第60話 食の都大坂
天下統一からほぼ4年近く経ち、大坂の人口は膨れ上がっている。すでに尾張堀(道頓堀)なども開削されていた。現代ではインバウンド客で賑わう尾張堀通り(道頓堀通り)、また夜は呼び込みだらけとなる清洲町(宗右衛門町)なども開発。
難波近辺は未開発だが、いつでも手が付けられるよう整備済だ。史実では豊臣家滅亡後、大坂を治めた松平忠明によって墓地が集められた。その後、処刑場や火葬場、さらには新地が作られる。
昔は大坂の外れだったが故であるが、いまや屈指の大繁華街になっており、有名な千日前デパート跡地は元々墓地だった。
無論、広之は現代の大坂を前提に都市開発しており、墓地や火葬場などは別の場所へ作っている。土地の売買にも制限を設け、中心部では所有権を細かくすることが出来ない。
下水道も完成しつつあり、もはや江戸初期以上の状態であろう。織田家の領内では他にも京の都、伏見、宇治、高槻、茨木、伊丹、亀山、和歌山、堺、岸和田、平野、奈良、橿原、尼崎、神戸、明石、大津、安土、長浜、坂本、徳島など発展していた。大坂に集う諸大名もこれらを参考としつつ、領内の町を開発。
広之は各大名に城下町の道は出来る限り広くするよう求めていた。将来、馬車や自動車が通ることを念頭に入れているからだ。また火事に備えて空き地を確保することも強く要請。
大坂では各町内で消防組織があるほか織田家臣は番所へ詰め24時間体制で警戒にあたった。警察的な行為も兼ねており、見廻りによって治安が保たれている。
縦横に川や運河が幾筋も流れている上、防風林としてイチョウの木が沢山植えられ。初期の頃に植えたものは銀杏が取れる。イチョウの木は火にも強いため延焼を少しでも防げれば、という思いもあった。広之的には銀杏が食えるという要素も否定出来ないところ。
故意でない出火が罪に問われることはない。ただ出火したら直ぐに近隣へ知らせることが求められ、これを怠れば罰せられた。
さらに大坂で天ぷらや唐揚げは大人気となっているが自宅で揚げるのは原則禁止。許可が必要だが家の大きさなど要件は厳しい。
結果、屋台がメインとなる。これも届け出は必須。許可なしは厳しく罰せられた。ただし屋台の場合、場所や指定した道具を使うことや研修すれば許可はおりる。万一、油に引火したら水は絶対に掛けず、用意した蓋を被せて鎮火させるなど指導。
天ぷらや唐揚げの人気に便乗し、防火対策をより強化しているが、これは煙草解禁に備えたものでもある。
防火対策を兼ねて堀だらけにした結果、下水道網と連動。その産物として石鹸の販売も始まった。これも広之が運営する薬種問屋で扱っている。油を使っており高価なため使える層は限られているから環境的にダメージは少ない。
食の面に関しても大坂は他の都市を圧倒している。まず食材について、お茶ブームもあり和泉、河内、摂津あたりは茶畑が増えた。
じゃがい芋、さつま芋、南瓜、とうもろこし、オクラ、玉葱、苦瓜、唐辛子、イチジクなども試験的に栽培しており、市中に出回っている。大坂郊外では鶏の生産が盛んだ。
酒については南都諸白という清酒の元祖を改良し、大量生産が行われていた。和泉や河内では焼酎も盛んに作られつつある。
まだ市中に出回っていないがビワ、蒟蒻芋、朝鮮人参(オタネニンジン)も沢山植えられており、いずれは出回るはず。東洋系ニンジン(金時ニンジンは東洋系)の品種改良や白菜を作り出すための品種改良も継続中だ。ブドウや柿も品種改良を試みているが時間を要するであろう。
蒟蒻芋は江戸時代水戸藩の農民が薄く輪切りにしたものを乾燥さて粉末にさせたことから江戸庶民の大好物として普及する。粉末化の実験はすでに成功しておりあとは数を増やすだけだ。
朝鮮人参は史実だと江戸幕府八代将軍徳川吉宗が対馬藩経由で朝鮮から入手した種と苗を入手。各地の大名へ種子を分け与え栽培を奨励したことから御種人参と呼ばれる。日本の金銀が出来る限り国外へ流出しないため安定供給させたいところ。
海苔の養殖と板海苔の生産も始まった。史実では西暦享保2年(1717年)、浅草の漁師与平が柵を立てて養殖。それを素干しでなく浅草和紙の製法を取り入れ型ですいて板状に加工。
無論、広之考案だ。現代で某国が海苔を勝手に板海苔に変換して起源主張していることを鑑み板海苔と命名。石碑も建てた。和泉の名産として大坂では人気を博している。
ちなみに日本海という呼称も定着させ、現代で不当に占領されている某島を測量し、日本領土と確定。さらに近くの鬱陵島も占領し、住民と織田家家臣を常駐させ城も築いた。
かつて倭寇が鬱陵島を拠点に朝鮮本土を襲っている。李氏朝鮮(1392年〜1897年)は1417年に同島の居住者を本土へ移住させ、以後1881年まで同島は公式には無人島となる。
現代で言う竹島は本来松島、鬱陵島が竹島だった。そのまま採用し、鬱陵島を竹島としてこれも日本領に組み込んでいる。
さて大坂に話を戻すと、店や屋台などで人気なのは蕎麦切り、うどん、拉麺、焼鳥、天ぷら、唐揚げ、茶漬け、稲荷寿司、めはり寿司、ちらし寿司、おでん、五平餅、おやき(形式として群馬と長野の双方)、甘酒、茶、いか焼き、田楽、かしわ飯、茶飯、粕汁、練羊羹、きんつば、ういろう、銅鑼焼き、揚げ花林糖饅頭などだ。
屋台としては小舟で運河や川を流して売る形式も普及。これも大坂ならではの光景となりつつある。大坂の発展を目の当たりにした諸大名や各地から来た商人も大いに刺激を受け、各地の町も発展し始めた。
織田幕府版の朱印船貿易が始まればさらに大坂は発展するであろう。
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