑えきれない。


 この川を遡った先にある大きな山で目撃した村人が何人も居るという。村長が我々の事を心配し、村の若者を1人付けてくれた。これは非常に心強い。


 そして我々は村人に別れを告げ一路大きな山を目指す。1刻後、ついに大きな山が見えてきた!


 この山の何処かに野人が潜み、いつ我々を襲ってくるかわからない。油断はすなわち死を意味する。我々は野人の領域に足を踏み入れようとしているのだ。


 隊員たちが船を降りようとしたその瞬間、あたりの静寂を切り裂くような悲鳴が密林にこだまする。


「うわぁぁ〜!」


「おい、いかがした!」


「たっ隊長、あっ脚が……」


 なんと隊員の脚に大蛇が絡みついているではないか!

 脚どころか体ごとヘシ折られてもおかしくない。まさに絶対絶命である。この窮地に隊長の川口が刀を腰から抜き一瞬で獰猛な大蛇の頭を斬り落とした。


「おい脚は大丈夫か、みんな手当ていたせ」


 残念ながら隊員は歩行する事が難しく、他の隊員数名と船に残ることとなった。川口の判断が一瞬でも遅れていたら隊員は死んでいたであろう。


 野人以外にも危険が待ち受けている。まさに自然の脅威と言う他ない。恐怖に慄然とする隊員たちであったが、ここで立ち止まるわけには行かないのだ。


 歩き始めて大分経った。その時である。隊長の川口が絶叫した。


「皆動くでない!」


 何と我々は殺人サソリの楽園に踏み込んでいたのだ。刺されたら象も即死するという猛毒を持つ危険なサソリである。あたりを恐怖が支配した。その先にあるのは生か、はたまた死か!


 大自然の洗礼が容赦なく我々を襲う。これは立ち入るなという警告なのであろうか。まるで侵入者の我々を拒んでいるかのようだ。


 何とか慎重にサソリを避けて窮地を脱することに成功した。九死に一生を得るとはこのことであろう。


 さらに先を進むと同行している村人が立ち止まった。


「ヤマノ、カミ、オコッテイル、ワタシ、モウ、コレイジョウ、イケナイ、カエル」


 村人は案内役の呂宋人に告げると1人で帰ってしまった。だが、我々は立ち止まるわけには行かない。怯まずに先を急いだ。その時、あるものを発見。何と獣を捕らえるための罠である。野人が仕掛けたのなら想像以上に知能が発達している可能性があった。


 あたりを調べた結果、小川が流れており、その先に住んでいる可能性も考えられる。一刻ほど歩き、薄暗くなってきた。


「隊長、家が見えまする!」


 その先には樹木の葉などで作った小屋のようなものがいくつか並んでいる。もし野人が集団で住んでいるなら危険だ。皆、とっさに刀に手をかけた。


 と、その時、次々と矢が降り注いだ。小屋の中から狙ってるようである。我々は興奮させないため刀を下に置いて手を上げた。案内人が必死に敵ではないと説得。密林で貴重なはずの塩を渡す。


 村長らしい男が出てきて、こっちへ来いと手招きする。何とか敵でない事を信じてくれたようだ。村人に歓待され、我々も持参していた茶を振る舞う。そのまま村で一晩過ごした。

 

 この村でも野人の目撃情報はあり、北の滝がもっとも多い。村人たちは野人のことを黒鬼と呼んでいるようだ。こうなれば北の滝へ向うしかない。2刻ほど行くと向こうから水の流れる大きな音がする。草木をかき分けると眼下には滝が流れる沼があった。


 次の瞬間、隊員たちは目を疑った。人のようなものが巨大なワニと戦っているではないか。とても人間とは思えない凄まじい怪力である。我々の気配を察知するや密林の中へ去ってしまった。


 逃げ去った方角を懸命に追跡し、とうとう洞穴を発見。洞穴の前には人が住んでいる痕跡もあった。ここが野人の住居に違いない。恐怖する隊員たちであったが、中に入る。しかし果物が置いてあるだけで誰も居なかった。一体どこへ消えたのであろうか?

 

 我々は周辺には潜み野人が帰ってきたところを捕獲することにした。半刻程経ったであろうか。そして何かが近づいて来る。とても黒い。どうも人間のようだ。


 ついに野人を発見したのであろうか。その時!


「モシカシテ、ニホンジン?」


 野人が喋った!

 一体、どういう事であろうか?


 怯えながら川口が尋ねる。


「お主は我々の言葉がわかるのか?」


「ワタシ、ニホン、スンデタ、ナマエ、ヤスケ」


「もしや亡き上様に従えていた、あの弥助殿か?」


「サヨウデゴザル」


 何と野人の正体は織田信長のアフリカ系家臣弥助であった。弥助は逃げたと思われ処刑されるのを恐れ、堺から商船に乗ったという。


 その後、マカオへ着いたが、明国商人に雇われたそうだ。ある時、マニラへ向う最中船が沈み、泳いで辿り着いたらしい。取り敢えず台湾北部の拠点で働かせることにした。


 南国呂宋の大地を太陽は照らしていた。この人智の及ばない原始の密林。何者も寄せ付けない大自然。我々は野人の正体を探るため道なきを道を進み、そしてついに野人の正体を突き止めたのである。


※この回についてクレームは受け付けません。酔った時、思いつきで書きました。ご容赦あれ。

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